
日本人による、デジタルコンテンツの流行分析記事は良く見かける。では外国人の目から見て、日本のデジタルコンテンツのトレンドはいったいどのように映り、またどのように解釈されているのだろうか?
今回、世界的ソフトウェアメーカー・アドビが調査・考察した「日本人のデジタルコンテンツ消費に関する5つのトレンド」が発表されたので、紹介していきたい。
1.日本の消費者が、デジタルコンテンツに費やす時間は1日平均4.8時間
デジタルコンテンツの消費が増加している背景には、コンテンツ形式の多様化(動画、ソーシャルなど)がある。調査によると、日本の消費者は平均で1日4.8時間をデジタルコンテンツに費やしていることが明らかに。
18歳から34歳の世代では、全体平均より1.2時間増え6.0時間となっており、59%以上が複数台のデバイスを使用してデジタルコンテンツにアクセスしていることわかった。
アドビのプロダクトマーケティング担当ディレクターであるケビン リンジー(Kevin Lindsay)は次のように述べている。
「消費者はFOMO(fear of missing out)を実感しています。友人からのあらゆるニュースや悪ふざけに乗り遅れると、取り残されているように感じます。それに加え、昨今では携帯電話から何でもできるようになったため、つながり続けることが容易になったことは明らかです。楽しいものや有益なもの、中には時間の無駄遣いとも思えるようなデジタルコンテンツにさまざまなレベルでアクセスしています。」
2.日本の消費者は質の低い体験に不寛容
Netflix、Amazon、Airbnbといった企業が顧客体験に対する消費者の期待を変えていることは周知のとおり。
リンジーは、「企業にとって(顧客の期待に答える体験を提供していくことは)、ハードルがますます高くなっています。今では、webサイトのパフォーマンスやアプリなどのデジタルタッチポイントをマーケターが確認できるツールがあるため、いい加減な体験の提供には言い訳のしようがありません。顧客は容易に気付きます」と述べている。
調査で、消費者の3分の1が、最もイライラしてしまうこととして「コンテンツを見つけるまでにページやスクリーンをたくさん見る必要がある」(33%)、「関係の無いオファーを受ける」(33%)、「ページの読み込みが遅い」(32%)をあげていることがわかった。
特に「ページの読み込みが遅い」においては、18歳から34歳の世代で41%に上昇している。
また、デバイスでコンテンツを閲覧する際に遭遇する問題とそれに対するアクションを尋ねる調査が行われたところ、回答者の65%が、「ページの読み込みに時間がかかり過ぎる」とコンテンツの閲覧を完全にやめてしまうと回答していた。
ブランド企業からのコンテンツについては、「だらだらと長い/文章が下手」ことに最も不愉快になる(43%)と回答している。
また「パーソナライズされすぎていて気持ちが悪い」(25%)や「自分自身や置かれている状況に関連性がない」(24%)も不愉快にさせることが明らかになった。
また、4人中3人(75%)の消費者が、これらの状況のいずれか1つを体験するとそのブランド企業からの購入を思いとどまると回答している。
さらに、動画によって体験の善し悪しが決まることも調査でわかった。日本の消費者の半数近く(全体で45%、18歳から34歳では49%)が、動画コンテンツが含まれているとそのブランド企業のチャンネルを閲覧し続けると答えているものの、日本の消費者の60%が動画の「解像度が低い」または「動画の読み込みが遅い」とコンテンツの閲覧を完全にやめると回答している。
3.日本の消費者は、実店舗よりYahoo!ショッピングや楽天などの「オンラインショッピングサイト」を利用
日本の消費者が、商品やサービスの買い物を行う方法としては、Yahoo!ショッピングや楽天などの「オンラインショッピングサイト」(59%)の利用が最も多いことが判明。
さらに18歳から34歳では、63%の人が「オンラインショッピングサイト」を利用していることもわかった。「実店舗」は53%となり、「ブランドのwebサイトから直接」と回答した日本人は25%にとどまった。
4.ブランド企業は不快にさせない程度にパーソナライズしたコンテンツの提供が必要
現在、消費者は一日を通じて複数のデバイスを使用しているため、デバイスを頻繁に替えても途切れないシームレスな体験とパーソナライゼーションの水準を期待している。リンジーは次のように述べている。
「コンテンツが大きな役割を果たすのがこうした部分です。データに基づいたコンテンツは、ブランド企業による大規模なパーソナライゼーションの実現を支援できます。」
本調査で、ブランド企業のwebサイトにおける最近の体験についてポジティブであると答えた日本の回答者は16%にとどまり、調査対象国の中で最低の結果となった。その中でも「とてもよい」と回答したのはたったの3%。
また、パーソナライズしていないブランド企業から、常にまたは頻繁にコンテンツを受け取ると回答した日本の消費者は6割近くいたことが明らかに。
これは明らかに機会損失だ。消費者の3割近くが、コンテンツがパーソナライズされていれば「商品やサービスを購入する」(29%)または「ブランドへのロイヤルティを感じる」(30%)可能性が高くなると回答しているのだから。
その一方で、ブランド企業は慎重になるべきだとリンジーは警告している。非常に高い割合の消費者(73%)が、「不快なパーソナライゼーションによって一線を越えてきた場合、そのブランド企業から商品やサービスを購入することをやめる」と答えているからだ。
リンジーは次のように述べている。
「この調査では、消費者がどういったことを不快に思うかというところまでは掘り下げなかったため、ブランド企業は各取扱商材について自社で確認する必要があります。達成可能なことは何か、実用的なものとは何か、そして最も重要なこととして、顧客側が何を望んでいるか、ということを考えるべきです。」
本調査から、消費者はブランド企業を信頼しているものの、用心もしていることがわかった。
消費者の6割近く(57%)が、「自分が利用しているブランド企業ついてはプライバシーを尊重し、収集するデータは誠意を持って扱ってくれると信じている」と回答。リンゼイは「これは良いニュースです」としながらも、ブランド企業は「期待に応える本物の体験を提供すること」によって、顧客に敬意を持ち続ける必要があり、「それは取引に対する責任だけではありません。顧客のライフサイクル全体に当てはまることです」と述べている。
5.ほとんどの消費者が依然としてソーシャルメディアを信頼
昨今、ソーシャルメディアを取り巻くネガティブなニュースが多い中、56%の日本の消費者がソーシャルメディアチャネルを信頼していると答えた。
ソーシャルプラットフォームを信頼するという点には、世代間格差があり、18歳から34歳の23%しか、ソーシャルネットワークを信頼していないと答えている。
また、日本の消費者は、YouTube(23%)を最も信頼し、続けてFacebook(12%)とTwitter(12%)を信用していると回答している。
日本国内では、フェイクニュースのシェアや匿名性のアカウントによる投稿よりも、発信者の顔が見えるYouTubeのほうが信頼できる傾向があるようだ。
この結果を受けてリンジーは「調査結果に関わらず、ソーシャルメディアがなくなることはありません。ソーシャルメディアは消費者が友人とつながるため、また仲間と共有するコンテンツを見つけるための手段です。」と述べている。
出典元:Adobe Blog
構成/こじへい