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2019.06.27

堂々と世界と対峙した久保、三好、板倉ら東京五輪世代、コパアメリカ経験をどう生かす?

Koji Watanabe / Getty Images Sport

 時計の針は93分を回っていた。スコアは1-1。2019年コパアメリカ(ブラジル)8強を狙う日本とエクアドルは、わずかなロスタイムの間にもう1点を奪えなければ、その時点で敗退を余儀なくされる……。

 崖っぷちに立たされた日本。終盤最大のチャンスを演出したのが中島翔哉(アルドゥハイル)と久保建英(FC東京)だった。背番号10中島は18歳のアタッカーからリターンパスを受け、GKと1対1に。決定的シュートを放ったが、惜しくも弾かれる。このこぼれ球を拾った久保が左足を一閃。日本はついに劇的勝利を引き寄せたかと思われた。
 しかし、ベネズエラ人主審はオフサイドと判断。VAR確認が行われている間、久保は両手を合わせて祈りを捧げたが、判定が覆ることはなかった。結局、スコアは動かず、タイムアップの笛。日本は自力で得られたはずのブラジルへの挑戦権をみすみす逃し、不完全燃焼のまま帰国する羽目になった……。

大きなインパクトを残した久保、重要なのはこの先

 ご存知の通り、今回のコパアメリカは日本代表にとって選手拘の束力がない大会で、Jリーグでプレーする東京五輪世代(U-22)と海外組で招集できた島永嗣(ストラスブール)や岡崎慎司(レスター)、柴崎岳(ヘタフェ)らオーバーエージの選手を融合させた陣容で挑んだ。「日本はコパアメリカを軽視している」「南米大陸以外の国を参加させるべきではない」といった批判の矢面に立たされる中、森保一監督率いる若きジャパンは17日の初戦・チリ戦(サンパウロ)で0-4の大敗。いきなり暗雲が漂った。

 けれども、続く20日のウルグアイ戦(ポルトアレグレ)では2-2のドロー。内容面も大幅に改善し、森保監督も選手たちも大きな手ごたえを得た。日本はこのウルグアイ戦までで南米大陸で南米勢と過去24試合を戦って6分18敗。99年コパアメリカ(パラグアイ)以降の公式大会を見ても、3分8敗と一度も勝てていない。エクアドル相手に初勝利を挙げ、鬼門・南米攻略の布石を打ちたかったが、前述の通り、またも白星はつかめずじまい。そういう意味で悔しさが大いに残った。

 ただ、2018年ロシアワールドカップ以来1年ぶりの代表参戦となった島と岡崎が地力示し、キャプテン・柴崎がリーダーシップを発揮。三好康児(横浜)がウルグアイから2ゴールを奪うなどインパクトを残すなど前向きな材料もあった。特に1年後の東京五輪を目指す若手が躍動したことは特筆に値する。
 とりわけ、強烈な印象を残したのが久保だった。大会開幕直前にレアル・マドリード移籍が発表され、「自分に注目が集まっているのだとしたら。いいニュースを届けられればそれが2倍にも3倍にもなる。逆に躓いたとしても大きく取り上げられると思うんで、自分に残された選択肢はいいふうに取り上げてもらうことしかない」と本人もスターダムにのし上がる覚悟を持って挑んでいた。

 A代表初先発となったチリ戦ではアルトゥール・ビダル(バルセロナ)や屈強な相手と対峙しても決して当たり負けせず、高度な技術と戦術眼でかわしていく。最たるシーンが後半20分の2人抜きからの決定的シュート。「たまにリミッターが外れるというか、何も考えずにスルスルっと抜ける時があるんで。言い訳するとボールがちょっと緩くて、ズレちゃって。自分がファーに打てばよかった話なんですけど、あれは今でも悔しいですし、あそこで決めてたらこっちの時間帯にググっと引き寄せられたんで、そこは後悔してます」と久保自身は冷静な自己分析をしてみせた。自らのプレーをつねに俯瞰し、それを言葉で説明できるのが彼の強み。冷静さと老獪さはやはり普通の18歳とはかけ離れている。それを実証したチリ戦だった。
 途中出場のウルグアイ戦はそこまで見せ場がなかったものの、先発復帰したエクアドル戦では高度な技術でボールを収め、多彩なパスを配球し、時にはドリブルで局面を攻略するといったバリエーションの豊富な攻撃を披露する。前半15分の中島翔哉の先制点も、久保から中島へのタテパスが起点になっていた。過密日程や疲労の影響から消える時間帯もゼロではなかったが、ラストの幻のゴールを含め、インパクトの大きな仕事をいくつか示したのは確か。「自分が持ってるものを出せなかったら絶望しちゃうと思うけど、そんなのは全然なかった」と彼自身も大きな自信をつかんだA代表初の大舞台となった。

