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専門家が解説!温度差や低温によってもたらされる「ヒートショック」のリスク

2019.02.26

ヒートショックという現象をご存じだろうか?

ヒートショックとは、極端な温度差がもたらす血圧の乱高下及び脈拍の変化のこと。さらに、この分野の専門家である近畿大学建築学部長の岩前篤教授によると、ヒートショックには「温度差」によって起こるものと「低温」によって緩やかに起こるものの2つがあり、「低温」による緩やかなヒートショックが日本人の死因に占める割合は約10%(約12万人)にもなるそうだ。

日本の住宅では、エアコンをリビングや寝室などの「居室空間」には設置するものの、廊下や脱衣室などの「非居室空間」には設置しないのが一般的。そのため居室空間と非居室空間の間で「温度差」や「低温」が生じやすく、冬場のヒートショックリスクを高めている。

そこで今回、首都圏在住の女性200人を対象に、住宅内の非居室空間と寒さに関するアンケート調査が行われた。

住宅内の非居室空間と寒さに関する実態調査

冬場に住宅内で、寒さを感じる空間・場所があるかについて尋ねる調査が行われたところ、最も多かったのは「洗面室・脱衣室」(71.0%)で、続いて「廊下」(70.0%)、「玄関」(67.5%)、「トイレ」(59.5%)という結果に(図1)。

これら上位はいずれも非居室空間で、住宅内でも約6~7割の女性が「寒さ」を感じているようだ。また、寝室でも3人に1人(33.0%)が寒さを感じており、非居室空間だけでなく、寝室のような居室空間においても「低温」の状態にいる女性が多いことが分かる。

次に、空間・場所別に暖房器具の使用率を尋ねる調査が行われたところ、「キッチン」「洗面室・脱衣室」以外の非居室空間ではほとんど暖房器具が使われていなかった(図2)。

なお「キッチン」における暖房器具使用率が高くなっているのは、LDK空間でのエアコン使用が含まれていることが影響しているものと考えられる。

いずれかの「非居室空間」で「暖房器具は使っていない」と答えた場所・空間がある方に、暖房器具を使っていない理由を尋ねる調査が行われたところ、最も多かったのは「その空間・場所に暖房器具が設置されていないから」(45.9%)で、続いて「寒くても我慢できるから」(37.8%)、「必要性を感じていないから」(35.7%)という結果に(図3)。

主な非居室空間で寒さを感じている人が6~7割も存在しているにもかかわらず、暖房器具は設置せず、我慢できると考えてしまう人が4~5割存在するという背景には、我慢は美徳であり、寒さは体を強くするという私たち日本人が持っている価値観が影響しているのかもしれない。

いずれかの非居室空間で「暖房器具を使っている」と答えた場所・空間がある方に、非居室空間で使っている暖房器具に対する満足度を尋ねる調査では、約3割(33.1%)の人が「満足していない」(「全く満足していない」と「あまり満足していない」の合計)と回答した(図4・上)。

不満足の理由としては「すぐに暖かくならない」、「スペースをとって邪魔」、「暖房の効果が弱い」といった声が上位に上がっています(図4・下)。非居室空間における「温度差」、「寒さ」対策としては、性能と設置性を両立した暖房器具が求められているといえそうだ。

専門家が解説するヒートショックと健康のリスク

最後に、ヒートショック問題の専門家である近畿大学 岩前篤教授による「温度差」や「低温」に伴うヒートショックと健康リスクについての解説を紹介していきたい。

近畿大学 建築学部長 教授

昭和36年和歌山県生まれ。昭和60年神戸大学院工学研究科を修了後、大手ハウスメーカーに入社し、住宅の断熱・気密・防露に関する研究開発に携わる。平成 7 年、神戸大学にて博士号を授与。平成15年春に同社を退社したのち、近畿大学理工学部建築学科に助教授として就任。平成21年に同教授、平成23年に新設された建築学部の学部長に就任。

Q:ヒートショック問題の現状について教えてください。

ヒートショックは大きく2つに分けられると考えています。ひとつは、体あるいは体の一部が急激な「温度差」にさらされ、局所的な血圧の上昇(サージ)が全身に伝わり、主に循環器系の疾患を引き起こすヒートショックです。

冬のお風呂や脱衣室、トイレなどで起こりやすく、年間1万数千人が命を落としているといわれています。分かりやすい例としては、ヒートショックが原因と推測される家庭の浴槽での溺死者数だけみても13年間で1.9倍に増加し、交通事故による死者数を大きく上回っています。

