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「仕事を与えれば、人は育つ」というのは本当か?

2019.07.18

■連載/あるあるビジネス処方箋

 就職活動の今の時期、ぜひ、次のことを考えておきたい。エントリーしようとする会社に社員を育成する風土や文化、仕組みが本当にあるのかー。

 結論から言えば、取材者の私が「ある」と断言できる会社は、中小企業やベンチャー企業では相当に少ない。実感値では、50∼60社に1社あるか否か、だ。例えば、ここ数回、社員数が100人以下で、創業15年以上の会社を取り上げたが、私が観察している限りでは、大多数で育成が十分にできているとは到底思えない。

 むしろ、管理職、役員、社長は今なお「仕事を与えれば、人は勝手に育つ」と真剣に信じ込んでいるケースのほうが多い。あるいは、それに近い思いを秘めているように見える。この考えは、根本から誤りだと思う。新卒時に、こんなレベルの会社にエントリーするのは避けるべきだ。数年以内に後悔する。今回は、「仕事を与えれば、人は勝手に育つ」について考えたい。

1、低い仕事力

 大企業や中堅企業と「中小企業の中の中小企業」と言える「社員数が100人以下で、創業15年以上の会社」の30代前半までの社員の仕事力を比べたい。その場合の仕事力とは、次のものだ。「担当する仕事を終えた時点での質やスピード、精度など」「仕事への姿勢」「時間やルール、秩序を守る意識」「報告や連絡、相談を繰り返し、チームとして仕事をする姿勢」「上司や同僚らへの一定の配慮や敬意」「意思疎通力」など。さらに「業界、会社や部署の現状への深い理解と問題意識」「自社の製品、商品、サービスなどへの関心や理解、問題や課題への意識、愛着」などだ。

 こういうものを総称して仕事力と位置付けると、双方の間には少なくとも3∼5ランクは差がある、と見るのが妥当だと思う。金融やITになると、10∼15ランクの差になるのではないか。この大きな差は、歴代の経営陣の意識の差とも言えよう。社員の力では、どうすることもできない。

 小さな会社の経営陣は、人材育成を真剣に考えていなかった可能性が極めて高い。当面の資金繰りをなんとかするためにも、営業こそが重大事だったはずだ。ある意味で、仕方がないのだと思う。この人たちが言い放つ「仕事を与えれば、人は勝手に育つ」はそのような背景を封印する、つまり、自らの低い経営能力や意識を正当化する狙いもあるのだろう、と私は見ている。劣等感の裏返しとも言えよう。

2、良質のフィードバックがない

 仕事力の根幹を成すのが、意思疎通力である。この土台にあるのが、担当する仕事についての豊富な経験と見識、知識、情報だ。それを判断するのはあくまで周囲であり、本人ではない。小さな会社の人は、ひとりで仕事をする傾向が強い。従って、このあたりを勘違いし、自分を「そこそこできる」と信じ込む。買いかぶっているのだろう。ここに、伸び悩む一因がある。実は、「そこそこできる」どころか、同世代の大企業の社員よりも3∼5ランク低い人の方が多い。だからこそ、業績は伸び悩むのだ。

 大企業の場合は、チームとして仕事をする習慣があるために、上司への報告、連絡、相談の機会や数が増える。このプロセスで不愉快になったり、やる気をなくしたりする場合があるのかもしれない。だが、このやりとりの中でしか、会社員は成長できない。会社員は、あくまで組織人なのだ。例えば、上司から企画についての意見や指摘といったフィードバックを受け、何らかの形で考え、時間内で修正する。特に30代前半までは、この量がモノを言う。30代半ばになり、それが質に転化し始める。40∼50代で活躍する人の共通項は、20~30代に信じられないほどの数をこなしてきたことだ。優秀な人は、数から生まれる。

 会社員が仕事をマスターするのに通常、「量より質」はありえない。特に難易度の高い仕事はなおさら、まずは量であり、回数であり、経験だ。漠然と数をこなすのでは意味がない。一定水準以上の管理職や役員から、レベルの高いフィードバックを大量に受けることが重要だ。いわゆる、「良質のフィードバック」である。

「社員数が100人以下で、創業15年以上の会社」の特に30代前半までの社員の仕事力が著しく低いのは、このような訓練の場がほとんどないためだ。中には、限りなくゼロの会社もある。こんなことがまかり通るのは、個々の社員がひとりで仕事をする習慣が浸透し、それが文化や風土になっているからだ。こうなると、チームで仕事をする態勢を作るのは相当に難しい。経営陣は「仕事を与えれば、人は勝手に育つ」と真剣に考えている疑いがあるのだから、絶望的だ。

 新卒者はこんな会社に入り、「俺が変えてやる!」などと思わないようにしたい。30代になり、取り返しのつかない状況に陥るはずだ。このレベルの会社では、社員を育成する風土や文化、仕組みの99%は20∼30年後も変わらない。多くの管理職や役員は、変えようとはしていないはずだ。そもそも、9割以上の会社は15~20年以内に倒産や廃業、吸収合併される運命にある。

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