
飛行機に搭乗するまでの手続きに、「煩わしさ」を感じるシーンは多い。その一つが、異なる箇所で何度も搭乗券やパスポートを提示しなければいけないという点だ。
そうした煩わしさの解消に向け、オリンピックイヤーとなる2020年の春から、成田空港株式会社と日本電気株式会社(以下NEC)が、顔認証を搭乗手続きに活用するサービス「One ID」を開始する。
本記事では、2019年5月31日に開催された記者発表会・デモンストレーションの様子を交えながら、顔認証「One ID」で搭乗手続きがどのように変わるのか紹介する。
成田国際空港の抱える課題とOne ID導入までの経緯
成田国際空港常務取締役 濱田達也氏は、「航空需要は新興経済国を中心に拡大が見込まれ、訪日需要も高まっている。空港内の混雑回避が課題」と語り、One ID導入までの経緯を説明した。
旅客数が増加すれば、当然ながら空港は混雑する。現在の成田国際空港では、アジア圏からの就航の関係で15-19時の時間帯に混雑のピークを迎えるという。また、1日に空港を何往復もするLCCの参入により、空港もさらなる効率化が求められているようだ。
空港内が混雑すると「利用者の満足度低下」「定時運航率の低下」など、さまざまな課題が生じる。成田空港は、One IDを導入することで「人が立ち止まる箇所」を減らし、全体的な混雑緩和を目指す。高速道路のETCをイメージするとわかりやすいだろう。
One IDの導入により、旅客の滞在時間を有効活用してもらうのも狙いの一つだ。利用者も、列に並ぶ時間が減少することで、空港内でのショッピングや食事をより楽しめるようになる。
来春の段階ではまず、空港内の旅客数シェアの大きいANA・JALの搭乗手続きに導入予定だ。航空会社としても「定時運航率の向上」「人件費削減」など、メリットも多いだろう。
顔認証「One ID」が導入されると搭乗手続きはこう変わる
では実際に、One IDが導入されると搭乗手続きはどのように変わるのだろうか。ご存知の方も多いと思うが、まずは現在の搭乗手続きの流れを確認してみよう。
【現在の搭乗までの手順】
1.搭乗手続き チェックイン (★)
2.荷物を預ける ★
3.保安検査所を通過する ★
4.搭乗ゲートを通過する ★
eチケットやオンラインチェックインサービスを使えば「1.搭乗手続き チェックイン」の部分は省略することができるものの、その後の手続きでは本人確認や搭乗券の提示が必須だ。(★印)
その都度、「控え」やeチケットのスマホ画面を提示する必要があるため、荷物が多い時・両手がふさがっている時には、ストレスを感じる方もいるだろう。これが、顔認証「One ID」が導入されると以下のように変わる。
【「One ID」導入後の搭乗までの手順】
1.搭乗手続き チェックイン ★
パスポートと2次元バーコードでチェックイン。この時One IDを利用する場合は、顔写真が撮影される。
2.荷物を預ける ☆
3.保安検査所を通過する ☆
4.搭乗ゲートを通過する ☆
このように、搭乗手続き・チェックインの際にパスポート情報と自身の顔を登録しておけば、以後の手続き(☆)はすべて「顔パス」「ドキュメントフリー」で飛行機に搭乗できる。もちろん、顔の登録を行わずに従来通りの手順を選択することも可能だ。