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若手人気俳優の起用によって”わかりやすいシェイクスピア劇”を目指した話題の映画「キング」の評価

2019.10.25

■連載/Londonトレンド通信

 11月1日にNetflixから世界一斉配信されるデヴィッド・ミショッド監督『キング』が、10月25日から劇場公開されることになった。大画面で観るに値する、興行収入も見込めると判断されたわけだ。

 『キング』はウィリアム・シェイクスピアの『ヘンリー四世 第1部』、『ヘンリー四世 第2部』、『ヘンリー五世』を基にした映画だ。

 シェイクスピア劇の映画/ドラマ化は毎年のようにある。時と場所を超えて人間に通底する愛憎を、悲喜劇にしてみせる筋立ての面白さ、台詞の味わい深さは、数百年を経ても色あせることがないのだ。

 懐かしいところでは黒澤明監督の傑作『蜘蛛巣城』(1957、基は『マクベス』)、メキシコを舞台にマフィア抗争にしてみせたバズ・ラーマン監督『ロミオ+ジュリエット』(1996)、故ヒース・レジャーが歌も披露しているジル・ジュンガー監督『恋のからさわぎ』(1999、基は『じゃじゃ馬ならし』)、最近ではベネディクト・カンバーバッチのリチャード3世役が話題になったBBCドラマ『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』(2012、2016、基は複数のイギリス王族もの)などもあった。

 誰しも何かは観ている、少なくとも聞いたことはあるだろう。インターネット・ムービー・データベースの2018年7月のリストによると、シェイクスピア劇の映画/ドラマ化は1371本になるという。

 それほどある映画/ドラマ化作品に、それ以上の頻度で上演されている元々の演劇を加えたら、いつでも、どこかで、上演、上映、制作されていると言っても過言ではないシェイクスピア劇だ。

 そんな定番中の定番で、見所となるのはどう料理したかだ。さて、『キング』はシェイクスピアをどう料理しているのか。

 まず、主役ハル王子/ヘンリー5世を演じたティモシー・シャラメはじめ若手人気俳優の起用で若々しいものにした。

Timothee Chalamet attends "The King" UK Premiere during the 63rd BFI London Film Festival at Odeon Luxe Leicester Square on October 03, 2019 in London, England. (Photo by Gareth Cattermole/Getty Images for BFI)

 イギリスでは、第63回ロンドン映画祭でイギリスプレミアが開催された後、10月11日より劇場公開中だ。プレミアにはシャラメほかキャスト、スタッフが参加した。シャラメ見たさにレッドカーペットに集まった大勢のファンは、映画にも満足したはずだ。

 というのも、シャラメが一躍注目を集めた『君の名前で僕を呼んで』の少年役に、『キング』も重なる部分があるからだ。もちろん、片や現代の一般少年、片や生まれながらに重荷を背負った中世の王子、その心を悩ます内容はおのずと違ってくるが、若者ならではの不安定さは同じだ。監督は、『君の名前で僕を呼んで』も観た上で、シャラメ起用を決めたというから、当然と言えば当然だが、ファンがシャラメに見て、魅力と捉えているであろうナイーブさが、若き王にも見える。

 シャラメはアメリカの俳優だが、この映画ではイギリス風アクセントで話していることも、欧米のファンには萌えポイントになっているようだ。

 アクセントと言えば、この映画に登場するもう1人の若手人気俳優、『トワイライト』シリーズでお馴染みのロバート・パティンソンはイギリス人だが、フランスなまりの英語で笑わせてくれる。ヘンリー5世と敵対するフランス王子役で、わかりやすく、いやみな野郎として描かれ、それに拍車をかけるようなフランスなまりで話す。
 
 戦乱の時代が背景だけにほぼ男の世界の話になっているが、最後に華を添えるのがフランス王女役のリリー=ローズ・デップだ。ちなみに、リリーはジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの間に生まれている。この映画がきっかけとなったのか、実生活でもシャラメとのデート現場が目撃されている。

Lily-Rose Depp attends "The King" UK Premiere during the 63rd BFI London Film Festival at Odeon Luxe Leicester Square on October 03, 2019 in London, England. (Photo by Lia Toby/Getty Images for BFI)

 そういう若手俳優陣にふさわしく、台詞も若々しい。「生きるべきか死ぬべきか」(『ハムレット』)、「どうして、あなたはロミオなの?」(『ロミオとジュリエット』)のようなシェークスピア劇の特徴でもある文学的な独白は廃され、平明で率直な台詞のやりとりのみだ。そのため、とてもわかりやすい。

 キャラクター、台詞ともわかりやすい反面、シェイクスピアの味わいは減じられた。辛口評価されているのはそのあたりだ。

 ミショッド監督と共同で脚本を書いたジョエル・エジャートンは俳優でもあり、ハル王子の友、フォルスタッフ役を演じている。

Joel Edgerton attends "The King" UK Premiere during the 63rd BFI London Film Festival at Odeon Luxe Leicester Square on October 03, 2019 in London, England. (Photo by Gareth Cattermole/Getty Images for BFI)

 ミショッド監督にエジャートン、そして、ヘンリー4世役のベン・メンデルソーンも加えれば、オーストラリア映画『アニマル・キングダム』(2010)のトリオだ。そちらは血みどろの抗争と家族を描いた秀作だ。それとはだいぶ毛色の違う『キング』だが、血みどろの抗争ならぬ泥まみれの戦闘と王族が描かれるという共通点もあり、そこでは手腕を発揮している。

 地元でアクの強い映画で成功した監督が、万人受けを求められるハリウッドで薄まってしまうのはよくあることだ。『キング』もわかりやすくし過ぎたきらいはあるが、迫力ある戦記もの、王子が王へと育っていくカミング・オブ・エイジ・ドラマとして楽しめる作品にはなっている。

Ben Mendelsohn, Joel Edgerton, Lily-Rose Depp, Tom Glynn-Carney, director David Michod, Timothee Chalamet, Thomasin Harcourt McKenzie and Nick Britel attend "The King" UK Premiere during the 63rd BFI London Film Festival at Odeon Luxe Leicester Square on October 03, 2019 in London, England. (Photo by Gareth Cattermole/Getty Images for BFI)

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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