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マイクロソフト、グーグル、アドビも!インドがグローバル企業のCEOを輩出し続ける理由

2019.06.14

混沌で身につける、サバイバルな術

 インドの混沌は現地に行かなくても想像できる人は多いだろう。しかし、現実は想像を大きく上回る。街には、ハサミやヘアケア類はもちろん鏡台や椅子もが揃えられた青空床屋がある。その脇にあるビルには、ヨーロッパの高級ヘアサロンの看板が見える。アラビア海を望む高級マンションには、その横にあるバラックの家に住む人がお手伝いさんとして通っている。両親に挟まれた子供2人の合計4人が乗るバイク、高級欧車、自転車がひく台車、タクシー、トラック、そして牛までもが同じ道を行き交う。歩行者は、信号のない混沌とした道をすり抜けて横断する。これらが全て、街中に混在している。ある時、タクシーに乗っていたらいきなり反対車線を走り出したのだが、その先で交通事故があったためだった。誰に交通整理されたでもなく運転手たちの暗黙のルールで臨機応変に判断し、もう1車線を2方向に車が通行していたのだ。

様々な乗り物や牛が往き交う、チェンナイの道路(My Five Acresより)

自転車も歩行者も車をぬって通り抜ける、ニューデリーの道路(筆者撮影)

 国家レベルでも混沌は突然やってくる。2016年秋、インド政府が翌日からの現行の高額紙幣(日本でいう5千円と1万円札)の廃止施行を何の前ぶれなく発表した。手元の現金を預金する人や、逆に現金を引き出す人々でATMには長蛇の列ができた。店舗では釣り銭がない、現金が底をついて日用品が買えない等、生活に大きな支障をきたした。庶民も企業も当初は大混乱。しかし大きな暴動が起きることもなく、記録に残らない現金でのやり取りや不正金のタンス預金のブラックマネー根絶の施策として、自然に国民に受け入れられた。

 あらゆるものが混在して予測不可能なインドの混沌を生き抜くスキルは、文化やルールが異なる他国のビジネス界でもその威力を発揮する。マスターカードのバンガCEOが一例をあげて説明している。「予測不能のインドでビジネス戦略を立てても、インフラや官僚、政治家によって壁にぶつかりうまくいかない。だから必ず本命、とはいえほぼ実現することが難しいA案の他に代替案B、CさらにDを準備しておく。それがインド国外で仕事をする際にとても役立っている」。


2014年、スタンフォード大学で講演するバンガ氏(Insights by Stanford Businessより)

 また欧米で勤務経験のあるインドの友人は「インドと比べて何事にも決められたルールがあり明文化されている国のしくみはシンプルで、簡単に理解できる。計画して努力すれば、一押しの企画案Aも実現可能だ」と話す。ビジネス環境がどんなに複雑で変化に富むものであっても、混沌で揉まれて身につけた知恵を持つインド人は、システムとルールが明確な社会で育った人以上にしなやかに仕事を進め、成果を出していく。

 それはかつて国全体がひとつとなり豊かさを求めてがむしゃらに頑張っていた戦後の日本にも似ている。そこには今の豊かな時代とは異なる学びの姿勢があった。混沌を生き抜く知恵は、私たち一人ひとりにも眠っているはずだ。世界で活躍するCEOをインドがなぜ輩出しているのかを知り、インド人と学びあい、協働していくことで新たな時代の成長のヒントが得られると信じている。

 次回からは広義での「スタートアップ」に関連するインドのストーリーを、実体験や取材を交えて紹介していきたい。企業にも個人にとってもインドと良いおつき合いをしていくための参考となれば嬉しい。

取材・文/望月奈津子
日欧米のグローバル企業でマーケティングや広報に一貫して携わる中、10年間勤めたP&Gのインド人上司の影響で、日印の共創をミッションとするムーンリンク社を設立。インドを30回訪問して築いた信頼やビジネスネットワークと現地家庭の訪問や滞在での洞察を活かし、リサーチ、視察、研修等で企業をサポートしている。

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