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デジタルガバメントの生みの親が語る「エストニアが世界最先端のデジタル国家になった理由」

2019.07.19

 ヨーロッパ大陸の北側でロシアに隣接し、バルト海を挟んで北欧のフィンランドにも近いエストニア共和国は、人口約130万人の小国ながら「e-Estonia」とも呼ばれ、世界最先端のデジタル国家として世界から注目を集めている。

 1990年代からデジタル化を推進し、銀行の振り込みから納税、処方せんまで日常生活に関わる様々な公共サービスがデジタル化され、24時間365日いつでもインターネットから利用できる。日本のマイナンバーカードにあたるIDカード(eID)を国民の98%が所有し、データを一度だけ登録すれば各窓口で共有できる「ワンストップサービス」を実現し、市民と行政の双方の効率化と利便性につなげている。

 日本でも2018年1月に「デジタル・ガバメント実行計画」が策定され、行政手続きを原則オンライン化する「デジタル手続法」が19年5月24日に参院本会議で可決、成立した。引っ越しに伴う様々な手続きをはじめ、健康保険との連動など、マイナンバーカードを活用したデジタル・ガバメントがこれから進むと見られている。

 ここでは、エストニアのデジタル・ガバメント立ち上げから関わってきたアルヴォ・オット氏と、デジタル・ガバメント領域における国内外の機関とのアライアンス等を手掛ける三菱UFJリサーチ&コンサルティング常務執行役員の南雲岳彦氏の対談より、エストニアのデジタル化への取り組みを紹介し、世界最先端のデジタル国家になれた理由がどこにあるのかを探ってみたい。

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初期段階のコンセプト設定が重要な基礎になった

 エストニアのデジタル・ガバメントは、ロシアという巨大国家が隣に存在するヨーロッパの小国がアイデンティティを確立し、ブランディングのために始まったとオット氏は語る。インターネット黎明期から導入を進めていた背景もあって反対意見は出ず、最初からどのような仕組みにするかを考えることに集中できたという。

オット:エストニアでは国の運営コストを下げ、利便性を高めることで市民生活をより良くしようと、行政のデジタル化に1993年から取り組んでいます。私はCIOとして立ち上げ当初から関わり、ICT関連企業や専門家、大学らを巻き込んで、プライバシーポリシーの検討からシステムの設計まで、基礎となる部分の構築を行ってきました。

南雲:いつでもどこでも行政機能を利用できるようにするには、運営するコストもパワーもかなり必要になります。セキュリティも重要になりますし、その点はどのように実現させたのでしょうか。

オット:まず行政サービスをデジタル化するためにどうするか見直して整理し、その上でシステムのアーキテクチャを設計しました。サーバーも中央集権型ではなく、省庁レベルで運用するため、データベースをつなぐ「X-Road」と呼ばれるデータ交換レイヤーを2001年に導入し、暗号化されたデータを相互利用できるようにしました。ブロックチェーン技術も早くから導入しています。高度なセキュリティを備えた信頼性の高いシステムにするため、失敗も重ねながら5年かけて仕組みを作り上げ、実施にあたっては現場とのコミュニケーションも重視しました。

南雲:日本ではマイナンバーカードの取得は任意であり、普及率は13%程度に留まっています。エストニアは市民の98%がIDカードを所有していますが、なぜそこまで普及できたのでしょうか。

オット:毎日の生活で利便性を感じてもらなければ普及しません。そこで銀行をオンライン化し、口座開設や振り込みがいつでもできて手数料も下げるといったインセンティブを設けました。政府が発行するIDを利用できるというので銀行側も協力し、普及の後押しになりました。

デジタル・デバイドの解消はインセンティブにあり

南雲:日本の小学校でプログラミング教育の授業が2020年度から始まりますが、エストニアでは「タイガー・リープ財団」を立ち上げ、かなり早い時期から教育現場にコンピュータとインターネット環境を導入し、デジタル・リテラシーの向上にも力を入れていますね。

オット:エストニアはもともと数学やコンピュータサイエンスに強い人材が多く、私自身もそうした背景を持っています。ですがそれとは別にICT教育を行う「タイガー・リープ計画」を1997年からスタートし、テクノロジーの理解と活用能力を高めるために新たに「プログラミング・タイガー」というプログラムを2012年から実施しています。他にもITスペシャリスト研修やスキルアップのためのトレーニングプログラムを用意しており、将来的にはテクノロジーに関する様々な知識が学べるよう計画しています。

南雲:それでもデジタルが苦手な人たちはいて、全てのデバイドを解消するのは難しいと思います。日本でもデジタル・デバイドの解消は大きな課題になっています。

オット:もちろんエストニアもデジタルが苦手な人たちはいて、周囲がサポートしたりトレーニングを提供するなどしていますが、行政サービスの利用に不可欠で便利だと思ってもらうことがデバイドの解消につながるのではないかと考えています。むしろこれからの課題としてはモバイルの対応があり、スマートフォンから利用できるサービスやアプリの開発、安全に使うための情報提供やトレーニングを計画しています。

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