もうひとつ、あまり知られていませんが冬の「低温」に伴うコールドダメージともいえるヒートショックがあります。

2015 年に発表された海外の研究によれば、日本人の死亡者のうち約 10%に相当する12万人が冬の「低温」の影響で亡くなっていると報告されています。これは「温度差」によるヒートショックの約10倍に上り、私たちが認識している以上にヒートショックは大きな問題といえます。

Q:ヒートショックやそれに伴う健康リスクを防ぐためにはどうすべきですか。

室内の「温度差」はもちろんですが、「低温」自体が私たちの健康問題であるという認識を持つことです。多くの日本人はトイレや脱衣室、廊下などの非居室空間が少しくらい寒くても「我慢」して過ごしてしまいます。

しかし家の中で「寒い」と感じるということは、その時点ですでにストレスであり健康問題なのです。私が以前行った調査で、新築戸建て住宅に転居した家族を対象に転居前と転居後の体の状態についての変化を調べたところ、断熱性の高い(暖かい/寒くない)住宅に転居した人ほど体の不調が改善するという結果になりました。

また、海外で暖房は「ルームヒーティング」という言葉が示す通り、部屋や空間全体を暖めるものと考えます。これに対して日本で暖房は「暖を取る」すなわち「採暖」で、(空間ではなく)人を暖めるものと考えます。

その結果、日本の住宅内には「温度差」「低温」が生じています。今の時代、高気密・高断熱化や小空間用の空調等、住宅内の温度差や寒さを防ぐさまざまな選択肢があります。ヒートショックやそれに伴う健康リスクを防ぐためには「採暖」ではなく、空間全体を暖める「暖房」を暮らしに取り入れることが必要といえます。

Q:調査結果では女性の約7割が主な非居室空間で「寒さ」を感じていても暖房器具を使っておらず、その理由は「寒くても我慢できる」「必要性を感じていない」というものでした。

家の中で「寒さ」を感じているのに何もしていなかったり、暖房の必要性すら感じていない現状は、「健康」という視点から考えるとリスクが高い状態といえます。

私たち日本人は、我慢を美徳と考えていたり、さしたる根拠もなく「寒さは体を強くする」と思っている人が多いのですが、それによって健康維持にかかるコストが上がるとしたらどうでしょう。

空間全体を暖める「暖房」のある生活へのパラダイムシフトが、私たち日本人に今求められているのではないでしょうか。

Q:住宅内で低温対策が必要となる目安の温度や注意すべきことはありますか。

目安としては 10℃以下の低温は住宅から排除することをおすすめします。実は日本の戸建て住宅では 10℃以下の低温はごく普通にあります。

私の研究室でおこなった冬場の寝室温度に関する調査でも、日本では 10℃前後の寝室が多いことを確認しています。また興味深いことに、東京から北上すると寝室温度は高くなり、反対に東京から西へ進むと低くなっていきます。

つまり外気温と寝室温度には逆相関の関係がある(外気温が暖かい方が寝室温度は低くなる)のです。ヒートショックや低温の問題が決して寒い地域に限った話ではないことを示す結果といえるでしょう。

注意して欲しいのは、私たちは日常生活の中で、自分でも気が付かないうちに「低温」に体を晒してしまうケースがかなりあるということです。例えば家の中で、スマホやテレビ、本・雑誌などに夢中になって、いつの間にか体が冷えていたという経験は誰にでもあると思います。

このようなケースでは、「低温」によるダメージを体に受けた後になって「寒さ」に気が付くことになります。これを防ぐためには「寒さ」を感じてから室温を上げるのではなく、空間全体の温度が低くならないように、予めコントロールしておくという心掛けが必要です。

Q:非居室空間における「温度差」や「低温」の対策の状況が、今後改善していく可能性はありますか。

改善の可能性は充分にあると考えています。その大きなきっかけになりそうなのが「学校環境衛生基準」の改正です。

これまで学校では教室の望ましい室温は「10℃以上、30℃以下」とされていましたが、2018年4月に「17℃以上、28℃以下であることが望ましい」と改正されました。「低温」が私たちの「健康」にとって良くないものであるという認識が、ここから少しずつ広がっていくことを期待しています。

そのためにも「低温」を排除した暮らしがいかに快適か体験することも重要です。実は冬に海外旅行をしてホテルで過ごした経験がある方は体験済です。

日本に帰ってきた途端に忘れてしまうのですが、ぜひ冬の海外のホテルの暖かさ、快適さを思い出してみてください。健康でアクティブな暮らしができそうだと思いませんか。

出典元:ダイキン工業株式会社

構成/こじへい

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