
昔に比べると減ってはいるものの「やはり新年はお雑煮を食べて迎えたい」という人が多いのではないでしょうか?いざ自分で作ろうとすると吸い地や具材に迷ってしまうものです。地域別のお雑煮レシピや、美味しく華やかに見せるポイントを紹介します。
お雑煮を食べて素敵な1年に
お雑煮とは『お餅を入れた汁物』を指します。日本では昔からお正月に食べる習慣があり、その味付けや具材は地域によって大きく異なります。
そもそもお雑煮は、どうしてお正月に食べられるようになったのでしょうか?お雑煮のくわしいレシピを知る前に、お正月に食べる意味についてチェックしましょう。
お正月にお雑煮を食べる意味とは
お雑煮は、さまざまな肉や野菜などが入った『煮雑(ま)ぜ』が語源です。起源は、室町時代までさかのぼります。その頃は武家社会で『お祝いの膳』として出されていました。
お雑煮はお正月だけでなく、年間を通して『ハレの日』食べられていたのです。
その後、大晦日の夜に神様へのお供え物としてその土地の海や山の幸と餅をささげ、翌朝そのお下がりを元日の朝早くに汲んだ『若水』を使って雑煮にして食べるようになりました。
お正月にお雑煮を食べることで『神様からパワーをいただける』『安心して新年が迎えられる』という意味があります。
芋類や大豆など滋味に富んだ食材を複数入れた汁物で体を温めて『五臓六腑を健康に保つ』のも目的の一つです。
お雑煮に適したサイドメニュー
お雑煮を食べるときは、お正月らしいサイドメニューも必要です。昔から新年に食べると縁起がよいとされている代表的なおせち料理を知って、お雑煮と一緒に楽しんではいかがでしょうか?
おすすめのサイドメニューは『黒豆』『栗きんとん』『伊達巻』『煮しめ』です。黒豆は健康を意味する言葉で「元気に働けますように」という願いが込められています。
栗きんとんは黄金色であることから豊かな1年を象徴し、伊達巻は卵をたくさん使うため子孫繁栄を意味する縁起物です。
煮しめは、さまざまな食材を一つの鍋で煮ることから「家族仲良く結ばれますように」という願いが込められています。
お雑煮とおせち料理を一緒に食べれば、きっと素敵な1年をスタートできるでしょう。
地域で異なるお雑煮レシピ
お雑煮は、地域によって味も具材も異なります。さまざまな地域のお雑煮レシピを知ったうえで、自分好みのお雑煮を完成させてはいかがでしょうか?
数あるお雑煮の中でも、特徴的で美味しいと評判のお雑煮レシピを三つ紹介します。気になるお雑煮があれば、新年を迎える前に一度トライしてみるとよいでしょう。
かしわの関東風お雑煮
関東風お雑煮といっても、地域ごとにバラつきはあります。ただ、一般的に関東風お雑煮といえば『かしわ=鶏肉』が入っているのが特徴でしょう。
吸い地はお醤油ベースのすまし汁、お餅は角餅というシンプルなスタイルです。具材はかしわのほかに、かまぼこ・しいたけ・三つ葉・にんじん・大根などが入ります。
年末年始はつい食べ過ぎてしまう傾向があるため、さっぱりとしたお汁と淡白な具材の関東風お雑煮なら胃にも優しいでしょう。こってり系よりあっさり系が好きな人におすすめです。
牡蠣が入った広島県のお雑煮
