
社員の何気ないSNS上での発言による炎上はもちろん、情報漏洩などのリスクもあるSNS。社内における「SNS教育」は重要になってきている。このSNS利用について、リスク回避のために、社員としてどのような心構えを持つべきか、企業向けにSNSリスクコンプライアンス研修講師を務める永友一朗さんに聞いた。
社員のSNS教育の必要性
近年、会社やメーカーがSNSを販促や採用活動で利用するのは当たり前になっている。そんな中、永友さんによると、社員のSNS教育は必要性を増しているという。
「SNSを介して炎上や情報漏洩が発生すると、企業イメージがダウンします。長年作り上げてきた企業ブランドが一日、あるいは数時間にして崩壊するリスクをはらんでいます。
つまり第一義的には、SNS教育は『企業を守るため』に必要不可欠なのですが、それだけではありません。
炎上の原因となった、不適切投稿等を行った社員が判明すれば、その社員の実名や家族がネット上でさらされ続ける可能性もあります。一度ネットに出た情報は削除することが事実上不可能なので、その不適切投稿等が一生ついて回る可能性もあります。
このような事態を避けるため、つまり『社員を守るため』」にも企業・組織でのSNS教育は必要不可欠といってよいでしょう」
社員のSNS教育の主な内容
社員は、SNSに関してどんなことを学ぶべきなのか。企業で実施されているSNS教育の内容から、永友さんは5つピックアップする。
1.「SNSコンプライアンス違反をすると、どうなってしまうのか?」について
「刑事責任(迷惑防止条例違反等)や民事責任(損害賠償)を負う可能性、社会的責任(懲戒解雇等)を負う可能性、ネット上でさらされ続ける『ネット私刑』を受ける可能性を理解します」
2.個人としてSNSを利用する場合のトラブルとその回避について
「SNSでの情報の広がり方の理解や、各種SNSのプライバシー設定の見直しについて理解します。また仕事上の秘密を家族に話すと、その家族がうっかりSNSで投稿してしまうかもしれません。そのようなリスク可能性も理解します」
3.業務としてSNSを利用する場合のトラブルとその回避について
「どのような振る舞いがSNSトラブルを招くのかについて、炎上とその対処事例を理解します。また無用なトラブルを引き起こさないための『ソーシャル会話力』、つまりSNSでのコミュニケーションマナーを理解します。また社内で起こり得る『SNSハラスメント』について理解します」
4.実務上の顧客対応などのまずさがSNSで拡散するケースについて
「社内のSNS運用体制が万全でも、例えば『接客時にトラブルがあり、不満を持った客がその個人SNSで発信し炎上につながった』というケースもあります。SNSが広まった今だからこそ、現場でのクレーム初期対応が非常に重要です。このことについて事例やワークを使って理解します」
5.個人情報保護と漏洩リスクについて
「悪ふざけ投稿ばかりがSNSリスクではありません。個人情報が書かれた書類がSNS投稿に映りこんでしまったことから『個人情報漏洩』になるケースもあります。個人情報漏洩トラブル時の損害賠償や対応コストが甚大になることを理解します」