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2019.03.27

生体肝移植はいらなくなるかもしれない!エピゲノム創薬が切り開く未来

本件は総合南東北病院の志村和政先生(当時)が主治医を務められた回復が全く望めない末期の肝臓疾患からの世界で唯一と考えられる回復症例を紹介し、エピゲノム創薬(新薬の開発)の新しい方向性を探ることを促す目的で寄稿したものである。この患者さんは退院から10年を経過した現在も健康に生活されている。唯一の症例であることが研究を難しくすることは予想されるが、この回復症例を持つ患者さんが健康な状態で日本におられること、この患者さんが研究開発に積極的に協力したいという考えをお持ちであることを最初にお伝えしたい。

ゲノムやエピゲノムに関する解説は免疫学の世界的権威である先生、人獣共通エピゲノムの研究をされておられる先生、コホート分析をされておられる先生、カナダのBritish Columbia University と アメリカのHarvard Universityの先生方をはじめ、多くの研究者の方々とのお話しと国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や理化学研究所などの公開資料や学術論文を参照し、できるだけ簡易にまとめたものである。ご教示いただいた先生方にこの場を借りて御礼申し上げたい。

エピゲノムとは

ひとの遺伝子情報は1953年にDNAの二重らせん構造が発見され、2003年に塩基配列(ヒトゲノム)が解読されたとされている。

ヒトゲノムとは人間を形づくる設計図であるDNA全体を示す言葉である。DNAがタンパク質に巻き付いたものを染色体と呼び、人間の場合、細胞の中心にある核の中に23対に分かれておさめられている。DNAはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)、の4種類の塩基、糖、リン酸から構成されている。ヒトゲノムの解析は世界各国が協力し進められてきた。「2003年に塩基配列(ヒトゲノム)が解読された」ということは、塩基が並んでいる

参照先:http://nsgene-lab.jp/dna_structure/double-helix/

順番がわかったということであり、これらの配列がどのように働き、人の個体差や疾病とかかわっているのか(発現していくのか)は、この時点ではまだ解明されていなかった。そこで、次にゲノム配列の異常とガンなどの相関関係を探る研究が始まった。しかし、ゲノム配列の異常だけで説明のつく疾患はごくわずかだったため、現在は後天的にゲノムに加わる異常(エピゲノム異常)に着目した疾病と創薬の研究が進められている。

ヒトゲノムには30億個の塩基情報があると言われているが、このうち人の体(タンパク質)を作ることに直接関与している部分は2%以下だと考えられている。残り98%の部分は遺伝子の働きを調整するなど重要な役割を担っていることが最近の研究で明らかになってきた。

参照先:理化学研究所 http://www.riken.jp/dmp/pdf/biojapan2012_08_01.pdf

人体は60兆個の細胞でできていると言われるが、それぞれの細胞はすべて同じ遺伝子情報であるヒトゲノムを持っている。同じ遺伝子情報からいろいろな臓器や器官ができあがっていくのはエピジェネッティクスと呼ばれる後天的な遺伝子発現パターンの記憶システムの働きであることがわかっている。エピジェネティックスとはDNA配列を変化させずにDNAメチル化やヒストン修飾などが行われる仕組みを指す言葉である。

これらはDNAが持つ遺伝子情報を変化させないためで「化学装飾」と呼ばれている。DNAの外側に別の分子が加わったり(修飾)、離れたり(脱修飾)することで遺伝子情報が読み込まれたり、抑制されたりし、細胞は同じ遺伝子情報を持ちながら異なる臓器や器官に分化していると考えられている。化学装飾はDNAを人間そのものだとすれば、その外側にまとう衣類のようなものだと考えれば理解しやすい。また後述する編集技術を使えば身に付ける衣類の場所や形を人為的に変化させることもできるようになってきている。

「細胞の中にあるゲノムDNAや、DNAが巻き付いているヒストン蛋白質にくっつくさまざまな化学修飾(メチル化やアセチル化)が、エピゲノムの正体です。これらの化学修飾は、ゲノム上の遺伝子のはたらきをコントロールします。エピゲノムは、細胞が分裂しても次の新しい細胞へほぼ正確に受け継がれます。」(服部奈緒子先生:国立がん研究センター研究所 エピゲノム解析分野)
参照先:日本医療研究開発機構 http://crest-ihec.jp/public/epigenome_qa.html

 繰り返しになるが、遺伝子情報であるヒトゲノムは各個人の全身の細胞が同じ情報を持っている。全身の細胞は人としての全体の設計図を全て持っており、設計図であるDNAの外側に化学物質が結合すること(化学装飾)が設計図のどの部分を読み込むのかを決めていると言われる。

これらの化学装飾を人為的にコントロールする技術も確立しつつある。2012年に登場したゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9は狙ったDNA配列簡単に編集できるツールである。これをエピゲノム編集(ゲノムの化学装飾状態の変更)に応用する研究が進められている。狙った遺伝子の遺伝子情報が読み込まれたり、抑制されたりするスイッチだけをオンにするDNA脱メチル化技術は群馬大学生体調節研究所が完成させたものである。

エピジェネッティクス情報は加齢、感染、ストレス、栄養などの要因や化学物質などにより変わってしまう極めて弱い仕組みらしい。DNAのメチル化やヒストンの脱アセチル化は遺伝子の発現を抑制することで知られているが、この部分の異常がガンなどの疾病につながるのではないかという研究がここ10年で急速に進んだ。エピゲノム異常と疾病との関係が明確になると、治療薬の開発も可能となる。これはエピゲノム創薬と呼ばれる研究分野である。日本ではエピゲノムに特化したNEDOプロジェクトが2010年度から5年間24億円強の予算で行われた。米国、欧州などでも同様のプロジェクトが進行し熾烈な研究競争行われている。

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