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ドキュメンタリー映画「Queering the Script」から読み解くレズビアンとメディアの関係

2019.10.01

■連載/Londonトレンド通信

 第27回レインダンス映画祭で、ガブリエル・ジルカ監督によるカナダ映画『Queering the Script』のイギリスプレミアが開催された。今年は9月18日開幕、29日閉幕となったレインダンス映画祭は、ロンドンで行われるヨーロッパ最大級のインディペンデント映画祭だ。

『Queering the Script』はレズビアンとメディアに関するドキュメンタリー映画。

 

 ファンベースで展開していくのが面白く、クィア文化の一端も垣間見られる。テレビドラマ中のレズビアンがファンによって検証され、変化していく過程は、テレビ対SNSの考察ともなっている。

 ClexaCon(クレクサコン、後述)から始まる映画は、様々なLGBTQ+の女性たちの集いや、その声を紹介する。Shipping(シッピング)やSlash Fiction(スラッシュ・フィクション)といった遊びも説明される。

「2人のキャラクターの頭をつかんで、無理やりキスさせるようなこと」と表現されるシッピングとは、作品中ではそういう関係にない2人をカップルに見立てることだ。『X‐ファイル』シリーズの主人公、モルダーとスカリーをくっつけたいファンから始まったという。シッピングは同性、異性問わずで、ファンの多い『ハリー・ポッター』シリーズなど、ハリーとハーマイオニー、ハリーとドラコなどいろいろな組み合わせが楽しまれている。

 スラッシュ・フィクションも似ているが、こちらは同性同士のキャラクターに限られ、『スター・トレック』シリーズのカークとスポックが古典的なところだ。

 レズビアンの間でそういう遊びが盛り上がったのが、『ジーナ』シリーズだった。露出が多い古代風戦闘着に長い黒髪をなびかせた女戦士ジーナが主人公のシリーズで、レズビアンが萌えたのはジーナと旅の友である少女ガブリエルとの関係だった。先にあげた写真の女性たちは、ジーナ・リトリートというジーナ関連で遊ぶイベントの参加者だ。アメリカで放映されたのが1995年から2001年にかけてだから、もう20年にもなるが今も根強い人気のようだ。

 映画には制作者側の人々も登場する。ジーナを演じたルーシー・ローレスも、当時を振り返ってコメントしている。

『ジーナ』ではジーナとガブリエルが恋愛関係として描かれることはなかったが、口移しで水を飲ませるという思いがけないキスシーンがファンを狂喜させた。

 1997年から2003年にかけてアメリカで放映された『バフィー~恋する十字架~』になると、レズビアンのキャラクターが現れる。だが、このキャラクターはドラマ中で死んでしまう。

 そして、2014年になるとクレクサコンの基となった『ハンドレッド』の放映がアメリカで始まる。『ハンドレッド』の女性主人公クラークと女友達レクサをシッピングさせたシップネームがクレクサだ。だが、レズビアンとして描かれたレクサは、またもや、ドラマ中で死んでしまう。

 この頃にはSNSの登場で、『ハンドレッド』にはファンからの意見がリアルタイムで寄せられ、制作側もそれに応えることをしていた。それだけに、レクサが『バフィー~恋する十字架~』の際とほぼ同じ設定の死に方で消えていったことに対するファンの怒りは凄まじいものとなった。

 その怒りは、毎年、ラスベガスでLGBTQ+の女性に向けて開催されるクレクサコンを生んだばかりでなく、その後のドラマ制作を変えた。ファンたちはテレビドラマ中のレズビアンやゲイのキャラクターの死亡率が非常に高いことを統計で示し、その偏向を追及したのだ。

 デッド・レズビアン・シンドロームとも呼ばれ、途中で死んでも大筋には影響を与えない、重要性の低いキャラクターとされていること、また、LGBTQ+を匂わせるキャラクターを登場させることで興味を引こうとするQueerbating(クィアベイティング)にも、異議が唱えられた。

 ドラマ途中で死なせることがレズビアン、ゲイのステレオ・タイプな描き方と証明され、そういうことが減ってからも、レズビアンのキャラクターが白人ばかりであることが示されると、黒人レズビアンのいるドラマが作られるといった具合に、変化は進んでいる。

 テレビがうっかり表してしまう偏見や差別を、ファンは見逃さず、テレビが応える。マスメディアがSNSを通したファンの声で変わっていく形だ。偏向を正そうと声をあげるファンたちは女戦士ジーナに劣らず頼もしい。

文/山口ゆかり
ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。http://eigauk.com

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