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2019.01.16

「終身雇用は古い」「実力主義は新しい」は本当にそうなのか?

■連載/あるあるビジネス処方箋

 昨年秋、経済雑誌の記事の制作に関わった。20~40代の編集者数人と話し合いをしているうちにひさしぶりにある思いになったので、今回はそれを紹介したい。結論から言えば、私がこの10数年、接した経済雑誌やビジネス雑誌、業界紙などの編集者の約8割が、ある誤解をしているように思えてならない。それは、主に次のことである。

日本企業の多くは終身雇用であり、雇用が安定している

 結論からいえば、この捉え方は事実関係として致命的な誤りである。この約100年間、中小企業の大多数の社員の雇用は極めて不安定だった。好景気であるはずの今の時代も次々と倒産や廃業をしている。

東京商工リサーチの調査では、2017年に休廃業・解散した企業数は2万8,142件(前年比4.8%減)。企業倒産は年間で1万件を割り込むが、倒産件数の3倍以上の企業が休廃業・解散を選択し、毎年4万社近い企業が市場から退出している。私の身近なところでも、社員数が100人以下の出版社や編集プロダクション、企画制作会社はこの10年ほどで、30~40社ほどは倒産もしくは廃業した。一例を挙げると、2007年に倒産した出版社の経営者は、デザイナーや印刷会社などの外部スタッフに報酬を払うことなく、行方をくらましている。

この100年を振り返ると、1945年の終戦直後や1970年代の石油危機、80年代半ばの円高不況、90年代半ばから後半にかけての平成不況の時期などは、中小企業の倒産・廃業はもっと多かったはずである。日本は、株式会社として登録している会社のうち、97~98%が中小企業であり、世界有数の「中小企業大国」と言える。この事実を踏まえると、「日本企業の多くは終身雇用であり、雇用が安定している」と言えるだろうか。

大企業の多くの社員は終身雇用であり、雇用は安定している

この認識も、事実関係として疑わしい。まず、少なくともこの40~50年間、特に1990年代後半までは多くの大企業の経営は比較的安定し、雇用も安定していた傾向はある。ただし、証券業界や金属や造船、繊維業界などは1970~80年代に「減量経営」という名のリストラ=人員削減を繰り返し行っている。

さらに言えば、女性は長年にわたり、終身雇用の恩恵を被ることができなかった。たとえば、男女雇用機会均等法(1985年に成立し、86年施行)以前は新卒時に東京大学などを卒業していても、大企業に正社員として入社することは難しかった。1980年代前半、ある大手鉄鋼メーカーでは、新卒を100人程採用する場合、男性が90~95人で、女性が5~10人程だった。当時は日本を代表する大企業でも、このような比率が目立った。

1986年に施行後も、私の取材での実感値で言えば、2005年前後までは男女の採用比率は大企業においても、男女の比率は「9:1」もしくは「8:2」だった。その意味で進歩的な企業でもせいぜい「7:3」である。業界により違いはあるが、現在もおおむね、この「7:3」が平均的なところではないか、と思う。依然、「5:5」にはなっていない。これは大企業の相当に広い範囲で言えることであり、女性が大企業で終身雇用の恩恵を被ることは容易ではないことがわかる。

大企業の正社員の男性がすべて恩恵を被ることができていたわけでもない。たとえば、大手メーカーで中卒や高卒で工場などに勤務する正社員は、不況の時期などには、「景気の安全弁」として辞めるように仕向けられてきたことが多い。これは、今も言えることである。

つまり、終身雇用の恩恵を被ることができたのは、基本的には、大企業に大卒の正社員として勤務する男性でしかない。それ以外は、不安定な雇用にさらされてきた可能性が極めて高い。そして、この「2重構造」が戦後の復興を支えてきた一因であることは、事実として認めていかざるを得ないのでないだろうか。

ちなみに今でこそ、大卒の社員は男女問わず大量にいるが、1980年代後半までは大学進学率は25%弱で推移してきた。4人に1人が大学に進学していたことになる。それが、1990年代前半から上昇し、2009年に50%を超えた。2人に1人が大学に進学するようになった。これには賛否両論があるのかもしれないが、大企業の、大卒の正社員の男性はつい最近までは各世代において少数派であったことは事実である。

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