交渉を成功に導くには常に仮説を立てて交渉に臨め!
――交渉にあたって大切なことは何でしょう?
かつて交渉本で日本でもベストセラーになった『GETTING TO YES』の著者の一人であるウィリアム・ユーリーは、「交渉役として最も大切なスキルをひとつだけ挙げなさいと言われたら、私は相手の身になって考える能力と答える」と述べています。
交渉において大切なことは相手を知ることです。相手の主張だけでなく、その背景にあるニーズ、世界観など、相手を理解するための情報収集は労を惜しまず行うべきです。交渉を進める上で相手を知ることは非常に重要な力になります。
また、交渉のテーブルにつく前にしっかり準備をすることです。例えば、価格交渉においては、自分自身はどのラインを目標点にするのか、最初の提示額はいくらにするのか、どのラインまで譲歩できるのか、譲歩する場合はどういう段階でおこなっていくのか、交渉決裂時にとるべき戦略はなどしっかり準備しておくことが大切です。相手の状況を予測し自分なりに仮説を立てて交渉に臨むべきです。仮説を立てて交渉に望んでいれば、結果を検証し、内省することで常にレベルアップすることができます。自身の読み違いを反省したり考え方を修正するなど次に生かすことができます。
営業パーソンは勿論のこと、PMや技術者、購買担当、スタッフ部門の方々も交渉学を学ぶべき
――営業パーソンが交渉学を学ぶメリットは何ですか?
顧客との関係構築における現状把握とあるべき姿を再考することができます。また、社内の他部署などの巻き込み強化に役立てることができます。営業パーソンは普段から交渉を実践しているため自分はできていると思いがちですが、交渉学のメソッドに照らし合わせてみると自分の中の課題を発見することができます。
――日本交渉協会で交渉アナリスト養成講座を学んでいる人はどんな人でしょうか?
ビジネスパーソンでいえば、営業職が最も多く全体の2割を占めます。そのほかは購買担当者、法務担当者、プロジェクトマネージャー、技術者、経理担当、総務担当など多岐に渡ります。
ビジネスパーソン以外では医師や看護師、弁護士、教師、公務員などになります。医師であれば治療を成功させるため患者との関係性をどう構築していくのか、弁護士であれば裁判で勝つことのみを目的にするのではなく裁判になる前によき和解をすることで依頼者やその周りに対してもよい効果を生む方策を考えられないかなど高い志を持った方が学ばれています。
――交渉アナリストの資格保有者の属性を教えてください。
交渉アナリスト学習者(1級、2級、補、3級)は3000人程いますが、1級取得者は300人弱になります。学習者の40%~50%が30~40代のビジネスパーソンです。男女比は7:3で男性が多いのですが、女性のほうが交渉上手の人が多いという印象があります。力関係で相手を動かそうとするのでなく対等な立場で話し合おうというスタンスをもった人が女性に多いという印象を持っています。
――ありがとうございました。
【Profile】
立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了。MBA。人材開発・組織開発コンサルティング業の株式会社ジェックにて営業経験を経て独立。2001年株式会社トランスエージェントを設立。NPO法人日本交渉協会常務理事。2006年に中国法人上海創志企業管理諮公司を設立。主な著書として、「心理戦に負けない極意(共著)」(PHP研究所)、「中国に入っては中国式交渉術に従え(共著)」(日刊工業新聞社)、監修に「交渉学ノススメ」(生産性出版)がある。
取材・文/稲垣有紀
こちらの記事も読まれています