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総務省が空けたパンドラの箱「モバイル研究会」の緊急提言はかなりヤバい!

2018.12.26

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

 スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回はモバイル研究会の緊急提言について議論します。

総務省はパンドラの箱を空けた

房野氏:総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会」(モバイル研究会)が2018年10月以降、合計3回開催され、11月26日の第4回目の会合に「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」(案)がまとめられました。通信料金と端末代金の完全な分離などが求められていますが、これについて、ぜひご意見を。

房野氏

石川氏:やっぱりひどいなという一言に尽きます。26日の緊急提言の会合が終わった後は、悲壮感がただよっていたというか。傍聴席からは「こんなことがまかり通るのか」的な声も聞こえていた。業界に与えるインパクトは大きいと思います。選択できる方が望ましいのであって、端末と通信料の完全分離はかなり危険な気がします。実際、KDDIとソフトバンクが分離プランを入れましたけど、それで携帯電話料金が安くなったかといったら、なっていない。支払い総額はそんなに変わっていない。分離プランを入れて、端末は割り引きされない、通信料金は結果、安くならない、ユーザーの負担が増す、ということになりかねない。目の前しか見えていない人たちの議論でしかないという気がしている。将来的に5Gを導入するときも、この仕組みが足かせになって5G端末が普及しない可能性も見えるので、危険な話だと思っています。

石川氏

石野氏:現段階で発表されたのは「提言(案)」。だから、ディテールがどうなるかはわからないですけど、どこまで分離になるかによるところが若干あると思います。キャリアが端末を売ることを禁止することになると、影響が大きい。販売代理店が総つぶれになっちゃいます。一方で代理店を届出制にするみたいな話も出てきていたりして、そこは生かしていくんだなというところがある。とはいえ、影響はかなり大きいと思います。

 ただ、それでトラブルが全部解消するみたいな言い方になっているんですけれど、それはおかしいだろうという気がする。ショップで端末を売るんだったら、「身の丈に合わない端末を買わされる」問題は残りますし、是正する機能を付けたといっても、今までも近いことをやっていましたよねと。これですべての問題が解決するというのは、頭の中がお花畑過ぎるなという気がします。これですべて解決するなら、諸外国でとっくに分離プランにしているはずだし、ほぼ分離している香港ですらキャリアが端末を売っていて、キャッシュバックとか分割払いにすると割引が付くプランがある。それはユーザーのニーズに基づいていて、そうなっていると思う。本当に完全分離プランでやっている国があったら教えてほしい。すべての問題の原因を、端末と料金の一体化というか、キャリアが端末を販売していることに求め過ぎている感じがします。

 あと、メーカーへの影響が心配ですね。Appleは大丈夫だとしても販売台数が下がるでしょうし、今、苦しんでいるソニーは息の根を止められかねない勢いですし、富士通もこうなったら完全撤退しちゃう可能性がありますし。京セラのように、キャリアから受注して端末を作っているようなところもどうなるだろうと。技術開発面でもキャリアのモチベーションがなくなってしまうので、そこはすごくマイナスだと思います。

石野氏

石川氏:「カードケータイ」のようなキワモノ端末や、ZTE製の「M」のような、たまに出るユニークな端末のような、キャリアがリスクを取って企画する端末が出てこなくなるので、市場が面白くなくなる気がする。

カードケータイ

ドコモ M

法林氏:いろいろ思うところがあるんですが、パンドラの箱を開けちゃったかなという感じ。無理なことをやろうとしているのは事実。世界的にも、分離プランで成功し、定着しているところはほとんどない。香港は特殊な例。影響はかなり大きいと思う。高い端末が売れなくなると思うし、実は結構、iPhoneはヤバいなと思っています。タイミングが悪い。価格が高いと言われて売れない状況を生み出している中で、今は提言だけど、本当に完全に販売奨励金なしとなると、iPhone XS Maxの最大容量モデルがAppleCareを付けて20万円という値段になってしまって、かなりきついだろうという気がします。

 総務省のモバイル研究会は、市場の競争環境を研究する会のはずなのに、これが競争環境のために必要なことなのかどうなのかh疑問。料金を低廉化するのであれば、第4のキャリア(楽天)がこれから入ってくるけれど、それを5にするのかとか、NTTが大きいから半分にするのかとか、それくらいの勢いの話じゃなきゃいけないはずだし、販売奨励金の話をしているけれど、先にやらなきゃいけないのは接続料の話。先にこっちを下げないといけない。料金体系が変わって、仮に1500円割引のdocomo withが「来月から2000円割引にします」なんて話になったら、その途端にMVNOは全部死んじゃうじゃないですか。そういったことを一切無視して、いきなり提言として出すのは間違っている気がする。

