
■連載/ゴン川野のPC Audio Lab
Introduction
ハイエンドDAPと言えばA&ultima『SP1000』が思い浮かぶが、そのライバルがLotoo『PAW Gold』である。ズシリと重いアルミ削り出しのボディに24金メッキのゴールドに輝く円形の十字キー、大型のボリュームと個性的な押しの強いデザインに、厚みのある中低音が魅力のモデルである。これが惜しいことにバランス非対応だった。
そして2018年10月25日に『PAW Gold TOUCH』が発売された。今度はφ4.4mmバランス接続対応、BluetoothはLDAC対応、3.77インチのタッチパネル液晶搭載、USB/DAC機能、USBトランスポート機能(対応予定)、DSD512/PCM768ネイティブ対応、DACはAK4497&AK4137で、クロック用にFPGAも積んでいるという驚きのハイエンド仕様となった。さらにサンプリングレートコンバータAK4137も積んで、オペアンプはTIのOPA1622とOPA1612、バッファアンプにハイスピードなLME49600も搭載している。重さ311g、価格は45万円である。
なぜシングルエンドからバランス対応に、起動時間2秒の秘密は、などの疑問に答えてもらうために『PAW Gold TOUCH』の開発陣を取材した。
Interview
そもそもLotooは会社名ではなくブランド名である。作っているのはINFOMEDIAという大企業で、中国とアジアのオーディオワークステーションとプロ用放送システムを作っている。また、ハイエンドオーディオ製品でも有名なスイス「NAGRA」ブランドのポータブル機器のODMもおこなってきた。
今回、来日した写真左からグループ代表会社社長Xiaoge Huang氏、インフォメディア社長Tony Wang氏、製品部部長Hang Xu氏の3名に質問をぶつけた。実際は3名が話し合った結果を通訳がまとめて翻訳しているため、発言者の名前は省略させてもらう。
Q 最初に聞きたいのはなぜ前作がアンバランス接続のみという硬派な仕様だったのに、今回はバランス対応、しかもφ4.4mmを採用したのはなぜですか?
A 音質を究めればバランス構成の方が音がいいからです。デジタル回路から完全バランス構成にするのが理想ですが、そうすると消費電力が増えて連続再生時間が短くなります。我々はそれが嫌で完全バランス駆動で連続再生10時間以上を実現しました。
φ4.4mmを採用した理由は、まず我々が目指すバランス接続には4極ではなく、5極接点が必要だったのです。それからジャックが丈夫で壊れにくいこと、接点の表面積が広いことから選びました。
Q 具体的なバランス接続のメリットは何でしょうか?
A バランス出力はアンバランスの4倍の出力がとれます。これにより微小レベルでの音の取りこぼしがなくなり、結果として情報量が多くなります。最大出力が大きい方がクラシックのピアニシモの音が再生しやすくなります。もちろん、イヤホンやヘッドホンの能率やインピーダンスなどを気にせず、きちんと駆動できるのもメリットです。
Q バランス対応にして音作りにも変化はありますか?
A 実は前作では最低域の音のキレを良くしたのですが、今回は最低域に厚みを持たせています。低域はどちらのモデルも厚みがありますが、ローエンドの馬力が違います。
Q ズバリ、起動時間2秒の理由を教えて下さい
A 我々は20年前からLotooOSというオーディオ専用のOSを開発してきました。これはAndroidOSのようなマルチタスクOSと違って、リアルタイムOSです。Androidは受けたデータをバッファに蓄積してから処理していきますが、LotooOSはリアルタイムに処理するため、高速に動きデータの取りこぼしがありません。今回は起動時間を含めた操作性とインターフェイスも見直しています。
AndroidOSはキャッシュをため込んで徐々に性能が落ちていきますが、RT OSにはそんな心配はありません。例えばハイレゾデータをSDカードから読み込んで60%のメモリーを消費していても、ビットパーフェクトなデータを再生できます。
Q LDACに対応していますが、aptX HDに対応しないのはなぜですか?
A aptXよりもLDACの方が高音質であると判断したからです。LDACにAndroidOSが標準対応することを考えれば、aptX対応は必要ないと考えています。
Q AKMのDACでは様々なデジタルフィルターが選べますがオススメはありますか?
A デジタルフィルターはショートディレイ/シャープロールオフフィルターがお勧めです。急峻すぎるとリップルが出るし、ゆるすぎてもいけません。まあ、デジタルフィルターによる音質の差は非常に少ないと思いますが。
Q 最後に『PAW Gold TOUCH』のどこに注目してもらいたいですか?
A 最高品質をぜひ体感してみてください。その音質がどれだけオリジナルの音楽に近いのか、そしてインターフェイスの快適性を実感してください。