人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

年間1500種類のビールを試作!キリンの〝打ち出の小槌〟「パイロットプラント」に潜入

2019.07.08

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

1週間で40種類もの試作ビールが生まれるパイロットプラント

 キリンビール横浜工場には、新商品開発の試作を行う「パイロットプラント」がある。1984年から試験醸造をスタートし、ナショナルブランド、クラフトビールを含めてすべての新商品、リニューアル商品はパイロットプラントで試作をして世の中に送り出していく。プレス向けに特別に公開されたパイロットプラントを見学するため、キリンビール横浜工場を訪れた。

 キリンビールで30年以上ビールの開発、醸造に携わっているのがマスターブリュワーの田山智広さん。マスターブリュワーとは、キリンのビール類、RTDなどの中味の総責任者で、今年リニューアルした「一番搾り」「本麒麟」も田山さんが監修した。2015年にオープンしたクラフトビールの店舗「SPRING VALLEY BREWERY」では立案から携わり、現在もマスターブリュワーとしてビールの企画、開発を監修している。

 キリンのビールづくりに携わる技術者たちは、「生命への畏敬の気持ちを忘れない」「ビールづくりは“Making”ではなく“Brewing”」「五感を重んじる」という3つの “醸造フィロソフィー”を大切にしているという。

「バイオテクノロジーが発達した今でも酵母の活動は謎が多く、ビールは自然が生み出すものづくりであり、生命への畏敬の気持ちを忘れないということが大切。おいしいビールをつくるために原理原則を解明して、でき得る範囲でコントロールしていくが、すべてがわかるわけではく、酵母に操られている我々はわかったふりをしてはいけないということだと思う。パイロットプラントは醸造規模が小さいので、まさに五感を駆使して向き合わないといけない現場といえる」(田山さん)

 パイロットプラントは大小の2プラントがあり、今回見学したのは大きなサイズのプラント。本工場の釜麦汁濾過槽は直径12mで1回仕込むと約120kL醸造できる巨大なものだが、パイロットプラントは60分の1のスケールで醸造量は2kL。小プラントさらに10分の1のサイズで200L。

 大きいプラントでは1日4種類、小さいプラントは6種類、合計すると1日10種類、1週間で40種類の試験ビールを作っている。分析、官能評価を行った後、大部分は廃棄処理されてしまうが、すべての新商品を試作して、完成度を高めてレシピを決め工場に持っていく重要な役割を担っている。一般消費者の口に入る唯一の機会は、試作のためのブラインドテストで、その際には100人、200人単位で提供する。

稼働は月~木曜日、金曜日は釜やタンクを洗ったり、設備のメンテナンスを行う。「洗浄はとても大切な作業で、ビールづくりの9割は掃除と言ってもいいかも(笑)」(田山さん)

 プラントに入ると、麦芽を粉砕するゴゴーという音が響いている。取材日は金曜でプラントでの製造は休みだったが、月曜日の朝の仕込みの原料となる麦芽を粉砕しているとのこと。配管を通ってお湯と粉砕した麦芽が釜に入りそこからビールづくりがスタートする。仕込み釜のほか、高圧をかける圧力釜も。ラガービールは副原料に米を使ってきたが、以前の米は糊化し難いものが多く、圧力をかけてでん粉化する方法を取っていた。のどごしの良さを出す「ブラウニング製法」も圧力釜がないとできないもの。圧力釜の熱反応によりコク、色といった香ばしさを作り出す。

 糖化した麦汁を濾過してから、煮沸の工程でホップを入れる。ホップはビールの魂と言われているが、どのようなホップをどのタイミングでどのように入れるかで大きな違いが出てくる。発酵の条件を左右する酵母も何を使うかで大きく変わる。常に新しいビールを開発するパイロットプラントではすべてが違うレシピであり、原料、糖化パターン、発酵などプロセスもすべて異なる。

 発酵タンクは2kLが18機あり、1週間ほど発酵させるが、その間にあらゆる情報を、五感を駆使して肌で感じながら確かめる。発酵中の状態を見させてもらった。壁面に茶色くついているのがポリフェノールとたんぱくが結合したもの、あるいはホップの樹脂成分が固まったものだ。発酵が終わるにつれ下からの炭酸ガスの勢いが弱くなり、白い泡が治まって茶色になってくる。

「一般の方が体験できるビールづくり体験教室(下記画像)では鍋を使ってビールをつくる。開発用だったらここまで規模を大きくしなくても、鍋でもできるのではないかと思われるかもしれない。しかし、パイロットプラントで大切なのは本工場でつくれるレシピをつくるということ。同じレシピでもサイズが大きくなると同じビールはつくれない。高さが10mのタンクだと下の方は1気圧かかるので、そこで条件が全く違ってしまう。タンクの中の対流の動きも全く違ってくる。サイズの概念は重要で、そのためにパイロットプラントで試作を行っている」(田山さん)

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2019年9月14日(土) 発売

DIME最新号の特別付録は「デジタルスプーンスケール」!さらに激変するスマホの大特集に最新iPhone情報も!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 10401024号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。