
テクノロジーの進歩が、私たちの生活に便利さをもたらしていることは論を待たない。では、他者への理解や思いやりをはぐくむことに寄与している実感はあるだろうか?
そんな質問を投げかけるアンケート調査がこのほど、レノボ・ジャパン株式会社により、世界10か国(日本、米国、メキシコ、ブラジル、中国、インド、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア)のべ15,226人を対象に2019年3月から4月にかけて実施された。
社会の分断や「エコーチェンバー現象」への懸念の中で、他者との相互理解をテクノロジーが促進
ソーシャルメディアの普及により、閉じた集団の中で考え方や物事への見方が増幅され極端になっていく「エコーチェンバー(共鳴室)現象」の拡大など、社会の分断をテクノロジーが助長するのではないかという懸念が現れ始めた。
この調査でも、全調査対象の60%(日本では34%)が、人々が深く考えずに判断してしまう傾向が強まっているようだと回答。また、49%(同43%)は、世の中に自己中心的な人が増えたと回答している。
一方で、回答者の70%(日本では67%)はテクノロジーによって好奇心が旺盛になったと考えている。
ソーシャルメディアや動画共有プラットフォームを活用して国や文化が異なる人と直接”コネクテッド”な交流ができるようになり、投稿や動画といったコンテンツによって、様々な社会背景のもとにある自分たちとは異なる生活様式への理解が進んでいる。
こうした状況の中で、テクノロジーによってお互いを理解しあい、思いやりの心を深めることができるようになると考える人が増えている。
日本では44%が肯定的な回答で、この数値は調査対象10か国平均の35%を上回るほか、先進国では最も高い数値だった【グラフ①】。
また、思いやりが失われつつあるとした回答者は日本では13%にとどまり、肯定的な回答者を大きく下回った。
66%はVRが価値観に与えるプラスの効果に期待、中国など新興国で高い傾向
この調査ではまた、将来新たに出現するテクノロジーが価値観にさらに大きな影響を与える可能性が明らかになった。
全調査対象のうち66%が、VRには他者への思いやりと理解を促進する可能性があると回答し、自分の目で様々な世界を見ることができるようになるため、世界中の人との精神的、感情的なつながりを深められる可能性を肯定していた。
VRが人々の価値観に与える影響については、調査対象10か国が二極化。中国を筆頭とする新興国では、VRが価値観にプラスの影響を与えることができると信じる人が多数を占めている。
たとえば、VRによってお互いをより理解できるようになると考えている人の割合は中国で90%、インドで88%となっている。一方、先進国では相対的に低く、日本では51%、最下位のドイツでは48%だった【グラフ②】。
ある回答者が残した「自分は世界の隅々まで知っていると思っていた人でも、VRによって、日常生活で耐えなければならない痛みや苦しみをもつ人々が様々なコミュニティや社会の中にもっと多くいることに気付くだろう」というコメントは、この調査結果を端的に表している。
■心理学者、Jocelyn Brewer氏のコメント:
思いやり、つまり他人の感情や経験を尊重する人間性来の能力が、テクノロジーによって低下しているという批判がしばしばなされます。
しかし、テクノロジーをうまく使いこなせば、多様な社会環境に暮らす世界中の人々と交流し経験を分かち合うことができるようになります。
これにより精神的な豊かさと自分と異なる様々な考えへの肯定的なとらえ方が増し、他の人のために行動を起こすことへの関心も高まります。
■Lenovoのユーザーおよびカスタマーエクスペリエンス担当副社長、Dilip Bhatia氏のコメント:
同じような物の見方や意見を有している人ばかりが集まってしまうと、正しいか正しくないかはさておき、その集団内で意見が増幅・先鋭化し他を排除してしまう「エコーチェンバー(反響室)現象」が進み、社会の分極化につながる懸念があります。
こうした中でレノボは、スマートテクノロジーやVR技術が、多様な考え方を受け入れる素地になると考えています。
世界中の人々と “コネクテッド”な状態になることや、自分とは違う社会環境にある人の生活を自分の目で直接見ることをテクノロジーは可能にします。
異なる立場や異なる考え方の人々とお互いに理解を深めることが容易になり、ひいてはより人間的に、思いやり深い心をもてるようになります。これはすばらしいことではないでしょうか。
出典元:レノボ・ジャパン株式会社
構成/こじへい
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