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中小企業への入社に慎重にならざるを得ない2つの理由

2019.07.02

2:部下の育成ができない

 4社の社長や役員は、「(当社は)実力主義」と言っていた。うち2社は2年の経験しかない人たちを店長(当時、20代後半)に抜擢していた。しかも、双方とも前職が飲食業界だ。それでも、3〜5人の部下を与え、店の責任者をさせた。信じがたい光景に見えたが、事実なのだ。新任店長の2人を何度も観察したが、プライヤーとしてはともかく、部下への指導、育成には著しく大きな問題があった。

 例えば、大勢の客の前で叱り、怒り、威嚇するが、仕事を丁寧に繰り返し教えない。「育てよう」という意識が希薄なのだ。仕事の結果については何かを指摘もしくは批評をするが、自らがその模範を示すことはしない。そもそも、模範とは言い難いレベルの仕事しかできない。しょせん、数年の経験しかないのだから無理もないだろう。本当にその仕事を「理解した」「できる」とはいえない力しか持っていないのに、教えようとする。だから、部下たちはますますわからない。そこで店長の権力を振り回し、威嚇して、黙らせる。

 通常、大企業や中堅企業でこのレベルの人が店長になり、部下を統率するケースはまずない。噂でも聞かない。少なくとも、こんな抜擢人事は「実力主義」ではなく、「無責任な権限移譲」や「野放し」でしかない。この層の会社でパワハラが頻発する大きな理由は、ここにある。

 ところが、社長や役員、管理職の大半が20〜30代の頃にかつての上司から丁寧に教えられた経験が皆無に等しい。だから、部下たちに指導、育成ができない。結果として、仕事に満足感や楽しみを見いだせないから、次々と辞めていく。もともと、忍耐、集中力、協調性などに欠ける人が多いから、離職率はどんどんと上がる。部下の育成や指導の風土、文化がほとんどないのだ。こういう中で、新卒の社員はまず育たない。数年以内に辞めるのは当然であり、賢明な判断だと私は思う。

 今回を含め、4回にわたり、社員数100人以下で、創業15年以上の会社の問題点を指摘してきた。この層の会社は「中小企業の中の中小企業」であり、ある意味で象徴的な存在ともいえよう。本来、新卒採用をする力やノウハウはなかったはずなのだが、この5〜6年はそこに踏み込む会社が現れた。本来、新聞やテレビ、雑誌、ニュースサイトのメディアやそこで活躍する識者は疑いの目や警戒心を持つべきではないのか。

 ところが、大多数は触れようとすらしない。中には、あるビジネス雑誌やニュースサイトのように、このレベルの会社を明確な根拠を提示することなく、「実力主義」と称える場合すらある。これでは、会社や企業社会を見抜く力に乏しい学生たちに、間違った情報を提供している。それが、数年以内に失意の退職や明確な考えがない転職の繰り返し、さらには労使紛争につながる場合がある。メディアや識者は、事実は事実として伝えていくのが責任なのではないだろうか。

文/吉田典史

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