
何が起きるかわからない時代。問題解決スキルはいつにも増して求められている。そんな中、失敗から立ち直る力「レジリエンス」の注目が高まっている。
そこでレジリエンスに関する研究や講座を行う一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会の理事講師 徳吉陽河さんに、レジリエンスを高めるメリットや、高める方法を聞いた。
レジリエンスの必要性
レジリエンスは今、日本で注目を集めているスキルの一つだ。まずは徳吉さんにレジリエンスの定義から教えてもらった。
●レジリエンスとは
「レジリエンス(Resilience)という言葉は、行動科学や健康の領域で注目を集めてきました。レジリエンスは,精神的回復力、弾力性、逆境力、耐久力などに日本語訳されています。レジリエンス(Resilience)の語源はresile(re:再び + bounceやspring back:跳ね返り)であり、困難な出来事に対する立ち直りに関わるとされています。その背景から,レジリエンスは“失敗やストレス,困難な状況からの立ち直り”を意味するようになりました」
今の日本で、なぜレジリエンスが求められているのか。
「現代社会において充実した人生を大切にするためには、忍耐力や社交性、自尊心といった『社会情動的スキル』が重要とされています。社会情動的スキルは、OECDによって提唱されており、社会的成功、Well-being(幸福感)、パフォーマンスやエンゲージメントなどと関係があります。社会情動的スキルの中核となす忍耐力は『レジリエンス(逆境力,精神的回復力)』に関わりがあると考えられます。
最近では人口減から、離職対策が叫ばれており、人生100年時代と言われる『ライフシフト』が必須な日本の情勢、社会環境において『レジリエンス』の育成が幅広い世代で必要であることが考えられます」
レジリエンスはどんなことに役立つか
レジリエンスが高いと、具体的にどんなことに役立つのか。
徳吉さんによると、レジリエンスは精神的な健康面での成果、人生の満足度、幸福感の向上、自己成長、変化への準備、ストレス軽減などに役立つことがわかっているという。レジリエンスについて、研究で分かっているものを挙げてもらった。
●自己成長主導性
レジリエンスは、自分で自分を高める力、自己成長主導性に関わる。
●ストレスコーピングの肯定的解釈
レジリエンスは,ストレスに対して肯定的に解釈を行うスキルと関わりがある。
●リフレーミング
レジリエンスは、問題や課題を多角的な視点で考察する力、リフレーミングに関わる。
●人生に対する満足度
レジリエンスが高い傾向がある人は「人生に対する満足度」も高い傾向が示されている。
●解決志向アプローチ
未来志向で、目標に向けて努力したり、自分の強みを発揮したりすることや、変えられない過去や問題に焦点を当てず、解決に向けたアイデアを考えることは、レジリエンスを高めるために役に立つと考えられている。
●マインドフルネスに必要な「観察・統制・描写・集中」
レジリエンスは、マインドフルネスに必要なスキル「観察・統制・描写・集中」すべてに関わる。
●自尊感情・主観的な幸福感
レジリエンスが高い人は,「自尊感情」が高く「主観的な幸福感」も高い傾向があることが分かっている。ポジティブな感情に深く関係すると考えられる。
●ストレス軽減
レジリエンスが高い人はストレスが低い傾向が示されており、「レジリエンス」を高めることにより、ストレス軽減に役立てられる可能性がある。ストレス対処能力も高い。