
生活者から金品を騙し取る詐欺が横行し、大きな社会問題化しています。特に高齢者をターゲットとした詐欺の手法はますます巧妙さを増し、十分な対策が求められています。オレオレ詐欺などから身を守るための注意点などについてまとめました。
オレオレ詐欺の概要と動向
オレオレ詐欺や振り込め詐欺などと呼ばれる犯罪が広まっています。注意力や判断力に陰りが見え始めた高齢者が狙われる傾向にあり、社会的な弱者を陥れるやり口は許しがたいものです。
警察による取り締まりや行政からの注意喚起も強化されています。しかし、そのような対策に合わせて詐欺の手法もより巧妙化しており、常に慎重な対応が求められています。
詐欺被害に遭わないようにするため、どのような方法で騙そうとするのかをよく理解しておくことが肝要です。オレオレ詐欺の概要や動向について見てみましょう。
オレオレ詐欺や振り込め詐欺とは
一般的にオレオレ詐欺とはどのような手口でしょうか。まず親族などを装って電話をし、なんらかの理由により至急現金が必要になったと信じ込ませます。
それは、「会社のお金を横領しすぐに返金しないと訴えられる」「取り引きでミスをしたが、今補てんすれば解雇を免れられる」といった状況を演じます。
身内の大変な危機を知り動転した相手の心を操り、現金を指定した預貯金口座に振り込ませようとする犯罪を、オレオレ詐欺や振り込め詐欺と呼んでいます。
特殊詐欺認知件数や被害額の現状
元号が変わり、令和になってからの特殊詐欺の認知件数や被害額について、1~6月の上半期で見てみます。(※1)その実態に、驚く人も少なくないでしょう。
6カ月間での認知件数は、累計8025件です。これは、前年度と比較して735件少ない数字ですが、依然として高い被害状況を伺わせます。
その被害額については、累計174億7000万円(※2)となっています。こちらでも40億4000万円の減少ですが、これほど注意喚起がなされていることを踏まえると、その被害は大きいと受け止めざるを得ません。
(※1)出典:警察庁公式:振り込め詐欺対策HP|『特殊詐欺の被害状況』
(※2)被害額は発生後に確定するため、2~7月の累計額を表示しています。
オレオレ詐欺犯人のなりすまし手口
オレオレ詐欺の特徴といえば、『誰かになりすます』ことでしょう。騙そうとする相手に、その人の信用に足る誰かになりすますことで、現金を奪う犯罪です。
では、詐欺を実行する人間は、どのような立場になりすますのでしょうか。その対象となるものを見ていきましょう。
身内や親族
犯人がなりすます立場として最もよく知られているものが『身内や親族』です。特に、『息子』という立場を利用するイメージを抱く人が多いでしょう。
親族、特に親には『僕は太郎です』などと名乗らずに会話を始めるケースがあります。ここに、大きな落とし穴があるようです。
そして、一度信用してしまうと、身内の要請に応じてしまいやすくなります。例えそれが『会社のお金を横領した』という良くないことでも、『返せば罪に問われない』と思うと助けてしまいがちです。
警察官
「あなたは犯罪者に狙われているようです」などといって近寄るために、『警察官』になりすます手口もあります。多くの人は、人々の暮らしを守ってくれる警察に大きな信頼を寄せており、それを利用したものです。
「あなたの預貯金口座が悪用されています。確かめるので通帳と印鑑を預けてください」。このような手法で現金を騙し取られた人がたくさんいます。
また、「身内の方が重大な交通事故を起こした。いま示談金を払えば逮捕はされない。その仲介を警察がしています」という架空のケースが使われたこともあります。
自治体や金融関係職員など
キャッシュカード受取型の犯罪によく見られるなりすましは、自治体や金融関係の職員を装うことです。そのような立場の人も、比較的、多くの人の信用を得ている立場であり、悪用されるのです。
「キャッシュカードの形式が変更になった。作り直しのためにカードを預かるので、暗証番号もお知らせください」と申し向けられ、そしてその後、口座から現金が奪われた人もいます。
また、「あなたは、◯◯市(国、区、町、村)の補助金を受け取れる対象となりました。カードと暗証番号を預かった段階で交付されます」などという手口も見られます。
注意が必要な電話やメール
オレオレ詐欺の被害にあう第一歩は、電話やメールから始まります。犯人は、狙った相手を信用させようと、巧妙な切り口で連絡を取ってくるのです。
少しでも「おや?」と感じたら、すぐに信用せずに、立ち止まって考えてみることが求められます。
電話での催促の場合
携帯電話に、見知らぬ相手から何らかの催促があった場合には、オレオレ詐欺への注意が必要です。ターゲットにした相手を急き立て、心理的に追い込んで現金を騙し取ろうとします。
「インターネットの有料情報サイトの料金が未納だ」「辞めたはずだが退会手続ができていない」「個人情報を消去するための手数料が未払い」等、さも起こり得るかのような内容で犯人は催促をしてくるのです。
時には、「閲覧したアダルトサイトは実は有料だ。すぐ払わないと周囲の方に代わりに請求します」など不安や心配を煽る場合もあります。
心当たりがない場合は、慌てずに、毅然と対応することが求められます。ペースを奪われてしまうことは、とても危険です。
メールやはがきの内容
見慣れないアドレスからのメールで、「給与や財産を差し押さえる」「法的措置を検討している」といって現金を振り込ませようとるすものは、慎重に取り扱いましょう。
法的な争いは、たいていの人にとって未経験であったり不慣れであったりするものです。そのため、法的措置をチラつかされると、動揺してしまう人もいるのです。
条件の良すぎる融資を誘うメールなども要注意です。「まず保証金を少しでも払えば、無担保の融資額が大幅に増える」。そのような手口で騙すグループも確認されています。
裁判所や消費者センターなどを騙り、手紙やはがきを送りつけてくる詐欺集団もいます。「下記の訴訟番号の通り裁判を行う。和解費用を払えば取り下げとなり、裁判所が仲介する」。そのような無茶苦茶な内容は信じてはいけません。
主な相談先や通報先
受け取った電話やメール・手紙が怪しいぞ、そう思ったらどのように対処すべきでしょうか。一人で不安を抱えていても、状況は良くなりません。
少しでも心配や不安が生じたときのために、相談できる先を知っておきましょう。
最寄りの都道府県警察本部
警察庁では、警察相談専用電話を開設しています。『♯9110』で、犯罪被害の未然防止など、生活の安全を守るための相談窓口につながります。
また、より身近な相談先として、各都道府県警察本部でも相談窓口を持っています。「怪しい」「心配だ」と感じる連絡を受けたときには、遠慮せずに相談しましょう。
消費者相談窓口など関係機関
いわゆる『消費者センター』でも、不審な連絡にたいする相談を受け付けています。このような機関を活用することも知っておくとよいでしょう。
『独立行政法人 国民生活センター』では、局番なしの『188』で窓口につながります。「いやや・嫌や」の語呂で覚えられます。
また、全国の消費者相談窓口の一覧は、以下のリンクから確認できます。
被害撲滅へ情報提供しよう
詐欺の手口は、ますます複雑かつ巧妙さを増しています。普通に生活している人にとっては思わぬ切り口で攻めてくる、それが詐欺の恐ろしさです。
新手の詐欺から一人一人が身を守るためには、「おかしいぞ」と感じたことなどに関して情報を共有し、被害の撲滅に向かうことが大切です。積極的な情報提供に努めましょう。
文/編集部