
福島原発事故後に乳児の複雑心奇形が増加
2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故後には、事故前に比べて1歳未満の乳児に対する複雑心奇形の手術件数が有意に増加したことが、名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科准教授の村瀬香氏らの調査で明らかになった。
詳細は「Journal of the American Heart Association」3月13日オンライン版に発表された。
村瀬氏らによると、旧ソ連で1986年に発生したチェルノブイリ原発事故後には、近隣諸国において先天性心疾患の発症率が増加したことが報告されている。
そこで、同氏らは今回、日本胸部外科学会が福島原発事故以前より集計している先天性心疾患に関する手術データに着目した。
このデータには、日本全国の病院で行われた同疾患に対する手術件数がほぼ網羅されている。
同氏らは、原発事故前後に当たる2007~2014年のデータを用いて分析を行った。
なお、データには、日本で認められる46種類の先天性心疾患が全て含まれていた。
研究チームはその中でも、心臓が発生する初期段階で生じた障害を起因とし、高度な手術治療を要する「複雑心奇形」と呼ばれる29種類の先天性心疾患に注目し、原発事故前後における手術件数の変化を検討した。
その結果、1歳未満の乳児に対する複雑心奇形の手術件数は、事故前に比べて事故後には約14.2%の有意な増加が認められた。
この手術件数は、調査終了時(2014年)まで高い水準で推移していることが分かった。