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多摩動物公園がゲンジボタルの繁殖研究を続ける理由

2019.05.26

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大好きな動物園、生き物たちはどのように飼われているのか。日々、動物に接する動物園の飼育員さんに、じっくりとお話を聞くこの連載。動物園の動物たちの逸話を教えてもらおうというわけである。

今年開園60周年を迎えた東京都日野市の多摩動物公園。上野動物園の約4倍という自然が残る敷地は文字通り自然公園である。木々に囲まれた中で極力、柵を排した展示で野生に近い動物の姿を目にすることができる。 

シリーズ12回は6月に淡い光を放ち夜空を飛ぶゲンジボタルだ。成虫の体調は15mm前後、メスのほうが体は大きい。同じホタルでもヘイケボタルより大型。体色は黒色、全胸部の左右がビンク色、中央に十字架型の黒い模様がある。淡い黄緑色に発光するのは尾部だ。

多摩動物公園のゲンジボタルの飼育は開園して間がない1962年からと歴史がある。しかし、未だに人工飼育の方法が確立されたとは言い難い。学生時代、昆虫の研究室にいた飼育員の渡辺良平さんは、昨年からゲンジボタルを担当する。09年からはじまった多摩地区で捕獲した固有の遺伝子を持つゲンジボタルの人工飼育では、前任者のやり方を踏襲しつつ、独自の方法を模索している。

一匹のゲンジボタルで数百個の卵

カワニナをエサにして、2〜3cmに成長した幼虫は、4月上旬から下旬にかけて上陸し、土の中に潜ってマユを作りサナギになります。6月には羽化した成虫のゲンジボタルが、夜空に淡い黄緑色の光を放って飛びまわるのです。

発光器は尾部にあり、ルシフェリンという発光物質に、ルシフェラーゼという酵素が反応して光る。オスは点滅しながらフワ〜と飛びます。関東のゲンジボタルは3、4秒以上、間隔をあけて光ります。メスは点滅せず小川のそばの草の上の付近でボワーと弱く光っている。それをオスが見つけて交尾すると、メスはすぐに小川に降りて川沿いのコケに卵を生みます。

人工飼育では、ホタル舎の室内施設の大きなケースの中にオスとメスを放して。湿らせたコケをケースの下に置くと、1匹のゲンジボタルが数百個の卵を産みます。卵のついたコケを回収して、1ヶ月ほどで1000匹を超える幼虫が孵り、水の中に入っていく。

幼虫は水槽に砂利をひき、水を張って飼います。ゲンジボタルの幼虫は砂利の中に潜み、上にいる餌のカワニナを、ズズッと砂利の中に引きずり込んで捕食する。水温は20℃に保ち餌のカワニナも潤沢にいます。それなのに幼虫の段階で3分の1ぐらいは死んでしまう。多くは溶けてしまったり、死んだのを別の幼虫が食べていることも考えられる。

水槽の中に作った陸地の工夫

幼虫がある程度成長したら、サナギになるための上陸用水槽に移します。この水槽にも工夫が詰まっていて。幼虫は陸地に上がる力は強いですが、サナギになるためにもぐる土の条件は厳しい。水槽の中には細かい赤玉土に水を吸わせ、湿度を90〜100%に近い状態にした陸地を用意します。水に浸る土はドロドロで、少し上ったところに空気の層がある。この空気の層を幼虫は気にするようなんです。

幼虫は土の深さ5〜10㎝のところにもぐります。サナギになった時に体が乾くのを防ぐ。そして酸欠にならないためにちょうど良い深さなのでしょう。

室内の水槽はスペースが限られているので、昨年は育った600匹ほどの幼虫の中から、体長が大きく、腹部がしっかり成長した幼虫を60匹選びました。それを水槽の中で上陸させて、残りの500匹以上の幼虫は野外のホタル舎の水路に放したんです。放した幼虫のうち100匹ぐらい上陸し、その半分以上が6月に羽化して成虫となり光りました。

でも、全部成虫にさせようと試みた水槽のゲンジボタルの幼虫は、上陸する時に一部が死んだり。サナギになった幼虫の中にも羽化せず死んでしまうものもいて。結局、成虫になったのは60匹のうち20匹ほどでした。

どうして思うように、成虫になってくれないのか。多くの昆虫は幼虫を人工で飼育をすると、少なくとも半分は羽化できる。別の飼育員が担当しているヘイケボタルは、70〜80%は羽化をしています。ヘイケボタルの生息地は池等で、水中の酸素もあまり必要としない。カワニナ以外の貝も食べるし、ゲンジボタルと比べて、ヘイケボタルは頑丈な昆虫です。

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