
【初めてのブロックチェーン】完璧でも万能でもない!メリット・デメリットを理解する
インターネットに匹敵する革新的な技術として注目されているのが「ブロックチェーン」です。ブロックチェーンといえば、暗号資産に使われている技術ですが、決して「ブロックチェーン=暗号資産」ではありません。ブロックチェーンは、暗号資産だけでなく、様々な領域に応用すべく開発や実験が行われており、将来は医療、食品、流通、保険、著作権保護といったジャンルへの活用が見込まれています。
では、ブロックチェーンは非の打ち所のない技術で、完璧かというとそうでもないようです。今回はブロックチェーンのメリット・デメリットを整理していきます。
仕組みからくるメリットとデメリットを理解する
ブロックチェーンには改ざんができず、データの信憑性が高いことや、システムが停止することがないことなど、多くのメリットがあります。しかし、実は、処理速度が遅いとか、管理者であっても誤ったデータを修正できないなどのデメリットもたくさん抱えています。ビジネスで活用するには、そのメリットとデメリットをよく理解することが重要です。
ブロックチェーンは、全体を管理する人がいなくても、うまく動作し続けるように考えられたシステムです。誤ったデータが書き込まれた場合は、システム全体でそれを排除することができる仕組みを含んでおり、また一部のデータを削除したり変更したりすることはできません。管理者であってもデータの改ざんはできないため、サービス提供者が都合の悪いデータを勝手に書き換えてしまうという事態も生じません。データの正当性については、強力に担保されているわけです。
システム的に改ざんが不可能なので、通常のウェブサービスのように、信頼性の低い企業が運営しているからといってデータの信憑性まで疑う必要はありません。名の知れ渡った大企業でなくても、ブロックチェーンを正しく構築・活用できれば、運営者を疑う必要はありません。例えば、ビットコインはどこで誰から買おうとも、ビットコインとしての価値を持ちます。
一方で、いったん書き込まれた情報は削除・変更ができないため、あとから「この情報は公開すると拙いので、削除したい」と思っても対処方法がなく、ミスの取り消しが難しいといえます。また、閲覧権限をつけることができないので、特定の人にだけ公開したい情報の格納には向きません。個人情報のように特定の人しか扱うべきでない情報の記録には、パブリック型のブロックチェーンは適さないと言えます。
ただし、参加者に条件を課すプライベート型のブロックチェーンなら、特定の参加者のみ削除・変更が可能なシステムを構築できます。管理者を置き、参加者全員が平等ではない環境でブロックチェーンを維持するのです。プライベート型はブロックチェーンの特性をすべて持っているのではなく、一部を犠牲にして活用範囲を広げた仕組みだということもできます。
パブリック型のブロックチェーンが持つメリットとデメリット。プライベート型では、メリットの一部を捨てて、デメリットを解消することができる
そもそもブロックチェーンが守る原則と捨てる利便性とは?
ブロックチェーンでは、複数のノードが協力しあってサービスを運営する分散コンピューティングを採用しています。分散コンピューティングでは、1台のコンピューターでは成し得ないようなメリットを持つ反面、独特の構造からデメリットも生じます。どのようなメリットやデメリットがあるかは、「CAP定理」(ブリュワーの定理とも言います)で触れられています。
CAP定理によれば、分散コンピューティングを採用したシステムでは、一貫性(Consistency)、可用性(Availability)、分断への耐性(Partition-tolerance)の3つを同時に満たすことはできないとされています。一貫性はデータが最新であること、可用性はシステムが落ちないこと、分断への耐性ではネットワークの一部が遮断されてもサービスが停止しないことを意味します。
ブロックチェーンでは、可用性と分断への耐性は保証しますが、一貫性は保証しません。なぜなら、ブロックチェーンに書き込まれたブロックは多くのノードの処理を経て正しいものとされます。処理中に書き込むべきデータが発生しても、すぐにブロックチェーンに反映されるわけではありません。そのため、手元にあるデータが常に最新であるとは言えないのです。
3つのうち、ブロックチェーンが保証するのはAとPだ。なお、AとCを保証するものにはリレーショナル・データベース・マネジメント・システム(RDBMS)など。データベースのタイプによっては、CとPを保証するものや、AとPを保証するものがある