ビタミンD過剰摂取で急性腎不全、カナダの症例報告
日光を浴びると体内で合成されるビタミンDは、健康を保つのに必要不可欠な栄養素だ。
しかし、サプリメントによる過剰摂取には注意すべきことを示唆するカナダ人男性の症例報告が、「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」4月18日オンライン版に掲載された。
この男性は、極めて高用量のビタミンDサプリメントを摂取し、急性腎障害を来したという。
研究を実施したトロント総合病院およびトロント大学(カナダ)のBourne Auguste氏は「ビタミンDは治療域の範囲が広いため、毒性を生じることはまれだ。しかし、市販のサプリメントの多くに含まれているため、過剰摂取の危険性について知識がないと、相当なリスクがもたらされる可能性がある」として、サプリメントを摂取する際にはビタミンDの摂取量に気をつけるよう注意を促している。
報告によれば、この54歳の男性は、東南アジアを旅行して帰国した後に、かかりつけ医による診察を受けた。
なお、男性は現地で、2週間にわたり1日6~8時間も日光浴をして過ごしていたという。
検査の結果、血中クレアチニン値から急性腎障害が疑われ、腎臓専門医のもとに緊急で紹介された。
そこで、さらに詳しい検査を受けたところ、男性はビタミンD欠乏症でもなく、骨量減少の既往もなかったにもかかわらず、自然療法医から高用量のビタミンDを処方されていたことが判明した。
男性は、30カ月にわたって毎日、1日当たり計8,000~1万2,000IU相当量のビタミンDの液体サプリメントを服用し続けていたという。
ビタミンDの1日当たりの許容摂取量は400~1,000IUとされ、骨粗鬆症リスクの高い人や高齢者では、それを上回る摂取量(800~2,000IU)が推奨されている。
しかし、このカナダ人男性はこれらの基準をはるかに超えるビタミンDを摂取しており、これによりカルシウムの血中濃度が極端に上昇し、急性腎障害が引き起こされたと考えられたという。
そのため、同氏らは「患者も医師も、制限のないビタミンD摂取はリスクを伴うことを十分に理解する必要がある」と述べている。
この研究には関与していない、米レノックス・ヒル病院で腎臓病を専門とするMaria DeVita氏は、この症例報告を受けて、「多くのサプリメントに当てはまるように、ビタミンの過剰摂取が予想もしない有害事象につながることもある」と指摘し、「ビタミンDは丈夫な骨の発達と維持に欠かせないが、取りすぎはよくない」と付け加えている。
(参考情報)
Abstract/Full Text
http://www.cmaj.ca/content/191/14/E390
構成/編集部