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インドの国民的人気俳優アーミル・カーンが社会課題に挑み続ける理由

2019.09.02

インド映画興行収入トップ5のうち3作品に登場のインド人俳優アーミル・カーンは、同時代の社会課題への切り込み隊長

 レオナルド・ディカプリオが創立者の一人である環境保護団体が、火災が起きたアマゾンの熱帯雨林を守るために5億円以上寄付したニュースは記憶に新しい。ジョージ・クルーニーは寄付活動に加えて人権問題に対して声明をメディアに寄稿する等、物言う俳優としても知られている。知名度をうまく活用して、仕事とは異なる分野で社会貢献活動をすることはハリウッドではよくある。

 ところ変わりインドでも映画は大衆の娯楽だ。映画業界には、映画そのものを通じて社会課題に向けて提言し、商業的にも成功に導くという離れ技を成す人物がいる。俳優と映画プロデューサーの2役をこなす、アーミル・カーンだ。

 ここでは、彼が導く社会課題をテーマにした映画の潮流と、彼がプロデュースして出演する最新映画『シークレット・スーパースター』を紹介する。

インド映画『シークレット・スーパースター』(左:アーミル・カーン)
©AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017

 アーミルはインドに生まれ育ち、父親は映画プロデューサー、自身は大学で経済学を学んだ。社会課題をテーマに対談するテレビ番組にレギュラー出演した経験もある。現在、彼自身がプロデュースもしくは主演した映画のうち3本が、インド映画の歴代興行収入のトップ5にランクインしている*。
* Top 20 Highest Grossing Bollywood Movies of AllTime Worldwide by Gross Box Office Collection (2019年7月より)

 インドの人口は数年以内に14億人に手が届き、中国を抜いて世界一となることは確実だ。経済の成長が著しく、生活のインフラ整備は全般的に途上の段階だ。そして多様な宗教や文化背景があり、収入や教育レベルの格差が大きく、混沌としているのが現実だ。つまり、社会の課題も多く差し迫った問題でもある。

シリアスなだけじゃない。身近なストーリーを軽やかに描く3つの社会課題系エンタメ映画

 2013年に日本公開された『きっと うまくいく』(2009年世界公開)は、インド教育の頂点に立つ大学に通う学生のストーリー。当時44歳だったアーミルは、実年齢と役年齢の20歳以上の差を埋めて主役の学生を演じた。この作品はインドの現実社会では競争が激しい「教育」への批判を盛り込みつつも、ラブストーリーや笑いも誘うコメディとして世界中でヒットし、商業的にも大成功を収めた。ちなみに、映画監督のスピルバーグは「この映画を3回観た」とインドの新聞の取材に答えている。

教育コメディ映画『きっと、うまくいく』(中央:アーミル・カーン)
©Vidhu Vinod Chopra Production 2009. All rights reserved.

 アーミルが、調査のために地球に降り立った宇宙人を演じる『PK(ピーケイ)』(2014年世界公開)は、人間社会での宗教や迷信にまつわる矛盾や差別というテーマに切り込んでいく。人間社会を知らない異星人の純粋な疑問やそれに基づく一見おかしな行動で、逆に私たちが信じ込んでいることの根源を揺さぶりながら問題提起していくSFコメディだ。

 ある時、PKは自分にとって一番大切なリモコンを盗まれてしまった。それを見つけるには警官でなく「神様に聞くように」と言われ、人々に神様の居場所を聞きまくり会いにいく。人によって信じる神は異なるため、結果として多様な宗教の儀式に次々と参加することになる。その過程で、「神様は唯一無二」と人間は言うが現実には宗教は複数あり、人それぞれに神様は異なると知る。そして、異なる宗教の人々を結びつけて喝采を受けるシーンへとつながる。PKは異星人だからこそ、人間が見落としがちなことを教えてくれた。

 この映画の公開前後に時を同じくして、実社会では世界の様々な地域でコミュニティの分断が加速してきた。この映画を通じたメッセージの輪郭がより際立ってきたのが現実だ。

 そして2016年世界公開の『ダンガル きっと、つよくなる』は、国内チャンピオンとして活躍したレスリング選手の実話を元にしている。アーミルはこの映画をプロデュースし、主役の元レスリング選手を演じた。彼は息子が誕生したらレスリング選手として育てようと考えていたが、女の子にしか恵まれず葛藤が生まれる。結局は娘二人を選手として育て、彼女たちはレスリング選手として世界大会で活躍することになる、というスポーツと家族愛の物語だ。

 アーミルは「男尊女卑の観念は深くインド文化に根付いている。この物語に登場する権威ある父親は息子こそ自分の夢を叶えると語るが、実際に彼の夢を叶えたのは娘だった」と映画の背景を説明している。そして「この家族の中で強くて力のあるリーダーとしての父親は、インド社会では男性たちの共感を得て」男性中心の社会を変えていくことに対して、男性自身が前向きになることの自覚を促したのだった。また実際に映画公開すると主な観客は「子供を持つ親」で、親たちの関心の高さを反映している。

 この映画は米国はじめ世界で愛され、特に中国では非常に人気となりアーミルは中国政府から賞を授与されたという。また現在インド映画の中では、歴代の世界興行収入の第1位だ。

 この3作品はいずれも同時代のインド社会での問題を提示し、時には皮肉り、課題を笑いに変え、アーミル自身が演じて前向きなメッセージをインド大衆に訴えてきた。そして世界を巻き込み、ファンも増え、発信するメッセージは拡大している。彼のツイッターのフォロワー数は、2500万を超える。

 3作品全て日本語版があるので、私たちにも身近で嬉しい。

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