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プライバシーをいかにデザインするか?ガラパゴスデータ化する日本に必要な視点

2019.09.08

 80年代に電子メディアにおけるポストモダン美学を研究し、メディア・アート、ヴァーチャルリアリティなどのトレンドをいち早く日本に紹介して、インターネット草創期にも深く関わってきた武邑氏は、5年前から活動拠点をドイツのベルリンに移した。異国から見る日本の様子は、どう映っているのだろう。

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GDPRに学ぶ、データ保護やプライバシーの規制下で産業が発展する逆説

日本人も注目すべきヨーロッパのプライバシー観

 数か月に一度、ベルリンから来日し、「武邑塾」を2019年に再開した武邑光裕氏。その背景には、インターネットやデジタル技術によって本格的に社会が変容し、楽観的な話ばかりできない時代になったことがある。

「僕自身は、インターネットの創成期から関わり、デジタル世界の楽観的な人間のひとりでした。WWW(World Wide Web)が登場し、ベルリンの壁が崩壊し、昭和が終わり平成になって約30年が経ちますが、そろそろ再考や内省しなければいけないことが山積しています。ベルリンに移住し、EUを肌で感じることで、インターネットの現状、アメリカだけではなくて、約5億人の人々が暮らすEUでの経験から、楽観的な考え方が変わりました。

 GDPR(一般データ保護規制)などで、人々のプライバシーを守ろうとする動きは、その顕著な例のひとつです」

 なぜ、EUにおいて個人のプライバシー保護を強化する法規制が設けられたのか。冷戦後の米国のグローバリゼーションに対抗するなど、いくつかの理由が言われるが、武邑氏は、国勢調査のデータがナチス政権によるユダヤ人迫害政策に使われたことや、旧ソ連の情報機関KGBを手本としたとされる東ドイツのシュタージ(国家保安省)の記憶、さらにドイツだけでなく、ヨーロッパ各地の独裁政権が行なった監視社会への嫌悪などが、大きな理由ではないか、と分析する。そして、これまでプライバシーは物理的な世界の関心事だったが、これがインターネットやスマホの登場、SNSの普及で仮想的な世界にも及んだと、歴史的な文脈を重視する。

 こうしたEUの先進的な取り組みは、企業の活動を鈍らせるどころか、新しい産業を創出する活力源になり、EUの競争力を強固なものにしている。より個人の価値を尊重するサービスや商品などの便益を生み出せるからである。

現代に“徳治”を再構築しようとする中国

 アメリカでは個人のデータはGAFAなどの企業を中心に活用される。それに対し、国家が手を差し伸べて、企業から国民を守ろうとする中国。一方、EUのように個人がデータを管理する主体で、それは自然権のような主権であるとする考え方もある。なかでも中国は、国家がコントロールするディストピアのような解説をされることがあるが、そこは少しニュアンスが違うという。

「中国は、IoT、AI、ブロックチェーンなど、世界最先端のデータ活用の国になろうとしていますが、それが不思議とヨーロッパと連携可能になっています。実は中国はGDPR並みの厳しい規制を、企業に向けて課している。国が全部コントロールしているように思うかもしれませんが、そうではなくて、企業がコントロールしているものに規制をかけて、市民を守っているという考え方です。それによって、国に信頼をおかせ、利便性の高いサービスを享受させる構造になっている。つまり、市民に主権を与えない代わりに、市民を国家が守っているわけです。さらに従来からの社会規範だったプライバシーは、透明性や秘密の開示を重視する社会からみれば足かせでしかないという「脱プライバシー」の可能性を実践する先駆的な国だという考えも出てきています」

 宋代以降の中国は官僚の採用試験に科挙を全面採用し、その最終試験である殿試では、皇帝が直接に試験監督を行なった。とくに朱子学が主流になってくると、皇帝は普遍的な道徳の教えを身につけた聖人とされ、その聖人に選ばれるのが官僚というイデオロギーが確立していく。いま中国は世界中に孔子学院を設立し、儒教の教えを広めようとしているが、その根底にあるのが、統治者(現在では中国共産党)による徳治で、データ保護についても、徳のある国家が国民を守る、こんな論理構成になっているようだ。

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