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「壁にぶつかった時は発想の転換と本質の再認識が肝要。思い切って休むという選択肢があってもいい」流経大柏高校サッカー部・本田裕一郎監督

2019.10.25

【名監督のマネージメント術】流通経済大学付属柏高校 本田裕一郎監督

 2019年秋、ラグビー日本代表の快進撃が日本中を熱狂と興奮の渦に巻き込んだ。自国開催の2019年ワールドカップでの史上初のベスト8進出という快挙を受けて、多くの人々が勇気と活力を得たことだろう。スポーツにはそれだけ人の心を動かす大きな力があるのだ。

 しかしながら、何事もつねに順風満々というわけではない。ラグビー日本代表も長い暗黒時代を強いられてきた。95年の南アフリカワールドカップでは強豪・ニュージーランドに17対145の大敗を喫したこともある。この歴史的大敗を機にラグビー人気は下降線を辿り、再び上昇気流に乗るまでに20年もの歳月を費やしたのだ。

 彼らより一足先にワールドカップを自国開催し、世界の常連国となり、欧州に40~50人もの選手を送るようになった日本サッカー界も苦しい時代はあった。93年のJリーグ発足前はスタジアムに閑古鳥が鳴いていたし、一般大衆から見向きもされなかった。
 けれども、そんな冬の時代から指導に打ち込んできた者はいた。その1人が、高校サッカーの名門・流通経済大学付属柏高校(以下=流経)の本田裕一郎監督だ。かつて日本代表の玉田圭司(長崎)を育てた名将は3年前に大病を患いながら復活し、72歳になった今もピッチに立ち続ける。さらには、ほぼ毎年、欧州名門クラブのアカデミーに出向いて最新のトレーニングメニューや育成メソッドを学ぶほどのアグレッシブさを持ち合わせているのだ。

10日間のオフでリフレッシュ

 その本田監督が今夏、斬新な試みに打って出た。高校サッカー界が最も追い込みをかける夏休みに10日間のオフを取り、心身両面でリフレッシュを図ったのである。

「オフがないというのは、日本サッカー界の大きな問題でした。プロでも天皇杯決勝まで勝ち上がればほとんど休みなしに新シーズンの準備に取り掛かりますし、日本代表選手の場合は1月にアジアカップのような大会が入ったりすることもあって、ほぼオフを取れません。我々、高校生年代も春から冬にかけてリーグ戦があり、年末年始は高校サッカー選手権があり、それが終わるを新体制に移行する。オフなしの悪習慣を変えるために、日本サッカー協会が強制的に休みを取らせるくらいの必要性があると私は考えていたんです。

 そこで我々は今年、試験的に8月1~10日の10日間、活動を完全休止しました。自主トレも禁じて、寮生も実家に帰らせ、勉強や家族旅行、地域での奉仕活動など、それぞれ思い思いに過ごしてもらったんです。突然、『明日から休みにする』と通告したんで、選手たちは本当にビックリしていましたけど、10日後に再会した時には目の輝きが違っていた。コーチたちも活力を取り戻し、集中力が増していたんです。長年、染みついた習慣を捨てるのは、勇気のいることですが、『発想の転換』はやっぱり大事。それは一般社会にも言えることだと思います」

 昨今の日本では「働き方改革」が叫ばれており、大企業の多くは残業禁止や休日出勤禁止、男性の育児休暇取得や有給休暇取得などの施策が推し進められるようになった。だが、上からは無茶な要求をされ、下からは不満をぶつけられ、膨大な仕事量を抱え込む中間管理職は少なくない。中小企業に至ってはブラックな働き方を強いられるスタッフが後を絶たないだろう。過酷な環境を強いられて「どうしたらいいのか」と頭を悩ますサラリーマンは少なくないはずだ。

 そこで一回「思い切って休む」という選択肢を持つことで、発想の転換につながるケースもあると本田監督は言うのだ。

「会社の事情もあって、いきなり『休む』とは言えない場合もあるでしょう。それでも急ぎの案件がないのなら、思い切ってリフレッシュの方向に舵を切るという勇気もあっていい。流経でも今は朝練をやめ、毎週月曜日はオフとし、夏にも長期オフを取り入れた。本当は10日ではなく20日くらいの時間を与えた方がいいと考えているくらいです。

『そんなわけにはいかない』と目先のことだけに囚われていたら、組織の空気はそう簡単には変わりません。日本では長年、『量でカバーすればいい』という考えがまかり通っていて、長時間勤務や長時間営業が当たり前になっていました。私自身もそういう考え方で半世紀やってきましたけど、その発想はやはり限界がある。今は社会全体がそこに気づき始めています。だからこそ、大胆な発想を実行に移すことが肝要。その大切さを私は強調したいです」

あなたの仕事の本質は何か?

 それでも、休めない場合はある。「仕事を継続しながら、沈滞するムードを一掃し、効率的な仕事環境に変えていくにはどうしたらいいか」と悩むサラリーマンも多いだろう。そこで本田監督がアドバイスするのは「本質を再認識させること」。今、自分たちは何のために働いているのか、それを遂行することによって何が生まれるのかといった原点をしっかりと見つめ直せば、働く側の迷いは確かに減るだろう。

「我々のようなサッカーのチームにとって、本質とは『勝利』。それはサッカー日本代表もラグビー日本代表も同じ。そのために長期合宿や強度の高いトレーニングを積み重ねて大会に挑み、ギリギリの戦いの中で相手を倒すことに集中するんです。それだけの力を養うべく、目の前の課題を克服し、ストロングポイントを伸ばさなければいけない。その重要性をつねに忘れないように、『本質は何?』という問いかけを、私は選手にしばしばしています。

 サッカーの場合、最も本質に気づいているのは見ている人でしょう。勝てばファンは増えるし、負ければ減ります。そういう外からの目も大切にすべきです。それは一般企業においても言えることではないでしょうか」

 仕事であれば、売り上げ目標の達成、経費削減のノルマを果たす、イベントで一定以上の集客をクリアするなどいろいろな「本質」がある。他者の目を活用してもいいから、本質とは何かを見極め、若いスタッフにその重要性を気づかせ、やる気にさせられるのが、いい管理職なのだろう。

「本質は何?」という声かけも相手によっては違った言い方になるだろうし、メリハリも必要だ。相手の顔を見ながら、少しでも意欲を持たせ、フレッシュな気持ちで仕事に取り組んでいってもらえるように仕向けること。そういう作業の大切さは、指導者と管理職に共通する点と言っていい。ラグビー日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチはそのあたりの手腕に長けていたから、チームを躍動感と闘争心あふれる集団へと変貌させたのではないか。

 過去に全国制覇5回を数え、毎年のように全国大会でチームを上位に導いている本田監督も選手掌握術に長けた人物として知られる。それだけに、言葉の1つ1つには含蓄がある。指揮官の言う「発想の転換」と「本質の追求」という2つのポイントを参考にしながら、読者のみなさんも壁にぶつかった時のマネージメント方法を再考してみてはいかがだろうか。

取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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