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2019.02.21

「〝藤子先生っぽい〟と感じてもらえることがゴール目標でした」小説家・辻村深月インタビュー

 3月1日より全国公開される「映画ドラえもん」シリーズ第39作『のび太の月面探査記』は、直木賞・本屋大賞作家である辻村深月さんが脚本を手掛けた。本誌インタビューでは、一度は断りながらも脚本を引き受けた経緯や、大冒険の舞台が「月」になった理由を伺った。こちらの特別インタビューでは、脚本と小説との表現ジャンルの違い、自ら書き下ろした小説版(『小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記』)について語っていただこう。

大長編でまだ描かれたことのない月を舞台に

<月は、人が生きるには過酷な世界だ。(中略)しかし、それはあくまでも「人にとっては」という話。>(『小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記』プロローグより)

 熱烈な『ドラえもん』ファンとして知られる辻村さんは、「大長編でまだ描かれたことのない舞台にしよう」と想像を巡らし、月を舞台に選んだ。

「藤子先生がお選びにならなかった舞台に手を出すからには、物理法則はもちろん、最新の月の知識についてもきちんと頭の中に入れたうえで、“実現可能な不思議”を考えていかなければいけない。そうしなければ、『ドラえもん』にはならない。そう思って資料を読み進めていったら、月は生き物が住める環境でないことはもう知られているし、地球から近い天体である分、どうしても物語上の『嘘』を吐くのが難しい場所なんだと分かりました(笑)。どうりで藤子先生は月に行かなかったわけだ、と」

 そんな月に生命を、のび太たちが出会う「友達」を生み出すにはどうしたらいいか? 原作ファンの間でも人気のあるひみつ道具「異説クラブメンバーズバッジ」が、鍵となった。月の裏には文明がある、という「異説」を現実化させればいい! のび太のクラスに転校生がやって来るところからお話は動き出し、月の裏に暮らしている友達はミステリアスな超能力を持っていて……。想像力はどんどん膨らんでいったが、やがて最大の難関にぶちあたった。

小説家って、なんて気楽な仕事なんだろう

「『ドラえもん』の映画のいいところって、敵が強大な悪なんです。私は自分の小説の中で、闇を書くことはあるんですよね。葛藤しながら苦しむ敵の、その闇の部分を描くのは得意でも、対して、強大で純粋な悪を描くことはこれまでなかった。小説とは、そこが絶対的に違うところだなと感じました。でも、その悪に対して、ドラえもんたちも観ている子供たちも、心から許せないと思って戦うから、ワクワクするし面白いんです。敵の造形もそうですし、正体が判明する瞬間をどう描くかは、こだわりました。それこそが藤子先生が描かれてきた児童漫画の醍醐味ですから」

 しかも、空想を小説ではなく脚本にすることには、特別な難しさがあったのだ。

「小説家って、なんて気楽な仕事なんだろうと思いました(笑)。上映時間何分以内という守らなければいけない尺はないし、例えばゲストキャラが必要だとか、笑えるキャラクターが必要だっていう、守らなければいけないセオリーもない。小説ってとても自由度の高い仕事だったんだなと思い知ったんです。その一方で、脚本だからこその楽しい部分も。月面の描写はト書きで“荒涼とした大地”って一行書けば、済んじゃう(笑)。“ミステリアスな月”って一言書けば、あとはスタッフのみなさんにお任せすればいい。セリフの前に“しずかちゃん、怒りながら”と指示を入れれば、前後のシーンの流れの中でなめらかにキャラクターを動かしてくださるんです。まるでドラえもんのひみつ道具みたいだなぁと思いました」

 脚本がアニメへと変換されていく過程を見ながら、さまざまなマジックも目の当たりにした。

「長いセリフを“ここの部分は表情だけで分かります”という判断で、八鍬監督がどんどん短くしていったんです。実際にできあがった映像を観てみると、キャラクターの表情や声優さんの演技で情報が補われて、十分に伝わるんですよ。アニメってすごい、と改めて実感しました」

 ところが、「ノベライズをやることになって、私も脚本の“その先”の作業をやることになっちゃいました」と苦笑い。そこでもまた、普段小説を書いている時とは違う独特の難しさがあったそうだが、

「ノベライズもやらせてもらって本当によかったなと思っています。アニメはやっぱり尺の問題が大きくて、監督も私も入れたかったけれど、泣く泣く切ったシーンがありました。それを入れられたし、心情を掘り下げて書くことは、小説の得意分野なんですよね」

 熱烈な『ドラえもん』愛とともに、ミステリー作家としての想像力や技術が惜しみなく注ぎ込まれた本作は、辻村さんにとって初挑戦となる「SFミステリー」だ。『ドラえもん』ファンにとっても辻村ファンにとっても、新鮮かつ大満足な仕上がりになっていることは間違いない。

「脚本を書いている間中ずっと、観てくださる方に“藤子先生っぽい”と感じてもらえるかどうかがゴール地点だと意識していました。映画とノベライズとで、両方が補い合ってくれるような関係になったと思うので、映画も小説も、両方楽しんでもらえたら、とても嬉しいです」

単行本
小説「映画ドラえもん のび太の月面探査記」
原作/藤子・F・不二雄 著/辻村深月

小学館ジュニア文庫
小説「映画ドラえもん のび太の月面探査記」
原作/藤子・F・不二雄 著/辻村深月

作家 辻村深月さん
つじむらみづき●1980年、山梨県生まれ。小説家。2012年に『鍵のない夢を見る』で直木賞を、2018年に『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。最新刊は『小説「映画ドラえもん のび太の月面探査記」』。

ネックレス/のび太の月面探査記ポケットウォッチネックレス 2万8000円 指輪/さくら練り切りリング 6500円
問い合わせ先/Q-pot. 表参道本店 ☎03・6447・1217 
©Fujiko-Pro,Shogakukan,TV-Asahi,Shin-ei,and ADK 2019 ©Gramme Co. ©Fujiko-Pro,Shogakukan,TV-Asahi,Shin-ei,and ADK ©Gramme Co.
ぬいぐるみ/ドラえもんぬいぐるみ 映画ドラえもん のび太の月面探査記 Ver. 4500円
発売元/(株)バンダイ 問い合わせ先/(株)セキグチ 電話:0120・041903 
©Fujiko-Pro,Shogakukan,TV-Asahi,Shin-ei,and ADK 2019

『映画ドラえもん のび太の月面探査記』3月1日全国ロードショー

『映画ドラえもん のび太の月面探査記』: https://doraeiga.com/2019/

シリーズ39作目となる本作の舞台は月。月を舞台にドラえもんとのび太たちが大冒険を繰り広げる。ゲスト声優には広瀬アリス、ロッチ・中岡創一のほか、サバンナ・高橋茂雄、柳楽優弥、吉田鋼太郎といった豪華キャストが集結。新進気鋭のアーティスト平井大が主題歌を担当。脚本はドラえもんの大ファンを公言する直木賞作家の辻村深月が務める。
©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2019

取材・文/吉田大助 撮影/黒石あみ(小学館) ヘアメイク/安田有香(air)

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