
アセット・アロケーション(=資産配分)という言葉は聞いたことがあっても、アセット・ロケーション(=資産の場所)となると初耳の人がほとんどだろう。「日本でもようやく様々な制度が整ってきたことで、アセット・ロケーションの考え方が必要になってきました」と語るのは岡本和久氏。世界最大級の外資系運用会社の運用部門の日本法人トップとして、長らく年金運用業務に携わったエキスパートである。
「従来、運用といえば資産配分だけが重視されてきました。しかし、NISAなど税制の優遇措置が受けられる制度が導入されたことで、資産を優遇が受けられる場所(=口座)にきちんと置くことが、資産配分に劣らず、重要になっています。最適の場所に置くだけで、運用成績は大きく変わります」
例えば、投資信託(ファンド)は値上がり益が課税対象となり20%分が徴収される。したがって、老後資金のために投資信託に投資するなら、まずDCが第1候補となり、DCの掛金の限度額を超える分はNISAを使う、といった具合だ。左のように資産配分と組み合わせた表を作ると、運用状況が整理できる。
年金ポートフォリオ
国民年金と厚生年金の積立金を管理・運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の実際のポートフォリオ。このように、金融資産ごとに資金の配分を決めることを「アセット・アロケーション」という。
アセット・ロケーションを考慮した資産配分のサンプル
アセット・ロケーションは金融資産に応じた最適の〝置き場所〟を考えること。「外国株式インデックス・ファンド」のような投資信託であれば、値上がり益が非課税となる、NISAかDCが置き場所の有力な選択肢となる。
投資教育家 岡本和久さん
大手証券会社でストラテジスト兼アナリストを務めた後、外資系投資顧問会社の日本法人を設立、社長として年金運用に従事。現在I-O ウェルス・アドバイザーズ代表。
取材・文/松岡賢治