 ただ、重要なのはこの先だ。レアル移籍が決まっている久保は次のシーズンはスペイン3部のカスティージャへのレンタルが決まっている。そこからレアルのトップチームに昇格できるか否か。それが今後の代表キャリアにも大きく影響するのは間違いない。森保監督も「ビッグクラブでプレーしてポジションを奪えれば世界的なこと」と大きな期待を寄せていた。それを果たせば、久保とともに日本代表もワンランク上の領域に辿り着く。そういう時が早く訪れるように、スペインでの飛躍を待ちたいものだ。

三好の活躍で熾烈を極める代表の右サイド争い

 18歳・久保に触発されたのか、4歳の年長の三好も2ゴールという結果で強烈アピールを見せた。「自分の課題は決めるべきところをどう決めるか」とJリーグでプレーしている時にもしばしば語っている彼が、ディエゴ・ゴディンとホセ・ヒメネスというアトレチコCB陣が守るウルグアイ守備陣をこじ開け、2本のシュートを沈めたことは、本人にとっても重要な一歩だったに違いない。
「相手も見えてましたし、1対1の状況だったんで、余裕を持って行けました。チリ戦に途中から出た分、気持ち的にも落ち着いてできたのかな。こういう舞台で得点を採れるのは自身になること。ただ、これを続けないと意味がない。この先、自信を確信に変えるのは自分次第。それが大事だと思ってます」
 三好はこう話していたが、エクアドル戦での連発はならなかった。どんな相手に対してもつねにゴールに迫り、相手を脅威に陥れ、フィニッシュの部分でも決め手を持った選手にならなければ、大激戦の代表2列目争いを制することはできない。彼が入った右サイドには1つ年下の堂安律(フローニンゲン)や今冬のベルギー移籍でブレイクしたスピードスター・伊東純也(ゲンク)もいるだけに、国際経験でやや劣る三好はJリーグで結果を残していくしかない。2015年に崎フロンターレのトップ昇格を果たして以来、キャリアハイの得点は崎時代の2016年の4ゴール。コンサドーレ札幌にレンタル移籍した昨季も得点自体は3と多くない。その壁を超えることが今後の最大のテーマだ。

球際の強さやボール奪取力、展開力を示した板倉

 三好と小学生の時から崎のアカデミーで過ごしてきた同期の板倉滉(フローニンゲン)も試合をこなすごとに評価を上げた。1月にマンチェスター・シティに完全移籍し、そこからフローニンゲンにレンタルされるというビッグニュースをもたらした彼は今季オランダではリーグ戦出場ゼロ。試合勘が不足している理由もあってチリ戦は同い年の中山雄太(ズウォレ)にボランチのスタメンを譲る形となった。
 しかし、その中山のパフォーマンスが不安定で、森保監督はウルグアイ戦から板倉を抜擢。彼もまた入りは微妙だったが、試合が進むにつれて球際の強さやボール奪取力、展開力を示すようになる。コンビを組んだ柴崎との役割分担も明確で、板倉が守備陣の前に陣取ってディフェンス面を主にこなし、柴崎が攻撃の起点を作るといった関係性もよくなっていく。エクアドル戦はその連携にさらに磨きがかかり、中盤が大いに安定した。柴崎はA代表で遠藤航(シントトロイデン)とコンビを組むことが多いが、今後は板倉がそこに参戦するだろう。その大いなる可能性を示したコパアメリカだったと言っていい。
「岳君がすごい気を使ってポジションを取ってくれたのでやりやすかった。あれだけチーム全体のことを考えてポジションを取ってくれる選手がいると、落ち着きが出てくる。ホントに見習わないといけない」と板倉はロシアで輝きを放った先輩ボランチに敬意を評したが、自身もそうなれるポテンシャルは示せたのではないか。

 他にも3試合フル稼働した杉岡大暉(湘南)、決定機を次々と外しながらも得点に至る道筋が見えている上田綺世(法政大)、島の後継者になれそうな存在感を示した大迫敬介(広島)など興味深い選手はいた。そういう若手がここからどうなっていくかが大いに楽しみだ。日本代表のサバイバルがより一層激化し、誰が出るか分からないチームになっていけば、3年後の2022年カタールワールドカップでは悲願の8強入りを達成できるかもしれない。それを現実にするためにも、早期敗退を強いられたコパの教訓を生かして、力強く次に進むことが肝要だ。

取材・文/元川悦子

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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