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【2020年以降の日本を語る】使命感や責任感を持ってインフラを支える・特殊高所技術 和田聖司社長

2018.12.11

人の不得意な部分だけを先進技術に依存し、先進技術の不得意な部分を人が行う

夏目 点検にかかる費用もネックになっていそうですね。

和田 ドローンなどによる点検等が、人に代わる方法として、数年前から検討はされてきましたが、完全に代替えするには、まだまだ技術力が追い付いていないように感じます。 現時点での技術力を考慮するならば、費用も含めた維持管理の最適解に最も近いのは、ドローンなどのロボット技術+特殊高所技術かもしれないですね。完全な代替えではなく、人の不得意な部分だけを先進技術に依存し、先進技術の不得意な部分を人が行うといった感じかと思います。イメージとしては、無人化技術は安価になるという印象があるのかもしれないですが、それにはもう少し時間がかかりそうですね。

 だからこそ、今後、インフラをつくる時は維持管理費も考慮すべきだと思います。仮に風力発電所であれば、点検や補修のためのエレベーター等を設置しなければ最初にかかる費用は安く済むかもしれません。しかし将来の点検や補修に莫大な費用がかかるなら意味はないのかな、と思います。

和田聖司社長。若者雇用促進法の基準適合事業主に認定されにっこり

和田さんは以前、ロープを使わないと行けない場所の地質調査を請け負っていた。特殊高所技術の起業のきっかけは、仲間から「高速道路の会社が“橋の点検ができる会社はないか。いくらでも仕事はあるのに”と嘆いている」と聞いたことだったという。

夏目 やはり命の危険が伴う仕事なのでしょうか?

和田 仲間達に命の危険が伴わないよう、最大限、臆病になり、安全性に対しては現時点で考え得る限りの対策を講じています。公共の業務においては安全性が重視されます。そこで我々はルールを定め、これを守っていれば事故発生の可能性は限りなくゼロに近くなるようにしています。例えば構造物にひっかけて人の落下を防止する「安全帯」は3丁以上携行し、移動するときも常に2丁はかけておきます。僕らもモノを落とさないように注意しています。ペンの先端が外れて落ちないようテープでグルグル巻きにするほどです。

夏目 確かに、いま貴社が事故を起こしたらインフラの点検ができなくなってしまいますからね。

和田 そこで「業界づくり」も行なっています。僕らが「一般社団法人特殊高所技術協会」を立ち上げ、技術者講習を実施して、等級によって持つ権限を変えています。当社だけにしか出来ないようでは業界が発展しないので、他社への技術移転も始めています。たまに「パイオニアなのに、ライバルを育成してどうする」と言われますが、高所技術を正しく使えばインフラの点検や補修のコスト削減、工期短縮に貢献できますから。

夏目 協会の理事として見える問題はありますか?

和田 橋や発電所など、同じ構造物の点検でも、企業や自治体によって点検項目や点検要領が異なるんです。ウチは北海道から沖縄まで行くので、ここの点検をするときはこの資格をとって、今度はこっちの作業要領を覚え……とやらなきゃいけません。点検・補修作業の標準化をしないと、結局、コストに跳ね返ってきますし、人材の育成にも時間がかかります。
 こういった状況を目の当たりにすると「日本ではインフラの維持・管理が始まったばかりなんだな」と思わされます。

夏目 日本のインフラ行政は、最近「つくる」から「今あるものの長寿命化」に変わってきていますよね。これ、確かに早急な対応が必要だよなぁ。

阪神高速道路の現場。ちなみに水力発電所の調圧水槽など「高さが100mを超えるモノもあり、長時間ぶら下がりっぱなしになってしまう場合は、ペットボトルがトイレになります」という。

和田さんは起業前、「自分自身の生活の安定」と「自分の仲間」の為に働いていたという。しかしインフラの点検をするうち「我々は“今の安全・安心を未来へ繋いでいく仕事”をしているんじゃないか?」と思い始めた。これが「業界づくり」のきっかけになり、同時に日本の未来を考えるきっかけにもなったらしい。彼はきっと、いつも土木やインフラの未来ばかり考えているのだろう、話はさらに大きな問題へと流れていった。

再生可能エネルギーで起こした電力を貯めておける蓄電技術の普及・開発が必要

夏目 ほかに、現場から見えることはありますか?

和田 電力問題です。我々は水力発電所のダムや水路構造物の点検にも行くのですが、その点検の間すら「発電をとめられない」と聞きます。それくらい、今の電力構成はギリギリなのかな、と感じます。普段、生活に支障がないから「電力は足りている」ように見えるかもしれませんが、実はそうではないと思います。点検の回数を減らすなどして、必死で電力を送っているんです。しかも日本は電気を起こす燃料も海外にたよっていますよね。これはまずい。

 いくら再生可能エネルギーが増えているといっても(太陽光なら曇りの日、風力なら無風の日などがあり)コンスタントに発電できるわけではありません。再生可能エネルギーで起こした電力を貯めておける蓄電技術の普及・開発が必要だと感じます。例えば、原子力発電所等でできた余剰電力を利用して水を汲み上げ、必要な時にその水力で発電を行う「揚水発電」というシステムがあります。そして最近、これを使って再生可能エネルギーの余剰電力を蓄電する形も増えているとも聞いています。

 ただし、現在国内にある揚水発電所だけで不安定な再生可能エネルギーの需給バランスを調整し続けられるわけではないと思うので、火力、再生可能エネルギー、原子力をバランス良く使う「エネルギーミックス※」を進めていかないと今後も現在の綱渡りの状況が続くと思います。

※火力、再生可能エネルギー、原子力等、それぞれの利点を組み合わせ、安定的に電力を供給するための施策。

夏目 道路はいかがですか?

和田 管理者だけでなく、利用者様にも協力してもらって維持していけないかな、と思うことがあります。現場で近所の人から「ここ、なんか変な音すると思ってたんや」などと聞くことがあるんです。社会インフラはみんなのためにあるもの。道路や水道や電力があって地域が成り立っているわけです。であれば、もっと多くの人の目で見守っていくような自主的な取り組みがあっていいかな、と考えます。

夏目 技術や熟練を必要としない作業なら、地域の皆さんに協力していただけることもありそうですよね。

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