
「グルコサミン」サプリ摂取で心血管疾患リスク減?
関節痛の症状軽減を期待して「グルコサミン」のサプリメントを使用する人は多い。
米テュレーン大学肥満研究センターのLu Qi氏らの研究で、グルコサミンのサプリメントを習慣的に摂取すると、心血管疾患(CVD)の発症リスクの低減にもつながる可能性があることが示された。
46万人を超える英国人を対象に分析した結果、グルコサミンのサプリメントを習慣的に摂取する人では、摂取しなかった人に比べて全てのCVDリスクが15%低いことが分かったという。
研究の詳細は「BMJ」5月14日オンライン版に発表された。
この研究は、英国の大規模なコホート研究である英国バイオバンク(UK Biobank)に参加し、ベースライン時(2006~2010年)にCVDの既往がない男女46万6,039人を対象としたもの。
参加者にはサプリメントの摂取に関する質問票に回答してもらい、前向きに2016年まで追跡し、グルコサミン摂取とCVDリスクとの関連を調べた。
調査の結果、参加者の5人に1人がグルコサミンのサプリメントを習慣的に使用していた。中央値で7年間追跡した結果、グルコサミンのサプリメントを摂取した人では、摂取しなかった人に比べて全てのCVDリスクが15%低かった。
また、グルコサミンのサプリメントを摂取するとCVD死亡リスクは22%低かったほか、冠動脈疾患リスクは18%、脳卒中リスクは9%それぞれ低いことも分かった。
なお、参加者には食事の摂取量や薬物使用、飲酒や喫煙の習慣などの生活習慣に加えて、年齢や性、人種、世帯収入などについても尋ねた。
その結果、これらの要因を全て調整しても、グルコサミン摂取とCVDリスクとの間には関連が認められたという。
Qi氏は「これまでの基礎研究や臨床研究で、グルコサミンはCVDのリスク因子である炎症の抑制に働く可能性が示されており、今回の研究結果にはそれほど驚いてはいない」と述べている。
さらに、「グルコサミンを摂取すると糖質制限に似た効果が得られる可能性があり、これらがCVDリスクの低減に寄与したことも考えらえる」と同氏は付け加えている。
ただし、今回の研究は因果関係を証明するものではなく、「グルコサミンの摂取を推奨するには、さらに科学的な根拠を得る必要がある」とQi氏は強調している。
一方、この研究には関与していない米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)心臓病予防プログラムの共同ディレクターを務めるGregg Fonarow氏は、この結果について懐疑的な見方をしている。
同氏は「この研究は、サプリメント摂取群と非摂取群を比較した臨床試験ではなく、参加者の回答に基づく観察研究であるため信頼性に欠ける」と指摘する。
また、複数の栄養補助食品を対象とした観察研究では同じような結果が得られているのに対し、大規模なランダム化比較試験ではこのような結果は確認されていないという。
Fonarow氏は「現時点では心血管系へのベネフィットを目的としてグルコサミンのサプリメントを摂取する十分なエビデンスはない」と述べ、心血管イベントの予防には、禁煙や定期的な運動、健康的な血圧やコレステロール値、体重の維持を推奨する現行の指針を守るべきだと助言している。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/365/bmj.l1628
構成/編集部