
車両や駅構内のバリアフリー化を進める東京メトロでこの度、新しく開発中の「視覚障がい者向け駅構内ナビゲーションシステム」の導入検証が行われた。「全てのお客さまに安心して地下鉄をご利用していただくために」と開発が進められているこの最新システムをご紹介しよう。
ナビゲーションシステム「shikAI」とは?
現在、開発が進められているこのシステムは「shikAI」と名付けられた。名前の由来は日本語の「視界」とこのシステムを成立させるのに欠かせないAIを掛け合わせたものだ。
東京メトロでは主に視覚障がい者の利用客向けに足元の黄色い線上ブロックや点状ブロック、点字案内盤、音声案内などを備えているが、今回の「shikAI」はそれら既存の施設と連携しつつ、新たにスマートフォンを活用したシステムになっている。
誘導用ブロックと白杖だけでは、利用者だけで行き先を明確に把握することが難しく、また、東京メトロ側は明確に案内しづらい現状があり、特に不慣れな駅では迷いやすく不安に感じている利用客が多い。
そんな中、音声呼び上げ機能や文字の拡大、白黒反転などのユニバーサル機能などを生かしたアプリの普及により、視覚障がい者がスマートフォンを利用することが、当たり前のものになっている。そんな状況を踏まえて、東京メトロは今回のような有効策を探っている。
スマートフォンと床面のQRコードで構成される「shikAI」。画面はシンプルでフリックで操作できる
導入検証をお知らせするポスター
システムの概要を大まかに説明すると、専用アプリをインスートルしたスマートフォンを利用者が自身の足元にかざしながら移動する。すると分岐点などに設置されている点状ブロックに設置されたQRコードを専用アプリが読み取り、その場所からの移動方向などを音声案内としてスマートフォンから流れるという仕組みだ。
アプリ上にホームやトイレ、改札などの目的地を入力すると、QRコードを元にアプリが利用者の現在位置を把握。そして「改札です、直進4メートル」、「右3メートル」、「階段です、17段下り、踊り場があり、さらに17段下ります」というふうに自分の立っている現在位置からの目的地までを具体的に案内してくれるのだ。
このシステムは東京メトロが単独で開発したものではなく、社外からアイディア・技術を広く募集し相互交流で新しいもの作り出すプロジェクト「Tokyo Metro ACCELERATOR 2016」で最終審査を通過した「プログレステクノロジーズ」との連携で開発が進められている。
2017年3月には東京メトロ総合研修訓練センター内の模擬駅などで、位置情報の正確な取得などを目的とした実証実験を合計7回実施したのち、QRコードを使ったシステムを開発し有楽町線の辰巳駅で実証実験を実施。そして今回の導入検証実施となった。
こちらが床面のQRコード。曲がり角や目的地、通路などいたるところに貼り付けてある
東京メトロのバリアフリー化
東京メトロではハード面、ソフト面ともにバリアフリーが進められている。
列車との接触事故を防ぐホームドアの存在は、視覚障がい者にとって重要な意味を持つが、こちらは2019年6月末時点で東京メトロ全線の約69パーセントで設置が完了し、2025年度までに全路線全駅へのホームドア整備を完了させる予定だ。
また、ホームから地上までの段差解消、多目的トイレなど続々と整備が進められている。
さらに、車両についてもどんな人でも利用しやすいよう、新型車両の導入が進められている。
丸ノ内線に導入されている最新鋭の2000系にもバリアフリー設備などが満載
6両全てにフリースペースと電源コンセントを設置している
一方、ソフト面では警備員の増配置、ハンズフリー型インカムの導入を実施しており、そのほかでもサービス介助士の資格取得を全駅社員に推進し、対象駅社員については2018年3月末までにおおむね習得が完了している。