
ビジネスマンのみなさんは時として仕事がうまくいかず、謝罪しなければならないこともあるでしょう。そんな時、いま注目を集める芸人と同様の過ちを犯さないために、彼らが発表した謝罪文を振り返ってみましょう。
特殊詐欺グループの会合で余興を披露したとされる芸人たちが謹慎処分を受けました。〝闇営業〟というヘッドラインが流れ、会合への出席をけん引した芸人は、契約解除という特に重い処分を所属事務所から掛けられています。
このニュースが報じられ始めた頃、契約事務所に黙って仕事をしていたことが注目されていたと思います。ただし、その発注元が反社会的勢力であったために、関わった芸人たちが出演するテレビ番組のコマーシャルが差し替えられたり、放送自体がキャンセルになったりと影響が広がっていきました。結局、所属事務所から謹慎処分を課せられ、謝罪文が公開されたのは周知のとおりです。しかし、その謝罪文が反感を呼び、マイナスイメージを拡大させてしまいました。
自著の「謝罪の極意~頭を下げて売上を上げるビジネスメソッド~」でも書きましたが、謝罪の目的は頭を下げることではありません。相手の信頼を回復することです。そのためには「誰に」「何を」「なぜ謝るのか」を明確にして、誠意が伝わり、いつどうやって改善するのかを示さなければなりません。
まずは「何を謝罪すべきか」を整理する
今回の件で詫びるべき項目は以下の4点と考えます。
(1)反社会勢力からの仕事を受けた
(2)反社会勢力から仕事の報酬をもらった(その報酬が所得申告していなければ、それも)
(3)その報酬をもらったのに、もらっていないと偽った
(4)所属する事務所との契約を破り、黙って仕事を受けた(仕事をした)
今回の件で多くの人に反感を買ったのは(3)です。当初は「困っている後輩からの依頼で仕方なく受けたのだよね。でも、無償とはいえあのようなパーティーに出たらダメだよ」とか「かわいがった後輩芸人の依頼で受けてしまったのだろう。報酬は受け取ってないと言っているし」と思われがちでした。しかし「え?報酬もらっていたの? それ、単に仕事として受けていたってことだよね」と、多くの人は「裏切られた」と感じたのではないでしょうか。
初めに金銭は受け取っていないと偽ったことにより「反社会勢力だと知らなかった」という説明を理解しにくいものにしていますし、今後の信頼回復を難しいものにしています。
もしかすると本当にお金の流れを理解していなくて、本当に「知らなかった」のかもしれません。だとしたら、それも問題です。「確認できなかった入金」があるなら「収入の無申告があるのではないか」と、さらなる疑いが出てきます。このように、嘘を重ねてしまうと信頼回復どころか、疑惑が深まってしまうのです。最初に発覚した時点で素直に全てを話し、疑惑をゼロにすべきでした。
これは、ビジネスシーンの謝罪訪問で「できないこと」を約束して持ち帰ってしまい、後で泥沼にはまるパターンと同じです。間違えた対応をしてしまうと、対処に長い時間を要します。信頼は時間をかけて築くもの。その場しのぎで逃げてしまうと、信頼回復のスタート地点にすら立てません。
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