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ヤマハがハイテク農業用ドローン「YMR-08」で仕掛ける農業分野への挑戦

2018.12.21

30年にわたる無人ヘリによる防除の経験とノウハウを元に農業の省力化・効率化への貢献を目指して開発を進めた「YMR-08」

ドローン=UAV(Unmanned Aerial Vehicle)は、近年「空の産業革命」と呼ばれ、世界のさまざまな業界で大きな注目を集めている。

その中心が、機体に複数の回転翼を備えたマルチロータータイプで、手の平サイズのホビーモデルから本格的な空中撮影、測量・観測などが可能な業務用モデルまで多種多様な製品が盛んに開発、販売されている。

そんな中、ヤマハ発動機も、農業の薬剤散布を目的とした電動マルチローター型ドローン「YMR-08」を開発。2018年10月に、日本市場への導入(2019年3月発売)を発表した。

ヤマハが満を持して投入する新製品の狙いとは?製品の特長や今後の展望と合わせて紐解いていこう。

空を飛ぶ薬剤散布機

現在、ヤマハ発動機にはUMS(Unmanned Systems)という事業部門があり、その中心的な製品が1987年に世界で初めて実用化した遠隔操作の産業用無人ヘリコプターだ。

日本では当時から農業就業者の減少と高齢化への対策が課題とされ、労働負担が大きい水稲の病害虫防除(薬剤散布)作業を軽減し、農業の省力化と効率化に貢献する空中散布機の開発を依頼されたのが始まり。

無人ヘリ散布の特長は、人間がポンプを背負って歩く動力散布や乗用機散布に比べて体力的に楽で、作業時間も動力散布が1haあたり2時間40分かかるのに対し、わずか10分と圧倒的に早いこと。

また有人航空機の散布に比べて、外部への飛散が圧倒的に少なく、散布密度の均一さも格段に優れていることにある。

そのため、日本ではおよそ2,700機(2017年末現在)のヤマハ無人ヘリが農業分野で活躍しており、年間の薬剤散布面積は延べ100万ha以上、そのうち主用途である水稲は作付面積の40%以上をカバーしている。

しかし、1995年〜2015年の間に農業就業人口が約1/2に減少、平均年齢も7歳上昇(66歳)するなど、状況は厳しさを増すばかり。

そこでヤマハは、いっそうの省力化・効率化をはかるため、これまで無人ヘリでカバーできていなかった山間地などの小規模農地や住宅地に近接した農地に着目。もっと手軽で扱いやすく、個人農家でも購入しやすい製品がほしいという声に応えて開発したのが、産業用マルチローター型ドローン「YMR-08」だ。

ガソリンエンジン駆動の無人ヘリ「FAZER R」は、最大32リットルの薬剤を搭載して1回の飛行で4haを散布できる性能を備えており、多くの場合、組合や専門業者が機体を所有し、大規模農地を中心に地域ごとにまとめて防除を行なう。

その一方、山間地や住宅地などの小さな農地が点在する場所では、必要な時にいつでも手軽に散布でき、静音性に優れた小型・電動のマルチローターに対する期待が急速に高まり、これまで農業用に登録された機体は1300機を超え、2018年総需要は700機に上ると予想されている。

それに対しヤマハは、大規模農地でもっとも効力を発揮する無人ヘリとマルチローターを併用することで新規市場の開拓、需要創造をめざすという方針を定め、「YMR-08」の開発に着手。一般の農家でも安心して運用でき、散布業務を請け負うプロまで納得させる、競合製品とは一線を画す散布性能と機能、品質と信頼性を作り込んだ。

「その分少し時間がかかりましたが、完成度の高さには自信を持っています」

とUMS統括部営業部長はいう。

「YMR-08は、30年間無人ヘリを通じて農業と向き合い、薬剤散布の現場で培ったヤマハならではの経験、技術とノウハウを注いで作り上げた散布のためのマルチローター、小型空中散布機。まず初年度に500機を導入する計画で、2021年には年間販売1,000機、シェア50%をめざします」

