
人工衛星から流れ星を降らせる壮大な計画
その神秘性から、数々の神話や伝承に登場する流れ星。毎日のように地球に降り注いでいるが、一瞬のことなので、今まで見たことがない人の方が多いかもしれない。
そんな流れ星を人工的に降らせるという、夢のあるプロジェクトを実行に移そうとしているのは、宇宙事業ベンチャーのALE(エール)だ。
そもそも流れ星とは、宇宙空間に漂う微小な物質(宇宙塵)が、地球の大気圏に突入したときに発光したもの。流星群であっても、十数分に1個といった頻度で、華やかさの点では今一つ。
対して、ALE社が人工的に降らせる流れ星は、数も多ければ、見えている時間も長く、地表では直径約200kmという広域で鑑賞できるというゴージャスなもの。流れ星に願い事を唱えるというメルヘンチックなこともできそうだ。
その方法は、宇宙空間を飛ぶ人工衛星から微小な「流星源」を放出するというもの。この流星源は地球に向かって落ちてゆき、上空60~80kmの中間圏と呼ばれる空間で発光する。言葉で説明すれば、意外とシンプルだ。
人工衛星から流星源を放出して人工流れ星になる様子を表したイメージ図(画像提供:ALE社)
プロジェクトはすでに進捗中
このプロジェクトは、「将来いつか」の夢物語ではない。実は、流星源を載せた人工衛星は既に宇宙空間を飛んでいる。安全審査を含め開発に7年かけたALE初号機は、2019年1月に、JAXAのイプシロンロケット4号機に搭載され、打ち上げられている。
これが実際に流れ星を放出するのは、2020年の春。広島県などの瀬戸内を臨む地域から鑑賞できるという。人工流れ星は中間圏で完全に燃え尽きるため、地面に落ちてくることはない。
人工流れ星が地上から見える推定エリア(画像提供:ALE社)
この時、放出される流星源は1回あたり約5~20個で、複数の流れ星がきらめきながら落下するのを見ることができる。詳細は未定だが、これに合わせてイベントの開催を予定しているという。
現在、世界に存在する宇宙関連事業の企業は約千社。しかし、人工の流れ星を降らせるというエンタメ性の高い事業に携わっているのは、ALE社だけだという。この事業は、観光都市のPRや野外ライブの演出など、多くの潜在需要があると想定されている。
さらに、未知の部分が多い中間圏の基礎研究にも寄与することで、気候変動の課題や災害予測にも役立つのではないかとしている。