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「建英のドリブルはピアニストのフォームのようでしょ」パーソナルコーチ中西哲生氏が明かす〝レアル久保建英〟誕生秘話

2019.08.15

サッカー選手にプライベートレッスンをするパーソナルコーチ。こんな存在がないころから、それを行なってきた中西哲生氏。実はレアル・マドリードに新加入し、注目を浴びている日本代表MF・久保建英選手もその教え子の一人で、彼を小学生のころから指導してきた。久保建英は他の選手と何が違うのか、その舞台裏を中西氏が明かす。

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パーソナルコーチとして、何をしていたのか?

 中西哲生氏は、サッカー解説者やスポーツジャーナリストとして活動する傍らで、長友佑都、永里優季、久保建英らのパーソナルコーチを務めるほか、母校で後輩たちにもサッカーを教えている。今回の取材では、レアル・マドリードに新加入した日本代表MF・久保建英選手(18)とのエピソードを披露してくれた。

「(久保)建英が小学生の頃からパーソナルコーチをしているんです。その当時、サッカー選手のパーソナルトレーニングをしているトレーナーって、僕しかいなかったと思います」

 中西氏は、現地でプレーしている久保選手の映像を見ながら課題を抽出し、ドリブルのフォームを修正したり、トラップやシュートフォームについてコメントをするという方法でアドバイスをした。これに加えて、年2回帰国したタイミングで、中西氏とトレーニングを重ねる。

 中2の頃になると、「もう、弾切れになっちゃった。それくらい、建英はすごかった」。体力やフィジカル面は別として、それ以外は中2の時点で現在の久保選手に近い状態になりつつあった。

 そこで中西氏は、何をしたか?

サッカーを、サッカー以外から見る視点

 中西氏は、約9年間Jリーグでプレーをして、その後現在のような活動に入る。1969年生まれなので、今年50歳。すでにサッカー選手よりも現在の活動のほうが長くなった、と振り返る。活動の中で大切にしてきたことが、サッカーを知らない人に、サッカーをどう伝えるかである。言葉で説明をしても伝わらない、ならばわかりやすい言葉に言い換えたり、イメージを想起しやすいように譬えを用いることで、より伝わるように工夫をしてきた。

「テレビなどでは、サッカーを知らない人を意識して話をするようにしています。例えば、(サッカーのフォーメーションにおける)スリーバックとフォーバックの違い。端的にいうと、選手一人が守る場所がフォーバックだと17mで、スリーバックだと23mなんです。フォーバックの17mだと、左右約9mずつなので、走ればだいたい守れる範囲です。これがスリーバックの23mになると、25mプールのど真ん中に立って、端から端まで守ることになる。これって、キツいですよね。こんな風に説明すると、わかりやすいじゃないですか。なので、普段から、そういうことを意識しながら、物事を見るようにしています」

 ちなみに、そうした考え方は、現役のことからしていたのか?

「いや、引退してからですよ。より多面的に見られるようになった。現役のころは、サッカーを、サッカーからしか見ていなかった。もし、いまのように見られていたら日本代表にも選ばれていたかもしれません(笑)」

 このようにサッカーを多面的に見られるようになった中西氏は、それを現役のサッカー選手に伝え、より高い目標を到達することを目指す。つまり、弾切れになったと感じた中西氏は、サッカーとは別のところに、久保選手の成長のヒントを求めた。

「建英には、サッカーと全然違うことを教え始めたんです。具体的には、呼吸。呼吸って1日2万回以上すると言われています。ならば、良い呼吸をしたほうがいい。で、呼吸が良くなると姿勢が良くなる。姿勢が良くなるとフォームが良くなる。そしてフォームが良くなるとプレーが良くなる。より密度が濃いほうへ、勝手に人間がどう変わっていくかを考えて、それを詳しく教え始めたんです」

高い目標を目指すなら、裾野を広げ、広い視野で

 ここからサッカーを多面的に見る中西氏の真骨頂が発揮される。

「フォームって、いろいろなものにフォームがあるんです。例えばピアニスト。一流と普通のピアニストとでは音が違いますよね。なぜ違うかというと、フォームが違う。建英のドリブルを見てください。ピアノを弾いているように、指が開いていると思います。詳しい話は省きますが、中2の時点でテクニカルな部分でのプレーは整ったので、後は相手が来た時に、どう対応するか。フォームを崩されないようにしつつ、ゴールの端に向けてシュートができるかなど、相手がいることを前提とした段階に入ったんです。だから建英のドリブル時の手は、ピアニストのフォームのようですよ。ぜひ試合をみてください」

写真/ゲッティイメージズ

 呼吸がよくなると酸素量が増えるため、長時間のプレーに良い影響があるといったことはわかかっても、ピアニストのようなフォームにするのは、あまりに唐突ではないか。

 久保選手は、どう反応したのだろう?