一定の散布間隔でのターンや等間隔での飛行ラインおよび飛行速度維持を行える“ターンアシスト機能”を搭載し、操縦簡素化と散布精度を向上。オペレーターの操縦負荷や疲労を低減する最新の「FAZER R」

散布現場の知見を凝縮

「YMR-08」は、散布現場で本当に必要な要件を追求して開発。8リットルの薬剤(最大10リットル)と大容量バッテリーを搭載し、離陸から着陸まで15分間、対地高度3m・速度15km/hで飛行しながら1haの散布を完了できる性能と、無人ヘリに負けない優れた散布品質などが特長だ。

狙いどおりの薬剤散布ができるドローンとして開発された「YMR-08」

機体は、今後のグローバル展開も考慮し、FAA(アメリカ連邦航空局)規格に準じて最大離陸重量25kg未満に収まるよう、徹底的に軽量設計されている。

核となるのは、電装系を収納するモノコックシェル構造の積層カーボン(CFRP)フレーム。上面開放型でありながら、折り返しと段差による多面形状を採用し、大きな底面積と超軽量・高剛性を実現。さらに冷却効果の高いエアフローデザイン、被視認性の高い個性的な外観デザインを施している。

ローター構成は2対の二重反転を含む6軸8枚で、薬剤がしっかり作物の根元まで届く力強いダウンウオッシュを実現するため、ボディ下の散布装置から左右に伸ばした噴射ノズルを二重反転ローター下の適切な位置に配置。

さらにすべてのローター回転方向を前後対称に設定することで、前進・後進とも同じ高品質の散布を可能にした。

ローター本体は高剛性のCFRPと前縁部に柔軟性のある樹脂を接合したハイブリッド構造で、破損時の飛散を防ぐ。また、ローターを駆動するモーターやバッテリーも、日本メーカーと共同で専用開発。軽量・高性能で耐久性に優れ、独自のフェールセーフ機能を搭載している。

操縦性については、無人ヘリで実績のある一定速度・高度を維持する機能、任意設定した一定幅で自動的にターンする機能などを採用。熟練した技能がなくても、スイッチのON/OFFだけで散布飛行が行えるようサポートした。

散布ノズル上部に新設計の二重反転ローターを採用することで、小型軽量ながら力強いダウンウォッシュ(降下気流)を生み出すことに成功。散布農薬が風に流されにくく、狙い通りの散布と高い薬剤効果が期待できる

グローバルに、多用途に

その一方、UAVビジネスの主力製品である無人ヘリについても、新しい可能性を追求する試みが続いている。そのひとつが、2017年からアメリカ・カリフォルニアのワイナリーでスタートしたぶどう畑の散布。2018年も順調に規模を拡大し、さらに着実な伸長が見込まれているという。

日本では電力会社と協力し、山中にある送電線の工事現場に資材を運搬する実証試験を行い、自動航行システムを備えた機体を使って1日あたり672kgの資材運搬を実現。今後も積載方法の改善などによって安全性・運搬効率の向上・強化に取り組み、2019年から本格的な事業化をめざすことになった。

また、次世代モデルの開発にも注力しており、2019年1月にアメリカのラスベガスで開催される「CES 2019」には、機体を大型化することで搭載能力を70kgまで高めたコンセプトモデルを出展。衝突回避など飛行制御機能の向上に加え、自動航行システム、各種アプリケーション機材と組み合わせることで、多彩なソリューションを提案する。

このほかUMS事業部ではUAV以外の可能性にも注目し、水上のUMV(Unmanned Marine Vehicle)を製品化したほか、陸上のUGV(Unmanned Ground Vehicle)も実用化に向けて研究を重ねている。

陸・海・空を股にかけ、ビジネスの現場で役立つモノ、社会に貢献する製品を生み出すヤマハUMSの挑戦は、昨今著しく進化するAIや電子制御技術の成果を取り込みながら、ますます加速していくだろう。

韓国では2003年から水稲に、オーストラリアでは2012年から除草に、アメリカでは2014年からぶどう農園に、ニュージーランドでは2015年から除草に、タイでも2018年からサトウキビ畑にと世界各地で無人ヘリコプター導入を進めている(写真はカリフォルニアのぶどう畑防除)

関連情報:https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/

構成/編集部

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