乗車時間の長さをサービス向上でカバー
編成全体を見まわすと10両編成のうちすでに8号車にグランクラス、9号車にグリーン車のマークがついている。今回は車内の公開はなかったので中はわからないが、グランクラスの8号車を見るとなにやら中央部は窓の間隔が広い。これについて尋ねると「なにかしらのスペースを作ることで新たなサービスに活用できないか検討できるようにしています」とのこと。
最近、グランクラスサービスが軽食の和洋メニュー統一などのリニューアルがされた。現在でも東京~新函館北斗間では純粋な乗車時間は飛行機よりどうしても長時間となる新幹線。札幌までとなるとますますその差は開くが、そこで長時間乗車を楽しめる「なにか」があれば新幹線を選ぶ動機にもなる。正直、空席の目立つグランクラスだが、「ALFA-X」でぜひ次の新幹線のファーストクラスの形を探ってもらいたい。
現在のE5系グランクラスは先頭車になる10号車にあるが、「ALFA-X」の10号車はその長い「鼻」の影響で3列分の窓しかない。逆に言えばとっておきのプライベート空間を演出できそうだが、これについても「活用方法を検討中」とのことだ。
約22メートルの鼻のおかげで10号車の客室窓はたった3つ。このスペースをどう使っていくのかも楽しみだ
もちろん、グランクラスのほかグリーン車や最も乗客の多い普通車におけるサービスもなにができるのか、新たなサービスの誕生が楽しみだ。都市中心にある駅からすぐに気軽に乗車できるというのは飛行機にはない新幹線の大きなメリット。一度、席に着いてからの自由度なども飛行機とは比べ物にならないくらい新幹線が優位だ。
一般的に飛行機の場合、前日までにチケットを購入しないと当日では割高なチケットを購入せざるを得ないが、新幹線では特にそれがない。さらにJR東日本が提供する「モバイルSuica」サービスを利用すれば、何度でも無手数料で変更が可能で、かつ、紙のきっぷより新幹線部分の料金は安い。一方で、飛行機のマイレージサービスのような多利用者への優先サービスはなく、このあたりが同じ都市間移動でもあえて、飛行機を選ぶビジネスユーザーの動機でもある。東海道、山陽新幹線で導入されている「エクスプレス予約」で実施されている一定量の乗車でグリーン車にアップグレードできるサービスなどを参考に、使いやすい形で提供するのも一考だろう。このように「ALFA-X」のようなハード面でのチャレンジだけでなく、周囲のサービスも組み合わせれば所要時間だけでは比較ができない、新幹線ならではの魅力を出せるだろう。
窓の大きさや配置を変えることで快適さを検証
さて、3号車、5号車、7号車の外観は少し特徴的だ。窓がそのほかの車両に比べて小さく、5号車にいたってはほぼない。このことについて質問すると「実は窓はないほうが車内環境というのはよくなるんです。騒音も窓から車内に伝わらなくなりますし、空調管理の面でもメリットがあります。ただ、さすがに窓なしっていうのはどうかと思うので、様々な検証を行いたくて3号車、7号車で窓の大きさも変えてこのようにしています。ちなみに5号車は試験車両ということでミーティング室がある関係で窓がない設計になっています」とのことだ。
確かに窓から入り込む日差しというのは時にまぶしかったり暑かったりとやっかいな存在だが、できれば窓はなるべく大きくし、開放感がある車両のほうがいい気もする。(ほかの要因だがE5系やE6系は従来の新幹線より若干小さくなっている)将来高速車両における窓がどのようになっていくのか、個人的に注目していきたい。
報道陣の取材に応えたJR東日本研究開発センター 小川 一路所長は「かねてから計画を進めてきましたが、実際に試験車両を目の前にして次世代新幹線の開発に身が引き締まる思い」と決意を新たにしている。なお、「ALFA-X」の走行は主に深夜時間帯に仙台~新青森の間で行われる。
時速360kmの営業運転、そして新たなサービスの誕生を「ALFA-X」に期待しよう。
取材・文/村上悠太
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