
インド映画といえば、ボリウッド(インドの映画産業の街ムンバイの旧名「ボンベイ」と「ハリウッド」からくる造語)が代名詞になっている。日本では、1998年に話題になった『ムトゥ 踊るマハラジャ』の影響で、インド映画では踊るシーンが多く、長い(ちなみにこの映画は約3時間の長編だ)という印象を持つ方が多いかもしれない。
しかし実際はそのような映画ばかりではない。インド古典をアクション映画に昇華させた『バーフバリ』や、実話が基になったスポーツ関連の『ダンガル きっと、強くなる』、教育コメディ『きっと、うまくいく』、その他にロマンス、ラブコメディ、社会派等、ジャンルも様々だ。また、今回ご紹介する映画のように、約1時間半というよくある長さの作品もある。
最近、中国では『スター・ウォーズ』よりも人気が出たインド映画もあり、インド俳優も人気だ。また、ジュリア・ロバーツがインドを旅した『食べて、祈って、恋をして』は日本でも女性に評判が良いが、このようなインドを題材にした海外映画も少なくない。
インドで日常の娯楽といえば、映画がスポーツのクリケット観戦と並んで真っ先に上がる。Netflixは、インド独自の作品を増やしている。 そう、この国を語る際には映画は切り離せない。
インドで公開されていないインド映画が、日本にやってくる
今年日本で公開される数あるインド映画のラインナップから、ビジュアルにひかれてある映画のチラシを手に取った。それは、2018年のカンヌ国際映画祭でも注目されてGAN基金賞を受賞した「あなたの名前を呼べたなら」。日本では今年8月2日に公開される。外国人には分かりにくいインドの社会について愛を描くことで捉えようとしている、同時代を背景にした大人向けの映画だ。
チラシには、太く結んだ真っ黒な三つ編みを背中にすっと垂らしてうつむく女性と、物憂げな表情の男性のふたりの登場人物だけだ。気だるさと緊張感が同居する、フランス映画のような雰囲気のビジュアルだ。この映画をより楽しめるように、背景や見どころをご紹介しよう。
同作はインド最大の都市ムンバイを舞台にした、独身の建築会社の御曹司と家政婦をめぐる話
監督は、インドで生まれ育ち、米国の大学で学んだ後に大手映画企業で仕事に就き、脚本から監督まで様々な経験のある、ロヘナ・ゲラだ。生粋のインド人とアウトサイダーの両面を持ち合わせた彼女は、ふたりのストーリーを見事に紡いだ。この映画のストーリーはフランスとは全く関係ないが、彼女がフランス人の夫から協力を得て製作したためにインドとフランスの合作という位置付けだ。ヨーロッパでは既に公開されたが、インドでは現時点では公開未定、先駆けて日本で公開という珍しい映画でもある。