「ある日、『ドリブルのフォームなんだけどさぁ、できれば指は開いて使ったほうが良いんだよね』って切り出したんです。すると『えっ、なんでですか?』と聞いてくるので、『実はピアニストがさぁ~』と話をすると、『(中西さん)また、そういう話ですか~』みたいな反応だったことを覚えています。これはよく話をするんですが、サッカーのプレーのために、ラグビーでこうやっているからだと、似た競技なので、近すぎるんですよ。なので、サッカーと音楽家のように、かけ離れたところから着想を膨らませる。そうすると、裾野が広がるので、より広い視野で、いろいろなことをサッカーのことに取り入れることができる。

 僕たちが目指しているのは、ワールドカップで優勝すること。普通の山を目指しているわけではないので、それくらい突き抜けている必要がある。もちろんデタラメはダメですよ。でも、あの選手がやっていたから、くらいでは、突き抜けることはできない、と思っています」

 これはビジネスおけるプロジェクトチームを率いる際や、自分のスキルセットを高める勉強などにも当てはまるはず。より高い目標を目指すならば、視野を広く、裾野を広く考えるアプローチは、非常に示唆に富んだ話だ。

 ただし、中西氏がいうようにデタラメではいけない。論理的、合理的、科学的であり、且つ、それがきちんと言語化されていること。ふわっとしたイメージや、解釈の幅が広く、定義が曖昧な言葉ではいけない。

怒らず、叱る。自分は常にフラットかを意識せよ

 読者の中には、ミレニアルズやジェネレーションZと呼ばれる若い世代や、自分の子どもとやり取りに頭を悩ませている方がいるかもしれない。中西氏は、母校の後輩と接するなかで、いまの大人に強く物申したいことがあるようだ。

「みんな怒るらしいんです。失敗に寛容でない。僕は大学生の教え子がいっぱいいるんですけれど、会社に就職した後に、『辞めたいんです』と相談に来ることも珍しくない。で、どうしたのと聞いてみると、怒られて萎えているんです。で、『お前ら、オレにさんざん怒られてたじゃん』というと、『でも哲生さんは、出来ないことは怒りませんよね。でも……』と話をさせてみると、若いコが出来ないことを怒っているようなんです。それが若いコを萎えさせているようなんです。

 だから、大人の方にも意識して欲しいのは、怒っているのか、叱っているのかを区別すること。怒っていると『なんで、できないんだ』と詰問調になってしまう。大事なことは、失敗が一時的なマイナスかもしれないけれど、それを通じて、大きく成長すること。失敗を、成功の要因にすることです。だとすれば、『今回は、こうなったけれど、原因はなぜだろう』と自分で考えさせて、自分で改善策を考えさせる。そして、もし足りないときには『こういう方法もあるかもね』と付け加えて、いくつかの中から選べるようにする。そこから能動性を引き出せるかが大事なんです。親御さんにも『ああしなさい、こうしなさい、になっていませんか?』と言うことがあります。それでは子どもは言うことを聞かない。『私の言うことを全然聞かないんです』って、それは当たり前。きちんと選択肢を示して、本人に能動的に選ばせるようにする必要がある。さらに付け加えるならば、一人の人間として、信頼してあげることが大事と思います」

 こうした話をする中西氏は、自分はフラットであったかを常に心がけているという。どんな相手にもフラットに接することが来ているかを自省してみると、自分の反省点が見つかったり、もっと工夫が出来たのではないか、とアイデアが沸いてくることがあるはず。中西氏の話には、ビジネスパースンにも役立つヒントがたくさんありそうだ。

●中西哲生
1969年生まれ。同志社大学卒業後、出身地の名古屋グランパスに入団。1997年からは川崎フロンターレに移籍し、1999年には主将としてJ2初優勝、J1初昇格へと導いた。2000年の引退後は、スポーツジャーナリストとして活動する傍ら、サッカー選手パーソナルコーチとしてレアル・マドリードの久保建英、中井卓大(ピピ)などを指導。2007年から2015年まで公益財団法人日本サッカー協会特任理事を務め、現在は日本サッカー協会参与。川崎フロンターレ特命大使、奈良クラブアカデミーテクニカルダイレクター。また出雲観光大使などサッカー以外の活動にも積極的に取り組んでいる。

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取材・文/編集部 撮影/干川 修

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