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パワハラ議論で完全に抜け落ちていること

2019.03.18

■連載/あるあるビジネス処方箋

 私は、1990年代初めに社会人になった。最初の職場で30歳前後の社員からこう教えられた。「アホは相手にしない。アホに気をとらわれると、心のリズムが崩れるぞ。損をするだけだ」。苗字のイニシャルは、Y。当初、Yからの教えに強い疑問を感じた。

 この場合の「アホ」とは、同じ部署の50代後半の男性社員を意味する。彼は一応、管理職(課長級)だが、部下はいない。60歳の定年を数年後に控え、特に何もするのでもなかった。担当の仕事がないのだ。午前9時半ごろに出社し、午後5時まで机にへばりつき、新聞や雑誌を読んでいた。時折、あくびをした後、立ち上がり、フロアをゆっくりと歩く。そして椅子に座り、新聞を読む。ほぼ毎日午後3時から4時半ぐらいまでは、寝ていた。

 外から電話がかかってきても、決して出ない。眉間にしわを寄せ、ふてくされて、2メートル程前に座る私に「早く、出ろ!」と言わんばかりの雰囲気を漂わせる。私は部員11人でもっとも若いから、出ようとする。だが、大量の仕事を抱え、10回近く鳴ってからようやく「はい」と出る場合もあった。彼は「遅い!」と叱る。はじめは「わかりました」と答えていたが、ある日、言い返してしまった。「なぜ、電話に出ないのですか?」。

 彼は、「俺たちの若いころは、そんな物言いはできなかった。甘えるな!」と声を大きくする。私も言い返した。「1回だけ、出てもらってもいいじゃないですか?」。双方で数分間、押し問答が続いた。同じフロアの隅で黙って聞いていたのが、Yだった。

 午後8時頃、帰ろうとしたときに、Yは後をついてきた。「メシでも食おう」と、駅前のステーションビル内のとんかつ屋に誘ってくれた。そして、言った。「アホは相手にしない。アホに気をとらわれると、お前の心のリズムが崩れるぞ。損をするだけだ」。

 社会人2年目で、24歳の私は50代後半の男性を心の中で「退職金狙いの怠慢なおっさん」と冷ややかには見ていた。それでも、「アホ」とまでいわれると、すぐに反応できなかった。心のどこかで「話し合えば、こんな人とも分かち合える」と信じていた。そうでありがいと願っていた。

 この後も、50代後半の男性との意思疎通に苦しむものがあった。見事に仕事をしない。上司ではないのに、20代の社員にめちゃくちゃな指示をしてきた。それでいて、「そんな指示はしていない」と頬かむりをする。部内では、厄介者扱いを受け続けていた。40代前半の部長は、この男性に挨拶すらしない。部署の社員もそれぞれが1か月に1回程、わずか数分ぐらい話すだけだった。1年半後、私は人事異動で他部署へ移る。彼は、その後も60歳まで残った。聞くところによると、73歳で病死したという。

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