2019年の注目! 新進気鋭のボカロP「左手」
ボーカロイドの登場から10年以上経った今もボーカロイドシーンを盛り上げるため尽力し、素敵な楽曲を制作する若手アーティストが数多く活躍しています。
今回はそのなかでも「左手」というボカロPに注目し、楽曲制作に向ける思いを取材しました。
福岡を拠点に活動中の20代ボカロプロデューサーでありシンガーソングライターの「左手」。2017年4月からボカロPになりました。それまではバンド活動のかたわら、趣味で作曲を行っていたといいます。
彼が楽曲に込める思いや、影響を受けたアーティスト、そしてボーカロイドの魅力とは一体どんなものなのか? うかがってみました。
「左手」がこれまで影響を受けたアーティストやサウンドは?
「平沢進、YMO、宇多田ヒカル、My Little Lover、J-HIP HOP、あとは、ほかのボカロPさんの作品などに刺激をもらっています。昔はロックバンドの楽曲ばかり聴いていたのですが、自分で曲を作るようになってポップスの奥深さに気付き、こういったアーティストの楽曲を聴くようになりました」
曲作りで意識していることは?
「最近は音数を入れすぎないように、減らしていく感じ。引き算で曲を作っていますね。
それと僕はずっとバンドでドラムを叩いてたのもあって、楽曲を作るときに、リズムそのものがコンセプトになりがちですね。テーマとなるリズムがあって、それに肉付けしていくような曲の作り方をしています。」
※普段はiPhoneの音楽制作ソフト「Garage Band」で制作を行なっている。
歌詞のポイントは?
「歌詞は響きとしての面白さと、メッセージ性のバランスをとって作りたいという気持ちが念頭にあります。メインがボーカロイドだから歌詞が聞き取りづらいこともあるのでそれでも楽しめるような歌詞と、曲作りを目指しています」
「左手」が考えるボーカロイドの魅力とは?
「僕がメインで使っているのは初音ミクです。初音ミクの魅力は、やはり『11年経っても第一線で活躍し続けられるポテンシャル』だと思います。ボーカロイドだけでなく、合成音声技術というカテゴリを、もうずーっとトップで引っ張り続けてくれてますから。それとやっぱり『手軽さ』です。僕みたいにスマートフォンだけでボカロPになる方も最近は増えてます。思い立ったら誰でもアーティストになれる時代なんです。」
2018年12月13日にリリースした、1stフルアルバム『左回転』
1.論理ノ眼球
2.造花のネオンサイン
3.ダイナソー
4.呼べば来る(左回転mix)
5.ゼツメツ少年(左回転mix)
6.アルカイック デスマーチ
7.おやすみの民
8.神様って。(Revision)
9.前線芸術
10.レイトハロウ
11.カワレナインカウンツ(左回転mix)
〜11曲入り約53分〜
※「左手」初のフルアルバムとなった本作は、BOOTH(https://booth.pm/ja/items/1062620)にて購入、もしくはApple musicやSpotify、LINE musicなどの音楽配信サービスでダウンロードが可能。
『左回転』で特におすすめの曲は何?
「アルバムのリード曲になっている『論理ノ眼球』という曲です。平沢進の音楽に魅了され、僕自身の音楽の方向性が180度変わった直後に作った曲で、『無機質な打ち込みサウンドに熱のあるメッセージを込める』という試みをしました。それを感じていただけると嬉しいです」
●論理ノ眼球 / 左手feat.初音ミク
https://youtu.be/ydocA-Gej3w
ちなみに今作品で筆者のお気に入りは7曲目の「おやすみの民」でした。
イントロから始まる浮遊感と心地良いベースラインにとろけるような声色……とても落ち着きます。冬にこれを聴けばぐっすり眠れそうです。
●1stフルアルバム『左回転』クロスフェード
https://youtu.be/LO1etBmEOVM
今回のアルバム以外におすすめの作品はありますか?
「最新曲(2019年5月現在)の『デミヒューマン・エチュード』です。この曲は僕の中でも1番の自信作になったもので、ぜひ聴いてほしいです」
●デミヒューマン・エチュード/左手 ft.初音ミク
https://youtu.be/J7SUH_0Ga6s
ボーカロイドを中心にフィーチャリングしている左手の1st.アルバム「左回転」は、その優しい声色とキャッチーな電子音楽のメロディラインが相まって老若男女問わず楽しめる作品であり、所々にちりばめられたトリッキーなアレンジと絶妙な歌詞の絡まりで耳が飽きることがないです。
あっという間に53分が経っていて、いつの間にか2周目に突入している、そんなワクワクする作品です。音楽への愛が育んだこの作品は、ボーカロイドが好きな方だけではなく音楽好きの方にもおすすめしたいです。