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元機長が告発映画制作、多数の乗務員が病む機内空気の毒性

2019.10.07

■連載/Londonトレンド通信

 第27回レインダンス映画祭で、トリスタン・ロレイン監督/プロデューサーのドキュメンタリー映画『Everybody Flies』ワールドプレミアが開催された。タイトル通り、誰もが飛行機を利用する時代、疑いを持つ人もそう多くはいないであろうシンプルな問い「私たちが吸っている機内の空気は安全なのか」を投げかける映画だ。

 そもそもロレイン監督はブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の機長だった。体を壊した先輩機長がきっかけで機内空気の安全性に疑問を抱くようになり、18年かけて調査、そうして完成した映画がロンドンでこの9月に開催されたレインダンス映画祭でのお披露目となった。

 ロレイン監督は、BA機長を辞めた後、英国立フィルムスクールで監督/プロデューサー業を学び、プロダクションを設立した。そして、同じスクールで学んだベス・モランを共同監督として、この映画を撮った。映画中でロレイン監督は案内役も務めている。

 まず、現在、使われている旅客機の構造を説明する。機内に流れる空気に、エンジンからの空気が混入してしまう構造だ。それから、エンジンで使われるオイルに毒性があることを示す。驚くべきことに、ここは調査するまでもなく、オイルが入っている缶に、発がん性がある、神経系に影響する、などが明記してある。公然の秘密なのだ。

 そうであれば、気になるのは毒性の強さだ。ロレイン監督は、BA、また、イギリスに限らず、各国の体を壊した乗務員を訪ねる。世界各国で枚挙にいとまがないほどの事例があり、中には航空会社を告訴している人もいる。乗務員ばかりでなく、乗客の事例まである。

 日常的に機内の空気を吸う乗務員を病ませるに十分な毒性、時には、そこまで長期間を機内で過ごすことのない乗客も病むことがあるレベルの毒性ということだ。だが、公的な調査はなされていない。公然の秘密たる所以だ。

 それでは、エンジンからの空気と分けるのが難しいかというと、実はそういう飛行機があるという。ボーイング787型機だ。では、なぜ、その飛行機、また、同様の飛行機を使わないのか。エアコンプレッサーを積んでいたボーイング787型機は、その分、機体が重くなる=飛ばす経費が余計にかかる、という理由で、使われなくなったという。映画中でロレイン監督は「金だ。とどのつまり、金なんだ」と言い放つ。

 映画後半には、長い年月をかけたこの映画の撮影期間中にも、亡くなった人がいることが明かされる。きっかけになった先輩機長も、後半では病みやつれて、最初に登場した時と別人のようになっている。華々しいイメージがある航空会社、ロレイン監督含め、それぞれがパイロット、スチュワーデス、スチュワードにあこがれ、その職に就いたのであろうことを思うとやりきれない。

 ロレイン監督は、映画にするだけでなく、調査結果を公表している。映画中にもラジオでインタビューを受けるシーンや、長年の調査が表彰されるシーンも登場する。

 とはいえ、残念ながら、まだ、この公然の秘密は、一般にはそれほど知られていない。上映会場でも初めて知った観客がほとんどだったようで、映画終了後のロビーで監督を取り囲み、長年の苦労をねぎらう人や、他人ごとではない事実を伝えてくれたことに感謝を述べる人もいた。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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