人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

ロンドン映画祭で登壇した亡命中のミハイル・ホドルコフスキーが語ったこと

2019.10.15

■連載/Londonトレンド通信

 10月2日から13日まで開催の第63回ロンドン映画祭で、ロンドンで亡命生活を送るミハイル・ホドロフスキーを追ったドキュメンタリー映画『Citizen K』が上映された。上映後にはアレックス・ギブニー監督とともに、スペシャルゲストとしてホドロフスキーその人が登場、Q&Aを行った。

 映画は、記録映像、ホドロフスキーのインタビューに、事情を知る人々の証言とで構成され、ロシアの変動期、まさにジェットコースターのように上り詰めたところで急降下したホドロフスキーの軌跡を追うもの。

 共産主義のソビエト連邦から自由経済のロシアに移行する頃、ホドロフスキーは銀行家として財を成し、それから興した石油会社ユコスでも成功、ロシア一の富豪と言われるまでになる。この頃はロシアの富のほとんどを握っていた7人がロシア政府と癒着していた。その7人にホドロフスキーも含まれていた。

 経済界で大物となったホドロフスキーは政治的な発言もするようになり、次第にプーチン大統領批判を始める。そして、脱税の罪に問われ、実刑判決が下る。10年を獄中で過ごした後、ソチ五輪時の恩赦で刑を解かれると、すぐドイツに飛び、現在はロンドンに移り住んでいる。

 映画中には、脱税、後には石油を売らずに盗んだという矛盾した罪状まで加わる裁判で、検察の陳述に笑いがあがる様子もある。

 海外脱出後のホドロフスキーは、殺人罪にも問われていて、プーチンの息がかかった司法、メディアでは殺人犯扱いされている。ロシアに戻れば、逮捕、収監されるため、ロンドンでの暮らしは事実上の亡命生活だ。

 プーチンの独裁体制をあぶりだしながらも、ギブニー監督はホドロフスキーを対抗するヒーローに仕立てあげてはいない。ホドロフスキーも冷徹な視線で映し出す。

Director Alex Gibney poses during a portrait session during the Filmmakers Afternoon Tea at the 63rd BFI London Film Festival at The May Fair Hotel on October 04, 2019 in London, England. (Photo by Gareth Cattermole/Getty Images for BFI)

 ホドロコフスキーは、プーチンにユコスを取り上げられた後も、友人たちの尽力で保たれた財力に物を言わせ、ロシアの民主化を支援する活動をしている。「ソファーに座っているだけではだめだ」とロシアの大衆に訴えかけるホドロフスキーが、ソファーどころか、遠く離れたロンドンからの大画面の中にいるという、なんとも説得力に欠ける場面もしっかりとらえている。

 タイトルのCitizen Kは、ホドロフスキー(Khodorkovsky)のKに、名作『市民ケーン(Citizen Kane)』をかけたものだ。オーソン・ウェルズ監督/脚本/製作/主演のこの映画では、新聞王となったケーンのさびしい最期までが描かれる。石油王となったホドロフスキーは、まだ最後ではいないにしろ、プーチンとの戦いに敗れた状態ではある。

 上映後、まず、ギブニー監督がそのタイトルについて、「とても良いタイトルのように思えました。壮大な話であり、Kはカフカの小説(『城』)の主人公でもある。ダークなコミックワールド、ロシアの権力構造を表すものです」と説明した。

 そのプーチンの権力について、ホドロフスキーは「この20年近く、プーチンは全ての団体を壊してきました。実のところ、彼とそれぞれの代表との一致でもあるのです。『好きにしていいですよ。私の意向にそっているなら』ということです。ですが、国そのものにとっては、それほど良いことはありません」と断じた。

 そう言うホドロフスキー自身が、当初、政府側だった責任を問われると、「私は選ばれた時、喜びました。間違っていたのは、ほんとうの民主主義が立ち上がる前に必要な経過と考えたことです。私たちは、そのつけを払わなければいけない。私は払っています」と、映画中と同様、自身の間違いについても言葉を濁すことなく論旨明快に答えた。

ミハイル・ホドロフスキー(左)とアレックス・ギブニー監督(右)第63回ロンドン映画祭

 プーチンの民族主義が、トランプが大統領になったアメリカ、ブレグジットに直面しているイギリス、そしてヨーロッパの責めを負うべきではとの問いには、「いいえ、ブレグジットは全てあなた方が負うべきものです」と即答、あまりの容赦なさに会場大爆笑となったところで「プーチンはハッピーでしょうね」と加えた。

 逆に、イギリスがロシアの民主化を助けられるかについて「ヨーロッパはロシアの未来について言える立場にはありません。ロシアは大きな国です。この問題は、その中で解決されなければなりません。私たちは西洋を例として見ることはできます。80年代には西洋は明確な例でした。現在の西洋には民主主義の崩壊が見えます。それを乗り越え、また明確な例となってくれることを望みます。それが、あなた方ができる最善のことと思います」との答えが締めとなったQ&Aは、大きな拍手のうちに終了した。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

新型コロナウイルス対策、在宅ライフを改善するヒントはこちら

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2020年6月16日(火) 発売

DIME最新号の特別付録は「デジタル調理温度計」!特集は「安くてイイもの」&「新しい働き方」&「マイナポイント」!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。