広島県のお雑煮には、名物の牡蠣が入っています。新鮮かつ美味しい牡蠣がとれる広島県ならではの、贅沢なお雑煮です。
牡蠣は『賀喜(カキ)』という当て字を使うことで、新年を祝う食材としても親しまれている食材です。『福をカキ寄せる』という意味も込められています。
レシピはシンプルで、昆布と牡蠣のだしを使ってすまし汁を作り、よく洗った牡蠣と丸もちを加えれば完成です。下処理として『牡蠣を湯通ししておく』と美味しく仕上がるでしょう。
広島県出身でなくても、牡蠣好きなら一度は試してみたいお雑煮といえるのではないでしょうか?ただし、牡蠣アレルギーの人もいるため、親戚に振る舞う場合は事前に確認したほうがよいかもしれません。
あん餅がアクセントの香川県の雑煮
甘いお雑煮にトライしたい場合は、あん餅が入った香川県のお雑煮がおすすめです。一風変わったお雑煮としてよくTVや雑誌などで取り上げられるため、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
白味噌仕立てのお汁に大根・にんじん・油揚げなどを入れて煮込み、最後に焼いたあん餅をのせればできあがりです。お好みでごぼうや里芋などを入れても合うでしょう。
好き嫌いが分かれるお雑煮ですが、一度食べれば病みつきになると口コミで広がっています。和菓子や甘いもの好きの人なら、きっと気に入ることでしょう。
基本のお雑煮の作り方
どのようなお雑煮を作る場合も、まずは基本の作り方を知っておくことが大切です。ベーシックなお雑煮のだしをマスターしてから、自分でアレンジを加えていきましょう。
お雑煮には欠かせないお餅の焼き方にもコツがあります。
だし汁を使ったシンプルな吸い地
お雑煮のお汁には『すまし』『白味噌』『赤味噌』などさまざまなタイプがあります。ベーシックなお雑煮を作るなら、まずはだし汁を使ったシンプルな吸い地に挑戦しましょう。
以下は、2〜3人分のレシピです。
- だし カップ4
- お酒 大さじ1
- 醤油 大さじ1/2
- みりん 大さじ1/2
- 塩 小さじ1
調味料をすべて鍋に入れて中火にかけます。沸騰すれば、吸い地の完成です。塩加減は、味見をしながら調整することをおすすめします。
本格派はプロの味を目指そう
本格的なお雑煮を作りたい場合は、鰹と昆布でだしをとってプロの味を目指しましょう。家族や友人に振る舞うときにも喜ばれます。
以下は、2人分のレシピです。
- 鰹節 20g
- 千昆布 10g
- お酒 大さじ1と1/2
- 醤油 大さじ1と1/2
- みりん 大さじ1と1/2
- 塩 ひとつまみ
鍋に水1Lと千昆布を入れ、常温で2時間置きます。その後、火にかけ細かい泡が出てきたら千昆布は取り出しましょう。沸騰したら火を止め、鰹節を広げ入れます。
1〜2分ほど経ってからキッチンペーパーを敷いたザルに流し込んで漉せば、本格的なだし汁のできあがりです。漉す作業はひと手間かかりますが、風味のよいお雑煮を作るためのコツとして覚えておきましょう。
お餅の焼き方
お餅は、トースターで焼く家庭が多いでしょう。トースターの場合、焼き加減にムラが出たりお餅が網にひっついたりしがちではないでしょうか?
