
会社=審査する側、就活生=審査される側。
この立場を利用して、横柄な態度を取る面接官もとい企業というのは、残念ながら少なからず存在する。その審査する側の傲慢は「就職差別」というかたちで顕在化し、就活生たちに精神的ストレスをあたえる場合さえもあるからタチが悪い。
そんな「就職差別」の実態がこのほど、日本労働組合総連合会による18歳~29歳の男女1,000名を対象にしたアンケート調査によって明らかになった。
「採用選考で会社独自の履歴書を提出するように求められた」大卒者等の58%
最近3年以内に就職のための採用試験(新卒採用試験、または中途採用試験)を受けた、全国の18歳~29歳の男女1,000名(全回答者)を対象に、採用試験について質問が行われた。
採用選考に当たっては、応募者の人権を尊重すること、応募者の適性や能力のみを基準として行うことが原則。適性や能力と関係がないことを採用基準とすると、就職差別につながるおそれがある。適性や能力のみを基準とした採用選考を行うために、応募用紙については、高等学校卒の採用試験の場合は《全国高等学校統一用紙》を使用するよう定められている。
最終学歴が高等学校の人(143名)を対象に、採用試験に際し、《全国高等学校統一用紙》ではない応募用紙を提出するように求められたことがあるか尋ねる調査が行われたところ、「ある」と回答した人の割合は32.2%となった。
また、大学卒や専門学校卒などの採用試験の場合は《JIS規格の様式例に基づいた履歴書》を使用することが推奨されており、事業主が独自に応募用紙やエントリーシートの項目・様式を設定する場合は、適性や能力に関係のない事項を含めないよう留意するべきとされている。
最終学歴が四年制大学・大学院・専門学校・短期大学の人(846名)を対象に、大学等から指定された履歴書または《JIS規格履歴書》ではない会社独自の履歴書を提出するように求められたことがあるか尋ねる調査が行われたところ、「ある」と回答した人の割合は58.0%となった。
「採用選考で戸籍謄(抄)本の提出を求められた」19%
次に、全回答者(1,000名)を対象に、採用試験に際し、戸籍謄(抄)本の提出を求められたことがあるか尋ねる調査が行われたところ、「ある」と回答した人の割合は19.4%となった。
また、採用決定前に健康診断書の提出を求められたことがあるか尋ねる調査が行われたところ、「ある」と回答した人の割合は48.6%という結果に。
職業安定法では、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集が原則として禁止されている。採用選考時に戸籍謄(抄)本の提出を求めることや、合理的な理由なく一律的に健康診断書の提出を求めることは認められていない。しかし、応募者に対して、これらの書類の提出を求めているケースがあるようだ。
「応募書類やエントリーシートで『本籍地や出生地』の記入を求められた」56%
続いて、全回答者(1,000名)を対象に、採用試験に際し、応募書類やエントリーシート(インターネットの応募画面での入力を含む)で記入を求められた内容について尋ねる調査が行われた。
記入を求められた人の割合をみると、「性別」(91.2%)は大多数の人が記入を求められた経験があることがわかった。また、「本籍地や出生地」(56.4%)は、全体の過半数が記入を求められたと回答していた。
そのほか、「家族構成」(35.9%)や「住居や資産状況」(21.8%)、「自宅付近の略図や居住環境」(19.9%)、「家族の職業・収入」(15.8%)、「尊敬する人物」(12.3%)についても、記入を求められているケースが少なくないようだ。
また、「労働組合や市民活動についての見解や加入経験」(7.2%)や「思想信条」(6.5%)、「支持政党」(4.0%)、「宗教」(3.6%)といった、当人の思想を推し量りうるような内容の記入を求められたという人も少なくない。
これらの内容は、いずれも応募者の適性や能力に関係がない個人情報だ。そのため、採用活動時に収集してはならない情報とされている。しかし、実際の採用試験では、こうした情報の収集が行われていることが明らかになった。
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