 有識者の人たちは、本当にリアルなモバイルビジネスの置かれている環境をよく見てほしい。端末をある程度安く買えて、長く使えるようにと誰しも望んでいるだろうけど、今のままだと端末が高くなるだけ。料金が下がる保証はどこにもない。どちらかというと端末購入補助は付けてもいいから、キャリアが料金を安くするように強制的にでも仕向けるのが大切なのに、今回の話って「君、こっち(割引)でお金使っているよね。今後はそこにお金を使わないでね」ということしか言っていないんですよね。そうじゃなくて、みなさんに出している値段を下げてくださいというのが本来の話なのに、その話がどこにもないんですよ。やり方として基本的に間違っている。いかにも学者が考えそうな話。

法林氏

石野氏:4割安くする余地があると啖呵を切っていた割には、意外としょぼいというか。市場動向を考えると、影響は大きくないんですけど、国として掲げる目標が分離プランを促進するって、なんだかずっこける感じがするというか、それって政策なの? ってすごく感じたところですね。安部内閣の改革案みたいな感じで出ていたけれど、ちゃんと改革という意味を辞書で調べた方がいいんじゃないですかっていうくらい、最も歴史に残らなそうな改革だなって感じがした。分離プランを改革というって、かなり苦しい、末期的。経済対策と比べるとずいぶんしょぼい改革だなという気がしますね。しかも、それがユーザーにプラスになればいいんですけど、たぶん、ユーザーが最初に感じるのは「うわ、iPhone高っ!」ってことになると思うので、それはどうかと思いますよね。

法林氏:さっき石野君が言った販売代理店の届出制の話も、冷静になって考えると、もともと通信を自由化してきた話なので、販売店が身銭を切ってiPhoneを0円で売ろうが100円で売ろうが、本来は販売店の勝手であるはず。それを届出制にするというのはどうだろう。配給場所を事前に登録してくださいっていっているようなもの。

石川氏:いつの時代の話だよって。

法林氏:そうなんですよ。それは根本的に間違っている。むしろ、キャリアが販売代理店に対してお金を出すことを禁止するとか、出す金額の上限を決めるとか、そういうルールを作るべき。レ点ビジネスや0円端末を売っているのを見つけたら報告してくださいみたいな窓口を総務省が作ったじゃないですか。あれはあれでいいんだけど、それをやって見つかった場合の罰則規定を入れることが必要。今はキャリアを一生懸命叩いているけれど、お金を使いまわしているのは実は販売店さんなので。どういう風にやっているかはわからないんですけど、例えば「dTVを100人契約する代わりに100万円くださいよ」みたいなことを言って、お金をもらっているのかもしれない。総務省が力を入れるところは、そこじゃないって気がする。問題のある販売店があるのは事実。例えば飲食店の場合、食中毒で保健所が入って1週間業務停止ということがあるけれど、携帯電話の販売店が違法な販売をした場合に、どんな罰則を設けるのかというところもある。

 一連の話がなぜ出てきたかということも、よく考える必要がある。1つはイー・モバイルが、MNPでたくさんユーザーを獲得しようとしたとき。イー・モバイルのモバイルWi-Fiルーターをショップで契約したけれど、家で使ってみるとつながらないので解約したいんだけど、解約させてくれないということが地方で頻発し、苦情として各地の消費者センターや国民生活センターに集まった。それで、エリアをちゃんと説明しなくてはいけないとなったのが発端。MNPのキャシュバックの話は、ソフトバンクが最初にMNP転入者に商品券を出したのが始まり。そういう経緯を理解して今回の話ができているかといったら、あまりそういう感じには見えない。一部の不届きな販売店に対しての制限は必要だと思うけど、販売奨励金を全部止めますというのは行き過ぎ。

 また、(官房長官の)菅さんが販売店の手続きが長いと言ったけれど、長くなることを決めたのは菅さん自身ですよ。菅さんは2007年にモバイルビジネス研究会が行われたときの総務大臣で、レ点ビジネスがたくさんあるとか、解約したいのにできないとか、説明が不十分なまま契約させるケースがあるとか、スマホを買ったのにデータ通信端末が余分に付いてきたとか、そういう契約がたくさんあったので、ちゃんと説明しなさいということが決まった。販売店は細かく説明するようになり、結局、手続きの時間が長くなった。販売店を届出制にするより、販売店を規制したり、罰則を与えたりする法律を作る方が先のような気がする。

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