
■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は5G向けの周波数割り当てについて議論します。
ソフトバンクの評価点数が低かった理由は?
房野氏:5G向け周波数割り当ての認定書交付式が総務省でありました。あの割り当てについて、どう思われますか?
石野氏:ソフトバンクに対する評価点数は低かったですね。
石川氏:ソフトバンクが悪いみたいな印象ですが、ソフトバンクCTOの宮川さんに話を聞くと、相当考えて、開設計画を出したんだなという気がしています。5Gよりも既存の周波数帯を使っていく考えのようです。ソフトバンクはMassive MIMOとかを入れていて、5Gレディのネットワークにもなっているし、28GHz帯とか3.7GHz帯とかの新しい周波数帯を使うより、今持っている周波数帯でがんばるという感じもある。あとPHSもそのうち停波するので、その1.9GHz帯を使って何かするとか、3Gも停波したら2GHz帯が空くので、そこを使って5Gを飛ばすとか、たぶんそこまで含んだ計画だと思いました。
房野氏:「ソフトバンクは負けた」などと書かれていましたが……
石川氏:負けてないと思う。
石野氏:まぁ、そんなに。Sub-6GHz帯が1枠少ないだけですよね。
石川氏:3.7GHz帯1枠だけ。
石野氏:あそこが1枠少ないからといって、急に通信がつながらなくなるとか容量が逼迫するとか、そんなことはないでしょうし、これから他の周波数の割り当ても始まっていくので問題はないかと思います。Sub-6GHz帯も低い周波数と言われていますけれど、LTEと比べるとだいぶ高い周波数なので、あれはあれでエリアを作るのは大変そうだなと。
法林氏:宮川さんが言っていたけれど、3.7GHz帯は衛星と干渉するので、実は結構面倒という話があって、まぁ善し悪しかなという言い方をしていた。
石川氏:「もう1波もらえればラッキー、棚ぼたでもらえればいいかな」程度でしか考えていなかったというようなことを言っていた。その点、ドコモがやる気ありすぎてどうなんだ、みたいな感じがした。今回、予算が7950億円で、エリアの展開率も97%と言っているので。
石野氏:あのエリアの展開率もね、あのメッシュの区切り方で90何%と言っていいんだと。
石川氏:でも、メッシュで90何%って相当大変だよ。
石野氏:相当基地局を置かないといけないですよね。
石川氏:よくやるなって気がした。
石野氏:まぁ、ドコモがやらなかったら、なんかね。
法林氏:だから「お前、やれよ」っていう総務省の意図があるんじゃないかな。
石川氏:それがあったから、たぶん、今回の新料金プランもそんなに安くないと思うんですよ(笑)
法林氏:ここでお金がかかると(笑)
石川氏:かかる。だって約8000億円かかるのに、4000億円のユーザー還元もする。やっていけないじゃないですか。そりゃ、吉澤社長の表情も曇りますよ。
石野氏:そうですよね、タイミングが悪いですよね。料金プランを変えるなら5Gのときに変えれば分かりやすかったのに、総務省のせいもあって今変えなきゃいけなくなった。
石川氏:菅さん(菅官房長官)のせいだよ。
房野氏:楽天モバイルはどうですか?
石野氏:楽天もソフトバンクと同じだけ周波数をもらっていて、もらいすぎだろって気もする。
石川氏:楽天こそたくさんもらわないといけない。だってプラチナバンドも2GHz帯もなければ、1.5GHz帯もない。
法林氏:周波数があっても基地局を建てる土地がないから。
石野氏:周波数をいっぱいもらってもなぁって。
法林氏:衝撃の画像を見せてあげよう。
房野氏:「世田谷区のみなさまへ 20ポイントプレゼント」。これは何ですか?
法林氏:楽天からはがきで送られてきたんですよ。3月の頭くらいにきていた。ここからサイトに行くと「あなたの家は一軒家ですか? アパートですか?」と聞かれる。
房野氏:基地局の設置場所ですか?
法林氏:そう。この質問って、完全に基地局を建てる場所探し。それを3月に来たDMで聞いているんだよ。いかに土地がないかってこと。
房野氏:基地局って個人宅にも建てられるんですか?
石川氏:建てられない。
房野氏:そうすると、たくさん割り当てられた周波数はどうするんですか?
法林氏:ゆっくり進めていいってことになっている。
石川氏:5年以内ですからね。