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入社4年目社員の本音「砂漠の中から一粒のダイヤを探し当てるような仕事です」協和キリン・吉岡紗衣子さん

2019.07.04

まぐれ当たりを狙う

 実験は主に384個の穴が開いた縦9㎝、横13㎝ほどのプレートを使います。そのプレートの穴に機械で、マイクロリットル単位の極小量のタネを一つずつ仕込む。そこにターゲットにした病気のモデルとなる細胞や試薬を入れ、専門の機械で測定する。すると反応があり細胞が増え場合は光が強くなる。光が強くなったタネは使えるかもしれない。実験では広大な砂漠から、一粒のダイヤを探し当てるような、まぐれ当たりを狙うのです。

 扱っているのはガン細胞だったり、生物界ない人工的なものだったりするので、実験中は体内に入らないよう手袋やメガネ、マスクをして。実験が終わったものは圧力と熱で細胞等を殺します。

 一人の研究員が常に、複数の研究所からのオファーに取り組んでいます。それら一つ一つに膨大な数の物質を実験しますから、そのデータのファイルも膨大になる。ランダムスクリーニングは、新薬の最初のタネを見つける作業ですから、データに間違いがあるとその後の新薬開発にとって大きなミスに繋がりかねない。入社3年目で業務に慣れた頃、私は解析データのファイルの順番を取り違えて登録するミスを犯してしまった。

 いい結果が出たタネは再現性を取るため、何度か実験を繰り返すのですが、1回目と2回目のデータがあまりにも違うので、おかしいと気付くことができました。

研究員の魂

 ショックでした。私はマジメな性格というか、ミスは許されないと自分に言い聞かせ研究に取り組んでいましたから、落ち込みましたね。周りに迷惑をかけていたかもしれないと。それからは解析したファイルの順番を、他の研究員にもチェックしてもらうようにして。

 新薬の第一歩となるヒット化合物と認定するには、再現性が重要になります。時間や日数が変わっても、同じタネを入れたプレートは全部同じ結果にならないといけない。実験の精度を上げる検討をしていた時のことです。あるネタに対し細胞の数は増えたのですが、データの数値が何度繰り返しても安定しない。どうすれば数値が安定するのか。

「小さな差でも気になることがあったら、自分で調べたほうがいい」それは先輩の言葉で。そんな研究員の魂みたいなものに、私も共感していました。

 問題は温度か。実験機の中のタネを入れる箱の温度は、細胞が育ちやすい37℃。温まるのは隅からで、その微妙な差が数値を乱しているのか。箱の下に銅板を敷き、温度を均一にする方法を試みましたが、数値は安定しない。温度を変えたり、プレートにタネを仕込む機械を変えたり、プレートに入れるタネの量を変えたり。

 そうこうしているうちに、作業で生じる時間差に気がついたんです。つまり最初のプレートを機械に入れデータを取り、次のプレートを機械に入れる時間差が、30秒の時と数分と時とでは数値が違う。時間を置くことでプレートの中の反応が安定し、同時に実験の数値も安定する。1回実験を行って次のプレートを機械に入れるまで、5分ぐらい置く。するとそのタネの実験数値が安定しました。この現象は私が気づいたことです。

 日々、このように実験に打ち込むが、まぐれ当たりで新規のヒット化合物を発見する確率は0.1%以下、さらにその中からリード化合物といって、新薬候補化合物になるのは5%以下と言われている。

 後編で吉岡さんは、そんな仕事の醍醐味を語る。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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