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最後に決めるのは?カタールとの決勝でゴールを目指す南野拓実

2019.01.31

イラン撃破の原動力となった南野、次こそは自分の番

「アジア最強」の呼び声高き、イランとのアジアカップ・準決勝(アルアイン)。後半11分に大迫勇也(ブレーメン)からのスルーパスを受けた南野拓実(ザルツブルク)が反応。凄まじいスピードでタテへ突進し、相手DFに倒された。イラン守備陣はファウル判定を取られたと思って動きを止めたが、背番号9は彼らを見向きもせず、一目散にこぼれ球を拾いに行き、ゴール前へ折り返す。ここに飛び込んだのが半端ない点取り屋の大迫。エースFWの突き刺した先制ヘッドはイランに衝撃を与えた。

 この一撃で主導権を握った日本は最終的にゲームが荒れに荒れる中、2点を加えて優勝候補筆頭と言われた宿敵を一蹴した。VARによって与えられたPKを大迫が決めた2点目、電光石火のカウンターから原口元気(ハノーファー)が奪った3点目は、いずれも南野がお膳立てしたものだった。
「自分は攻撃の選手なんでゴールかアシストでチームに貢献できればいい」と大会前から強調していた日本屈指のイケメンアタッカーがアシストという明確な結果を残したのは、9日の初戦・トルクメニスタン戦(アブダビ)以来。けれども、その間の道のりは苦難の連続だった。2018年の日本代表戦5試合4ゴールという数字を残していた若武者には今大会得点王の期待も寄せられていたが、13日のオマーン戦(同)で前半だけで4本の決定機を迎えながらノーゴールに終わったところから微妙に歯車が狂い始めたのだ。

 決勝トーナメント突入後は守備に忙殺される時間が増え、不完全燃焼感が一段と濃くなっていく。21日のラウンド16・サウジアラビア戦(シャルジャ)では数少ないカウンターのチャンスでハンドを取られ、24日の準々決勝・ベトナム戦(ドバイ)でもGKと1対1になる得点機を逃してしまった。こうした出来事が積み重なり、南野は悔しさを押し殺すかのように2戦続けて取材ゾーンを無言で通り過ぎた。育成年代の頃からつねに明るく、誰に対して丁寧な対応をしていた彼がそんな態度を取るのは極めて珍しい。1月16日に24歳の誕生日を迎えた時点でも、アジアサッカー連盟(AFC)が制作した映像の中でバースデーメッセージを寄せた筆者に「ありがとうございます」とわざわざ笑顔でお礼を言ってくれたくらいだから、その変化には驚きを禁じ得なかった。
 3つの貴重な得点に絡んだイラン戦後は普段通りの立ち振る舞いに戻るだろうと期待したが、またしても無言。その理由を本人は一切公言していないが、「ゴールを取るまでは集中する」といい強い覚悟があってのことに違いない。同じ大阪府熊取町出身で幼少期からしのぎを削ってきた室屋成(FC東京)は「そんなに気にしてない感じでしたよ。『まあいずれ決める』みたいなことは言ってたし」と代弁したが、とにかく喉から手が出るほどほしいゴールが取れていない現状を打破すること。それしか考えていないのだろう。

「不言実行」で大舞台でのゴールを目指す

 もともと南野にとって今回のアジアカップは「香川真司(ドルトムント)超え」を期待されたビッグトーナメントだった。2011年カタール大会制覇の原動力となった香川は本田圭佑(メルボルン)とともに前線のキーマンとして躍動。最も乱戦となった準々決勝・カタール戦(ドーハ)で1試合2得点を叩き出し、新たなエースナンバー10としての土台を固めた。そこから香川が足掛け8年間に渡って10番を背負い続け、国際Aマッチ91試合出場31ゴールという数字を残したのはご存知の通りだ。森保一監督体制になってようやくA代表に定着した南野にとって、セレッソ大阪の偉大な先輩はいずれ追い越さなければ存在。その布石を打ちたいと本人はどこかで思い描いていたはずだ。その作業が現時点で思うように進んでいないのは事実だが、まだ残されたチャンスはある。今は「不言実行」で大舞台でのゴールを目指すしかないのだ。

 日本が2月1日のファイナルで対峙するのは2022年ワールドカップ開催国のカタール。南野自身は19歳の時、初めて日本代表候補合宿んい呼んでくれて、2014年ブラジルワールドカップ予備登録メンバー入りさせてくれたアルベルト・ザッケローニ監督率いるUAEと対戦したかったのではないか。それはザックチルドレンの長友佑都(ガラタサライ)や吉田麻也(サウサンプトン)も同じ。恩師との再会が叶わなかったのは残念ではあるが、カタールはUAEを4-0で粉砕した強敵。イランに同等か、それ以上に強いチームだと考えていいだろう。
 指揮を執るカタルーニャ人のフェリックス・サンチェス監督はバルセロナのアカデミーでの指導経験を持つ。中東勢といえば、かつては堅守速攻スタイル一辺倒だったが、このサンチェス監督とコーチングスタッフに名を連ねる名手、シャビ・フェルナンデス(アル・サッド)らの指導の成果で、ボールを支配しながらコンビネーションでも崩せるマルチな集団へと変貌を遂げた。

 守備陣も今大会6試合無失点と強固。イランから3ゴールを挙げた日本と言えども、攻略は至難の業かもしれない。加えて言うと、元フランス代表のクロード・マケレレ(ベルギー・オイペン監督)やフランス代表のエンゴロ・カンテ(チェルシー)を彷彿させる献身的ボランチのアシム・マディボの守備が厄介で、南野も相当マークされる可能性がある。そこでイライラせずに、イラン戦で見せた冷静さと集中力を貫き、持てる力の全てを出し切ることができれば、必ずゴールという結果はついてくる。強く追い求めたゴールをファイナルという大舞台で挙げて、スターになれれば、ここまでの悔しさや焦燥感は全て一掃できる。今夏の欧州ビッグクラブへのステップアップの道も開けてくるはずだ。

「自分のキャリアうんぬんはチームが優勝したうえでの話。とにかく優勝して大会を終えたい」とイケメンFWは大会前にあくまでフォア・ザ・チーム精神第一であることを強調していた。そのスタンスは素晴らしいが、若い点取屋はもっとエゴを出していい。かつての本田圭佑が2010年南アフリカワールドカップで大化けしたように、南野にもこのカタール戦のヒーローの座をもぎ取ってほしい。彼はそれだけの資質を十分に備えている男。新世代の日本の看板アタッカーのブレイクが待ち遠しい。それと同時に、試合後の取材ゾーンで南野が本来の明るさと笑顔を取り戻してくれることも併せて希望したい。

取材・文/元川悦子【UAE】

長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。

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