お餅はお雑煮の出来栄えを左右するといっても過言ではありません。吸い地だけでなくお餅の上手な焼き方もマスターしましょう。
見た目も味も美味しく仕上げるには『フライパン』を使ってお餅を焼くのがおすすめです。フライパンなら均等に火が通ります。
テフロン加工のものであれば、油を引かなくてもお餅がひっつくこともありません。ほかの素材の場合は、アルミホイルやクッキングシートを敷いた上にお餅をのせて焼きましょう。
焼き加減や膨らみ加減も調整しやすく、美味しそうなお餅に仕上がります。仕上げに1分ほどフタをして、蒸らすのもおすすめです。
美味しそうに見せるポイント
せっかくお雑煮を作るなら、見た目にもこだわりたいものです。美味しそうに見せるポイントをおさえて、お雑煮作りを楽しみましょう。
漆器にこだわる
料理は器によって雰囲気がガラリと変わります。お雑煮を美味しそうに見せるなら、漆器にこだわりましょう。漆器といえば、昔からお祝いの席には欠かせない存在です。
落ち着いた色合いの漆器を選ぶと、野菜やお餅を引き立ててくれます。漆器を選ぶときは『ホッと和むような色合い』『やや深めの形状』を意識するとよいでしょう。
なかでもおすすめは『山中漆器』の器です。天然木材加工の伝統を守りながらも、時代の流れを受けて合成漆器の生産にいち早く取り組み、飛躍的に生産額を伸ばしています。
合成漆器とは、プラスチックの器に漆のコーティングを施したものです。軽くて割れにくく、小さな子どもがいる家庭にも愛用されています。
近年では、食器洗い機や電子レンジ対応のものまで出てきているのも注目です。
結び三つ葉を添える
お雑煮を美味しく見せるには、最後に『結び三つ葉』を添えることです。クルッと輪っかを作るように結んだ三つ葉を添えるだけで、お正月らしい華やかな印象に仕上がります。
簡単なお雑煮でも結び三つ葉を添えると本格的な雰囲気に見えるため、初心者にもおすすめです。
結び三つ葉は『縁を結ぶ』という意味から縁起がよいといわれており、お正月以外でもお祝いの席で用いられています。
三つ葉を沸騰したお湯に5秒ほどくぐらせて火を通します。すぐに冷水で冷やしたら、鮮やかな緑色に色づくでしょう。葉の根元と茎の先をUの字に折って茎を二重にします。そのままクルっと一つ結びすれば完成です。
華やかで映えるお雑煮
お雑煮はお正月に食べるため、少しでも華やかに演出したいのではないでしょうか?おすすめの飾り方のポイントを三つ紹介します。
にんじんを飾り切りする
お雑煮には、色鮮やかなにんじんが映えます。ひと工夫加えて飾り切りにして、お雑煮に華やかさをプラスしましょう。おすすめの形は、梅に見立てて切る『ねじり梅』です。
にんじんの側面を五角形になるように切り落としたら、一辺の真ん中に切り込みを入れます。角から切り込みに向かって、花びらの丸い部分をイメージしながら切りましょう。
花びらの境目に浅く切り込みを入れ、それぞれ斜めに削ればねじり梅のできあがりです。難しい場合は、100均などで購入できる花形の抜き型を使えば簡単に作れます。
普段はゴロっと乱切りされているにんじんが飾り切りされているだけで、特別感を演出できるでしょう。
寿なると巻を使う
手っ取り早くお雑煮を華やかにするなら『寿なると巻』がおすすめです。なるとの真ん中に『寿』という文字が入っているため、新年のお祝いムードをさらに盛り上げてくれるでしょう。
筒状のなるとを横に薄切りしていくと、金太郎飴のように寿の字が入ります。なるとがお雑煮に使われはじめたのは、栄養に対する意識が高まった1960年代後半~1970年代前半です。
この頃から日本ではたんぱく質を摂る動きが盛んになり、お雑煮や煮物にちくわやかまぼこ、なるとが取り入れられるようになりました。
このようにお雑煮の具材を一つ一つ見ていくと、日本の歴史が詰まっていることがわかります。お雑煮に使われている意味などを知ると、お正月に食べる楽しみにもつながるのではないでしょうか。
かわいらしい手まり麩を浮かべる
近年、お雑煮のトッピングとしてかわいらしい『手まり麩』が注目を集めています。
手まり麩とは、丸めた生麩に赤や青など鮮やかな色で着色した糸状の生麩を使って、手まり模様に細工したお麩のことです。上から見るとお花のように見えるデザインなどもあります。
お雑煮に何個か浮かべるだけで、華やかな印象に仕上がるでしょう。ピンクやイエローなどカラフルなものも多いため、好みに合わせて選んではいかがでしょうか?
関東風お雑煮などシンプルなものにプラスすると、お正月らしさを演出できます。スーパーなどで購入できるため、アクセントとして添えてみましょう。
文/編集部