
■連載/ヒット商品開発秘話
アサヒ飲料が2019年4月に発売した『三ツ矢レモネード』の売れ行きが好調だ。レモン特有の爽やかな酸味と、ほのかな苦味が楽しめるのが特徴の有糖炭酸飲料で、甘さ控えめな大人向きの味わいとなっている。年間100万ケース(1ケース:450ml入りペットボトル24本)を目標に発売したところ、発売直後から高い支持を集め、8月末時点で目標の100万ケースを超える102万ケースに到達した。
炭酸水の味わいは有糖炭酸飲料でも受け入れられる
『三ツ矢レモネード』は名前からわかるように、2019年で生誕135周年を迎えた『三ツ矢』ブランドから発売されている。2018年初頭から考えられ始め、開発に着手したのは同年春からだった。
企画に至った経緯は、炭酸飲料にある傾向が見られるようになったことだった。マーケティング本部マーケティング一部炭酸グループ 課長の久保麻亜紗さんは、その傾向について次のように話す。
「当社の商品でいえば『ウィルキンソン』のような炭酸水の売れ行きが、近年伸びています。炭酸水の売れ行きが好調な理由の1つが、直接飲用が増えてきたこと。炭酸水のすっきり、さっぱりした味わいは、炭酸飲料全般に求められていると捉えることもできたので、炭酸飲料のマジョリティーである有糖炭酸飲料のユーザーに向けてすっきり、さっぱりとした味わいを提供することができれば受け入れられるのでは? と考えました」
同社が調べたところ、すっきり、さっぱりした味わいはどの世代でもニーズがあることが確認できたという。性別では男性よりも女性の方が、こうした味わいを求める傾向が強かったことから、有糖炭酸飲料のボリュームゾーンである30〜40代で、なおかつ有職女性をメインターゲットにすることした。
アサヒ飲料
マーケティング本部マーケティング一部炭酸グループ 課長 久保麻亜紗さん
目の前に並んだ10種類を超える試作品
フレーバーとしてレモンを選んだのは、レモン味には根強い人気があるためである。定番である上に、レモンサワーの人気などで流行していることも後押しになった。
レモン味にするに当たりこだわったのが、フレッシュさを打ち出すことだった。「有糖炭酸飲料をはじめとした一般流通している清涼飲料水ではまだ、レモンそのものが味わえるものが少ないのではないか、とつねづね思っていた」(久保さん)ことから、大人も飲めるレモン味をつくることができれば受け入れられるのでは? と考えた。
このようなことから、原料のレモン果汁にはこだわった。採用したのは、果肉だけでなく果皮もすりつぶしてつくったコミニュテッド果汁である。レモンサワーなどで、果皮まですりつぶした果汁を使ったものが受け入られていることなどから、フレッシュさと本格感を出すためには有効だと判断し採用した。
最初からすっきり、さっぱりした味わいだと物足りないものになるので、飲み始めはボリューム感が感じられつつも、後味がすっきり、さっぱりしたものにすることにした。ただこれは、相反する味わいを両立させることを意味する。果汁の味わいや配合量、炭酸ガス圧の強さ、香りの強さといった、特定の要因を調整して実現するものではなく、全体のバランスを調整することでつくり出さなければならなかった。
それに、ボリューム感を出すことについても、すっきり、さっぱりとした後味を出すために甘さが控えめになることから難しかったという。複数の香料を使って香りを強調するなど数々の工夫を盛り込んだ。
久保さんが最初にボリューム感について検証したとき、目の前には10種類以上の試作が用意された。試飲結果を踏まえて絞り込んでいったものをさらにつくり込んでいくことを繰り返した。方向性が決まったら、香りや甘さといった個別テーマでつくり込みと検証を行ない、徐々に完成度を高めていった。
有糖炭酸飲料の開発ノウハウが豊富な同社であっても、『三ツ矢レモネード』のように甘さ控えめの有糖炭酸飲料の開発ノウハウは多くなかった。「生かせるノウハウが少なかったので、これまでの有糖炭酸飲料の開発よりは時間がかかりました」と久保さんは振り返る。
こうしてつくり上げた同社は、社外モニター調査を2回実施。ターゲットとした30〜40代の有職女性をそれぞれで100人程度集めて生の声を聞いた。「さっぱりしている」「食事にも合いそう」などといったポジティブな反応が多く得られたという。
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