「誰かが知らないところでやってる」じゃなくて「自分たちの問題」という感覚が持て、実際に参加できる社会になればいい
和田 “公共の心”って、実は多くの方に宿っていると思うんです。だからインフラを守るにしても、災害時の救助や復旧にしても「誰かが知らないところでやってる」じゃなくて「自分たちの問題」という感覚が持て、実際に参加できる社会になるといいな、と思うんです。だから我々も、微力ながら協力しています。先日「こども霞が関見学デー」というイベントがあって、我々の作業をVRゴーグルで体験してもらったら、子どもたちが「忍者だ!」ってメチャメチャ食いついてくれたんです。なかには「俺、大人になったらこれやる!」と宣言してくれた子もいました。本当になってくれるかどうかわかりませんが(笑)、あの子たちはきっと大人になって「あの橋が安全なのは、あの時のおっちゃんやその仲間が点検や補修をしてるからなんだな」と思ってくれるかもしれません。
夏目 みんながほかのだれかの現場を理解すると社会がよくなる、というのはこの連載の趣旨でもあります。
では最後に、逆に「日本のここが素晴らしい」という部分はありますか?
和田 それはもう、いっぱいありますよ。例えば先日、土木学会の全国大会に行ってきたんです。数万人の方が集まったんですが、なかには土木が好きで仕方なく、土木の話で朝まで酒が飲めるような方がたくさんいらっしゃったんです。そして、好きでやっている方は皆さん、使命感や責任感をお持ちでした。そんな多くの皆さんが協力しあって、時には声をあげていけば、きっと日本のインフラはこれからも安全なのかな、と思うんです。
【プロフィール】
和田聖司(わだ・せいじ)/1972年、京都府生まれ。工務店経営等を経て、2007年に特殊高所技術を起業、代表取締役社長に就任し、以来現職。2014年からは一般社団法人・特殊高所技術協会の代表理事もつとめる。
取材・文/夏目幸明(なつめ・ゆきあき)/1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店に入社。その後、経済ジャーナリストになり、各媒体で連載。著書は『掟破りの成功法則――破天荒創業者のマジ語り』(PHP研究所)など多数。