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なぜユニクロやMUJIはヨーロッパの消費者の心をつかむのが上手いのか?日本企業が自信を取り戻すヒント

2019.09.09

長らく休講していた武邑塾を再開し、改めてヨーロッパにおける日本文化の受容を語り始めたメディア美学者の武邑光裕氏。ヨーロッパの新しい中心の地位を固めつつあるドイツ・ベルリンで日常を過ごす武邑氏が感じる、日本文化のポテンシャルの背景には、禅やミリマリズムなど日本人が意識の奥にしまってしまった精神性があると指摘する。

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「日本は、ヨーロッパなどと比較して、データ保護やプライバシーへの関心が低く、議論が成立しない」「日本は、独自のガラパゴスデータ化が進んでいる」などの警鐘を鳴らす、ベルリン在住のメディア美学者・武邑光裕氏。こうしたことの背景には文化的障壁とも言える断絶があり、この分野における日本のプレゼンスの低下を武邑氏は強く憂いている。その一方で、ベルリンなどヨーロッパでは、日本の文化への関心の高さ、その価値観へのリスペクトを強く感じるとか。

「日本では、(外務省や経産省などが主導している)自画自賛のクールジャパンがありますが、ああいうのはヨーロッパの人たちは、ほとんど関心を示しません。あれは日本がアピールしたい日本でしょっていう感じで。一方で関心があるのは、われわれ日本人が見失ってしまったような、日本の深層なんです」

 では、具体的に、日本のどんなものが人気なのだろう? 武邑氏は人気順に、ユニクロ、MUJI(無印良品)、ソニー、トヨタの名前を挙げる。自動車王国のドイツで、なぜトヨタ? と思われるかもしれないが、彼の地では、タクシーの半分が『プリウス』ゆえ。ソニーは、ポツダム広場にあるソニーセンターや、ベルリン・フィルの映像配信サービス「デジタル・コンサートホール」を提供していることや、ツァイスを採用したデジカメがドイツ人の琴線に触れているよう。ドイツでは、ソニーのいちばん高いカメラから売れていくそうだ。

 とはいえ、トヨタやソニーが海外で人気なのは、よく知られたこと。武邑氏は、ユニクロやMUJIが支持されている背景に、禅やミニマリズムといった日本の文化の精神性があり、そこがヨーロッパの人々の心を鷲掴みにしていると分析する。

「MUJIには、なんとなく(禅やミニマリズムの)雰囲気を感じるかもしれませんが、ユニクロも禅とミニマリズムと捉えているようです。
 ユニクロには面白いエピソードがあって、5年前にユニクロが出来たときには、お客さんはまばらだったんです。実は、ユニクロって、ドイツ語で「共同便座」を意味する、イメージの悪い言葉なんです。だから、最初は難しいかな、と思ったんですが、やはり製品が良いと、その価値は、きちんと伝わる。いまでは、ドイツ人のライフウェアですよ。

 日本の文化へのリスペクトって、間や、数寄屋(茶室)など。そうした空間の認識、少し哲学的な世界に関心があり、日本人って哲学者のように見られているんです」

 わけが分からないやり取りや、理屈をこねくり回した応答を揶揄する際、禅問答というように、日本では、言葉で物事を説明することに美的な感覚をおかず、極端な場合は、言挙げを嫌い、わかる奴にはわかる、と言語化を避ける傾向がある。単に言語化に失敗しているだけかもしれないが、積極的に語らないことが、かえって文化の奥深さのように映るのかもしれない。

 武邑氏の著書『ベルリン・都市・未来』に、ソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』を引き合いにしたこんな一文がある。

<この映画の本質は「言語」や「翻訳」の喪失ではなく、かつてコッポラ監督自らが体験した、「自分を見失ってしまう不思議な体験」に基づいているようだ。日本でこの映画を最初に観た時に感じたのは、日本という同質性の強い国でのスカーレットの孤独や疎外感の増幅だった。しかしベルリンでまさに外国人として暮らし、….スカーレットの孤独の捉え方が大きく変わった。彼女は言葉が通じない、文化も異なる日本で、やがて疎外を楽しみ、孤独に癒やされ、愉楽に浸っていたのでは? と>(同書、P.158)

 日本は驚嘆するようなプロダクトを作るポテンシャルを持ち、物質的な世界ではヨーロッパを凌駕しながらも、言葉は通じず、文化的障壁があるゆえに、疎外を楽しみ、孤独に癒やされ、愉楽に浸ることができる、ある種の楽園のように映るのだろうか。今後の武邑氏の著作には、なぜユニクロにまで禅やミニマリズムを感じるのかについての考察も期待したい。

 また、データ保護やプライバシーの分野における欧米との文化の違いを、禅やミニマリズムなど日本人の精神性を使って説明すれば、日本で馴染みがあるスタイルが海外で支持されるかもしれない。わかる人にはわかると相手に理解を求めるのではなく、わからない人に説明して伝える努力をする--こんな役割への道案内を武邑氏は意識しているのかもしれない。

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